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国道3号 黒崎バイパス
~黒崎北ランプ~陣原ランプ間(L=2.9 km)が部分開通~
九州地方整備局 池田稔浩
1.はじめに

北九州市黒崎地区は、新たな産業や商業集積が進み地域の活性化や雇用の拡大が促進されつつあります。市民レベルでも様々な取り組みが展開され、長崎街道の宿場町(黒崎宿)を活かした取り組みでは日本風景街道のモデル地区に選定され、また昨年7月には、「北九州市中心市街地活性化基本計画」が、小倉地区とともに内閣総理大臣の認定を受けるなど、都市再生の新たな一歩を踏み出しています。
しかしながら北九州市黒崎地区において小倉都心部と福岡市都心部を結ぶ国道3号は、通過交通と黒崎地域の生活交通や産業交通が混在し、これらの交通の輻輳が交通渋滞の一因となっています。特にJR黒崎駅前付近では1日約8万台の交通量があり、「黒崎駅前交差点」や国道3号と国道200号が交わる「筒井町交差点」では、朝夕を問わず慢性的な交通渋滞が発生し、社会経済活動に重大な支障をきたしています。
これらの渋滞緩和を図るために計画された「国道3号黒崎バイパス」は、八幡東区西本町(起点)~八幡西区陣原(終点)までの延長5.8kmの自動車専用道路です。このうち、早期の渋滞緩和を図るべく黒崎北ランプから陣原ランプまでの2.9km(暫定2車線)が、平成20年10月25日に部分開通しました。

写真1- 黒崎駅前

写真2- 筒井交差点付近

2.黒崎バイパスの概要

道路延長
道路規格
道路幅員
設計速度
ラ ン プ
: L=5.8km
: 2種2級(自動車専用道路、4車線)
: W=17.5m
: 60km/h
: 6箇所(春の町(仮称)、前田、黒崎北、黒崎西(仮称)、皇后崎、陣原)


図1- 平面図


図2- 断面図

3.今回開通区間の概要・特徴
◆黒崎北ランプ~陣原ランプ間

道路延長
車 線 数
主な交差施設
: L=2.9km
: 暫定2車線(片側1車線)
: 県道本城熊手線、都市計画道路前田熊手線、JR 鹿児島本線、
西鉄、筑豊電鉄

道路構造(連続高架構造)

下部工
上部工
: 42基(鋼製橋脚:24基、コンクリート橋脚:18基)
: 2,327m(鈑桁橋:1,117m、箱桁橋:901m、鋼床版橋:214m、PC 橋:95m)

◆陣原跨線橋(JR 鹿児島本線)の架設
鋼3径間連続鋼床版箱桁橋(L=214m、鋼重=約2,000t)

仮設工法
降下高さ
: 直線送り出し工法(送り出し長約=43m)
: 5.6m(100t クランプジャッキ、31台)


今回開通した区間(以下:当該区間)は、JR鹿児島本線の北側に並行する市道前田熊手線と接続することにより、北九州国道管内の国道3号のなかでも最も交通渋滞の著しいJR黒崎駅前など黒崎中心部を通過する交通の分散を図り、交通渋滞の緩和を目指すものです。
当該区間の構造は、県道本城熊手線やJR、企業の引き込み線と交差するため、ほとんどが連続高架橋構造であり、基礎形式は杭基礎、大口径深礎、鋼管矢板基礎及び直接基礎、下部工形式は逆T式橋台・鋼ラーメン橋脚・鋼張出し式橋脚・RCラーメン橋脚及びRC張出し式橋脚、上部工形式は鋼単純非合成鈑桁・鋼連続非合成鈑桁・鋼連続非合成箱桁、鋼連続鋼床版箱桁及びPC多径間連続中空床版橋と多種に及んでいます。
施工においては、JR鹿児島本線に近接していることや県道本城熊手線や都市計画道路前田熊手線への交通規制、隣接企業の出入り口の確保など、安全上の配慮が必要であり、またJR鹿児島本線を跨ぐ陣原跨線橋の架設(JR九州委託)工事では、約2時間の起電停止中の桁の送り出しや降下作業を行わなくてはならず、JR九州と調整を図りながら進めました。また、ベント等の仮設機材の基礎工においては、未確認の埋設管が発見されるなど、調査・協議にも時間を要した工事でした。

写真3- 陣原跨線橋

写真4- 地下埋設管


写真5- 開通後の状況

4.開通による効果

開通直後の平成20年11月に、交通量調査、利用者アンケート調査等を行いました。開通による効果は以下のとおりです。

1)所要時間の短縮
八幡東区西本町(西本町1丁目交差点)~八幡西区陣原(樋口町交差点)L=5.6kmの所要時間(午前7時台、上り)は、開通前(H20.10)の約29分に対して開通後は約19分と約10分短縮され、大幅な所要時間の短縮が図られています。


図3- 所要時間の変化(平日)

2)国道3号での大幅な交通量減少、渋滞の緩和
今回開通した黒崎バイパスに8,800台/12hの自動車交通が転換したことにより、国道3号では6,600台/12hの減少(41,000→34,400台/12h)が図られ、渋滞の著しかった筒井町交差点の渋滞長(朝ピーク時、上り方向)は、開通前の1200mから650mに半減、通過時間も13分から5分と大幅な減少が図られました。


図4- 断面交通量の変化(平日)


図5- 混雑状況の変化(筒井町交差点、平日)

3)利用者アンケート結果
<交通状況の改善点>
黒崎バイパスの開通により、利用状況の改善が図られたと感じている状況として①国道3号の交通量減少、②筒井町交差点の渋滞緩和、③黒崎駅前交差点の渋滞緩和が挙げられており、国道3号における混雑緩和効果を道路利用者が実感していることが伺えます。


図6- 交通状況の改善点(上位3意見)

<道路利用者が感じる整備効果>
黒崎バイパス利用者の大半が「所要時間の短縮」、「定時性」、「走りやすさ・安全性」が向上したと感じており、利用者の満足度は非常に高いことが伺えます。
また、黒崎バイパス利用者のみならず、交通量が減少した国道3号利用者の大半も「所要時間の短縮」、「定時性」の向上を感じています。


図7- 黒崎バイパス利用者が感じる効果


図8- 国道3号利用者が感じる効果

4)バスの定時性の向上
国道3号の交通量の減少に伴いバスの定時性が向上したことから、黒崎地区のバス路線のダイヤが平成21年1月19日に改正され、国道3号穴生橋~西鉄黒崎バスセンター間の所要時間が最大で3分(17分→14分)短縮されています。

5.おわりに

今回の部分開通により黒崎地区で最も混雑状況を呈していた筒井町交差点や黒崎駅前の混雑緩和が図られ、黒崎地区の交通環境は大幅に改善されました。
しかし、黒崎バイパス未整備区間に並行する国道3号や、現在黒崎バイパスに接続している市道前田熊手線では、部分開通であるが故に交通量の増加が生じています。このため、残る区間の整備を早急に進めていくことが必要だと考えています。
現在、前田ランプ~黒崎北ランプ間や皇后崎ランプの工事を重点的に進めており、皇后崎ランプについては、平成23年度内の開通を目指しています。
小倉都心部と黒崎副都心の2極型都市構造の形成への支援・副都心の再開発事業等の促進、また既存の商店街等の活性化や産業の活性化・高度化に寄与するため、黒崎バイパスの整備は欠くことの出来ない重要な事業です。
今後とも、地域の方々や道路利用者のご理解とご協力を得ながら早期完成を目指し事業を進めてまいります。

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