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土木施設は生き物

国土交通省 九州地方整備局長
鈴 木 克 宗

土木施設には生命が宿る
車のタイヤから重みが加わり、筋肉である部材から力が伝わり、足腰である橋や舗装の土台が支える。夏は暑い太陽で焼け、冬には寒さに凍り、繰り返しの荷重で疲労が蓄積する。疲労を癒し、場合によっては補修し、疲労亀裂発生というガンになった場合は、手術である更新工事を行う。しかし、手術方法を間違えれば命をなくす。
鋼構造物に疲労亀裂が出た場合、現場溶接で補強工事を行うことは新たな疲労亀裂を発生させる原因となることが多い。新たな溶接に母材が耐えられない事も多い。疲労亀裂の先端に穴をあけて応力を解放し、ボルトで添接する方法が一般的だ。
場合によっては、小手術や延命の対処療法の方が長生きする場合がある。要は土木施設は人間の体そのものである。ホームドクターが日々の体調を管理し、変調が認められれば処置を行う。手に負えないものは専門医に送る。専門医は臨床検査の結果を分析し、本人の問診を行い診断をし、必要なら手術を行う。手術後はホームドクターに引き継がれ、専門医と連携し以後のケアを行う。特に手術後の変調は重大事の予兆となることが多く、注意が必要である。
土木施設のホームドクターは日々施設の管理をする技術者である。
・健全な時の血圧は?異常時は?
・健全な時の応力発生は?異常時は?
このことは設計図書をみても分からない。設計上の発生応力と実構造物の発生応力には乖離があるからである。夏と冬でも異なり、太陽に照らされる側と日陰の部材でも異なる。老朽施設となれば当初設計の情報だけでは判断がつかない。腐食して部材の強度が不足していることも多々ある。今までは機能向上も必要であるので新規に建設し直す事が多々あったが、これからの時代は延命が原則だ。
延命には、設計上の計算値でなく、あるがままの構造物の実挙動の把握が不可欠である。橋や舗装に限らず、河川や砂防、港湾、空港の施設も同様だ。
これから整備した多くの土木施設が高齢期を迎える。必要なことは、
・日々の管理、体調変化の把握
現状では管理技術の構築が遅れている
・最先端の臨床検査技師との連携
現状では非破壊検査の技術が不足している
・高度な診断ができる大学病院等の専門医との連携
現状では高度な診断ができる専門医は全国の大学でも極めて少数である
・なにより土木施設が生き物であるという認識を持つ必要がある
本格的な更新時期をむかえる今、管理技術は日々土木施設に接する管理者が担うべき役割である事を自覚し、管理技術体系の構築を早急に行う必要がある。併せて管理の時代の企業や技術者の評価、積算体系の見直し、設計や施工の企業の役割と責任の明確化等々取り組むべき課題は山積している。
人間の病気との闘いは、臨床結果の蓄積により病気を克服すること、病気になりにくい体質にすることだ。今回、橋梁の総合評価項目に疲労亀裂が発生しにくい構造設計を評価項目に追加したこともこの一環だ。更新時期を迎えた土木施設の損傷事例を蓄積し、長寿命の設計体系を早急に構築したい。何より土木施設は生き物という認識を持つことが最も重要だ。

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