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唐津港(東港地区) におけるクルーズ船誘致について

佐賀県 地域交流部  
港湾課 計画整備担当係長
松 本 英 之

キーワード:港湾、クルーズ船、観光

1.はじめに

唐津湾は、佐賀県北部に位置し、玄界灘を経て日本海に面し、玄海国定公園や日本三大松原の一つ「虹の松原」に代表される白砂青松の海岸線といった風光明媚な景観を有している。その中にある唐津港は、港の前面に点在する島々により静穏な水域をもたらされた天然の良港となっている。
本港は、その名の示すとおり「唐の津」として古くから大陸との交易の玄関口として役割を果たしており、日本で最初に稲作が伝わったといわれる菜畑遺跡がある。また、茶人に「一楽、二萩、三唐津」といわれる唐津焼は、近世のころ朝鮮からきた陶工たちがこの地で焼き物を始めたものが発祥とされ、唐津港から出荷されていたと言われている。近代では石炭の積み出し港、世界航路の寄港地として栄え、その後は、まき網漁業の基地へと姿を変えながら発展してきた。
昭和40 年代から公共ふ頭整備や工業用地造成等、本格的な臨海部開発がスタートし、現在では、LPG や建設資材などの物流機能、水産加工などの工業団地が隣接する魚の水揚げの水産機能、旅客船等が寄港する観光機能の外、ヨットや海水浴場などの海洋性レクリエーション活動が盛んな多機能型の港湾として重要な役割を果たしている(写真- 1)。

本港は平成23 年11 月に「日本海側拠点港」の外航クルーズ(背後観光地クルーズ)機能の「拠点化形成促進港」として選定されており、国内外のクルーズ船誘致に努めている。
本稿では、唐津港周辺の観光資源と外国クルーズ船誘致の取り組みについて紹介する。

2.東港地区の港湾施設整備について
唐津港東港地区では、平成7 年から緑地の整備を進めており、平成19 年4 月には壱岐フェリーが呼子港から移転してきた。また、隣接する岸壁は老朽化により利用制限が行われていたが、平成19 年度から直轄事業にて、水深9m 岸壁を整備し、平成28 年4 月に供用を開始した。現在では、主に、この岸壁でクルーズ船の受け入れを行っている。
緑地は、平成19 年に九州の「みなとオアシス」第1 号として認定され、フェリーやクルーズ船客による人流空間として整備を進められている(写真- 2)。

(主要施設)
現在の主要施設は下記のとおりである。
  ふ頭用地:6.1ha(工事中)
  岸壁(- 9m):230m 1 バース
  岸壁(- 4.5m):115m 1 バース
  航路・泊地(- 9m):4.1ha(整備中[直轄事業])
  緑地:7.3ha(工事中)
※航路・泊地が整備されると、素晴らしい景観を有する東港に、5 万トン級のクルーズ船まで接岸可能となる。

3.唐津の魅力ある観光資源
唐津港周辺には、美しい自然、歴史、文化、食など魅力ある観光資源が溢れている。市内の主要観光地は、そのほとんどが港から車で30 分圏内にあり、クルーズ船寄港時のオプショナルツアーやまち歩きでも、ゆっくりと楽しめるのが魅力の一つとなっている。

(唐津城)
唐津城は、豊臣秀吉の家臣“ 寺沢志摩守広高”が慶長7 年(1602 年) から7 年の歳月を費やし完成した城。築城当初は天守閣はなかったが、昭和41 年に文化観光施設として天守閣を築いた。本丸を中心に東西に伸びる砂浜が両翼を広げた鶴のように見えることから、別名「舞鶴城」ともいわれ、桜・藤の名所となっている。 平成29 年7 月には天守閣内のリニューアルが行われた(写真- 3)

(鏡山)
標高284 mの鏡山は頂上が平らなため、どの角度からも台形に見える美しい山。『肥前風土記』や『万葉集』にも登場する松浦佐用姫の悲恋物語の舞台としても有名で、山頂の展望台からは、唐津湾や虹の松原などの絶景が一望できる(写真- 4)。

(唐津くんち・曳山展示場)
「唐津くんち」は、毎年11 月2 ~ 4 日に開催される唐津神社の秋季例大祭。平成28 年12 月には、ユネスコ無形文化遺産に登録され、昨年は期間中の人出が過去最高となる63 万人を記録。幾重にも貼り合せた和紙と漆による手の込んだ技法で製作された14 台の巨大な曳山は、曳山展示場で見学できる(写真- 5)。

(呼子朝市)
呼子名物の「呼子朝市」。日本三大朝市の一つに数えられ、元旦を除く毎朝7:30 ~ 12:00 に朝市が開催される。商店街の軒先を借りた200m の通りは「朝市通り」と名付けられ、新鮮な魚介類等を販売する露店が50 ~ 70 店並び、売り手のおばちゃんとの会話や触れ合いが楽しめる(写真- 6)。

4.クルーズ船誘致の取り組み
唐津には、前述のような魅力ある観光資源は多数あるものの、クルーズ船の寄港地としての認知度は、全国的に見ても低い状況にあった。また、唐津港には、クルーズ船が係留できる岸壁が2 ヶ所あるが、他港のような大型のクルーズ船を受け入れる施設はないため、受け入れ可能なクルーズ船は、最大で5 万トン級のクルーズ船となっている(写真- 7)。
唐津港には、これまで年間3 隻程度の国内クルーズ船が寄港していたが、外国クルーズ船の寄港実績はなかった。こうした中、唐津市、佐賀県及び佐賀県唐津港利用促進協議会では、施設規模や街の規模に見合った中小型のラグジュアリー船を対象に国内外のクルーズ船社や旅行代理店等へ誘致活動を進め、今年4 月、5 月に、佐賀県初となる外国クルーズ船が寄港したところである。

5.佐賀県初の外国クルーズ船が寄港
平成30 年4 月3 日、佐賀県初となる外国クルーズ船「スター・レジェンド」が唐津城や虹ノ松原、鏡山を望む風光明媚な景観を持つ東港岸壁に初寄港した(写真- 8)。

「Splendors of Japan & South Korea(日本と韓国のきらめき)」ツアーで唐津を訪れた約200 名の乗船客の方々は、市内の主な観光地(唐津城、鏡山、曳山展示場、旧高取邸)を巡るツアーや商店街に出てまち歩きをして、唐津の自然、歴史、文化、市民との交流を満喫された(写真- 9 ~ 12)。

今回、唐津港での初めての外国クルーズ船受入であったが、唐津観光協会や唐津ボランティアガイドの会等の関係団体をはじめとして商店街の皆様や市民の皆様のご協力により、唐津ならではのおもてなしが出来たことをこの場をお借りして感謝申し上げる。

6.おわりに
5 月には「ロストラル」が寄港し、今年10 月には「スター・レジェンド」が二度目の寄港を予定している。
これからも唐津の魅力のさらなる情報発信に努め、より多くのクルーズ船に寄港して頂けるよう誘致活動を進めるとともに、関係機関と連携を図りながら受け入れ態勢の構築を図っていきたい。
最後に、唐津港の整備にあたり、ご尽力いただいている国土交通省唐津港湾事務所の各位に深謝の意を表する。

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