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南九州自動車道(日奈久~田浦間)が開通しました

国土交通省 九州地方整備局
 八代河川国道事務所 副所長
田 中 泰 幸

1 はじめに
かつて,大名が江戸に旅するために整備された「薩摩街道」は,肥後芦北地方を通過しており,参勤交代などに利用される,旅人の往来が多い道でした。
しかし,その地形は急峻で,「赤松太郎峠」「佐敷太郎峠」「津奈木太郎峠」の山道は「旅人泣かせの三太郎峠」と呼ばれ,交通の難所でした。(写真一1)

明治の頃に整備された旧国道3号(写真一2)も山間部を縫うような線形で幅員が狭く,車両の離合は運転席を断崖と法面に寄せ合う“右側離合”がなされていたと伝え聞きます。

現在の国道3号が整備されてからは,かつての地形上の難所は解消されましたが,交通量の増大による渋滞,災害時に代替路線がないこと,高次医療施設まで遠いことなどから,高規格幹線道路網の一環として南九州西回り自動車道を計画し,整備を進めてきました。
今回日奈久IC~田浦ICを供用しましたので,その概要について報告します。(写真一3)

2 路線の概要
南九州西回り自動車道は,高規格幹線道路網の一環として計画された延長約140㎞の自動車専用道路であり,これまでに熊本県内で八代ICから日奈久ICまでの約12㎞を,鹿児島県内で市来ICから鹿児島ICまでの約22.2㎞を供用しています。
今回新たに日奈久IC~田浦IC間の約8.8㎞(図ー1)が平成17年2月27日に,串木野IC~市来IC間の約7.3㎞が平成17年3月13日に開通しました。
ここでは,日奈久IC~田浦ICの事業について,特徴,効果を報告します。

3 事業の特徴
(1)ちゃくプロについて
日奈久・田浦間の整備にあたっては,平成15年8月に九州地方整備局が策定した,『九州の5年で見える道づくり「ちゃく2プロジェクト」(通称:ちゃくプロ)』に沿って,平成16年度末を供用目標として掲げ,整備を進めてきました。
(ちゃくプロホームページhttp://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/chaku2/hina_asi.htm)

(2)区間の特徴
当区間の急峻な地形を克服して高速交通を実現するため,11箇所の橋梁(合計3,520m,表ー1),2箇所のトンネル(二見トンネル:1,936m,新赤松トンネル:2,138m)を計画しました。
中でも新赤松トンネルは熊本県内の高速道路では肥後トンネル(6,340m),加久藤トンネル(6,255m)に次いで3番目,八丁山トンネル(2,030m)と並ぶ規模です。

(3)田浦ICについて
平成17年1月に,田浦町と芦北町が合併して新しい町政をスタートしました。
新芦北町の北の玄関口となる旧田浦町に計画したインターチェンジについては,地元の皆様の想いを受けて「田浦IC」と命名しました。(写真一4)

(4)新技術・新工法の活用
①耐候性鋼材の使用
比較検討の結果,当区間の11橋のうち鋼橋が8橋を占めていますが,塩害に対する環境が厳しい海岸部を除く7橋(二見高架橋,赤松1号橋,赤松2号橋,赤松3号橋,赤松4号橋,大平橋,小薮橋)については塗装塗り替えの必要がない耐候性鋼材を使用することとし,ライフサイクルコストの低減を図りました。(写真一5)

②トンネル掘削発生土の有効利用
トンネル掘削により発生した岩砕は,盛土材として再利用するだけでなく,路床材としても活用しました。これにより良好な現場CBR値が得られ(現場CBR値40以上),舗装構成を見直すことによりコスト低減を図りました。
③ゼロエミッションヘの取り組み
現場で発生する伐採木は,チップ化して法面に吹付け,植物の生育基盤として再利用しました。(写真一6)
この工法の採用により,産業廃棄物を減らし現場で再利用する“ゼロエミッション”活動の一環となり,また,伐採木に含まれる種により,郷土植生が再生できました。

(5)無料での供用
八代~日奈久間については日本道路公団との合併施工方式により整備を進め,現在日本道路公団が管理していますが,当区間については直轄で道路管理を行うこととし,「道路の無料公開原則」の方針のもと,無料で供用することとなりました。(写真一7)
ちなみに,八代方面から南九州道を南下する場合は日奈久ICの本線料金所で料金を支払い,田浦方面から南九州道を北上する場合は日奈久ICの本線料金所で通行券を受け取ることとなります。

4 供用の効果
平成17年2月27日の供用から約1ヶ月が経過した時点(3月末)での効果は以下のとおりです。
(1)所要時間の短縮
開通前は八代市から田浦町まで国道3号を利用した場合,約40分かかっていましたが,当区間の開通により八代IC~田浦ICまで利用すると約20分で田浦に到達できるようになりました。
(2)交通の転換
供用後,南九州道には日奈久~田浦間の全交通量の約6割が転換しました。また,この区間の断面交通量も増加しており,移動時間の短縮が県南部との交流促進につながっているといえます。(図ー2)
また,現国道3号朝夕の走行速度は南九州道供用前に45㎞/h~50㎞/hだったところ,供用後に50㎞/h強となり,スムーズな走行が可能になりました。

(3)集客施設の入込み客数増加
田浦ICに近い,道の駅「たのうら」,御立岬公園への土・日・祝日の利用客数はそれぞれ供用前に比べて約1.6倍になりました。(図ー3)
道の駅「たのうら」の支配人は「お客さんは供用前は八代市,熊本市の順で多かったが,供用後は客層が逆転し熊本市からの客が増えている。南九州道は明らかに地域活性化につながっていると思う。」と話されていました。また利用客からも「来やすくなった」などの声が聞かれています。これらは交流圏域が拡大していることの表れといえます。(写真―8)

(4)自動車専用道路の延伸効果
当区間の供用により,有料区間である八代~日奈久間も八代IC~八代南IC間で約13%,八代南IC~日奈久IC間で約41%増加しました。自動車専用道路の延伸効果が見られます。(図ー4)

5 おわりに
現在,当事務所では当区間の延伸となる田浦~芦北間の約8㎞を“ちゃくプロ04”で「平成20年度供用目標」を公表し,鋭意事業を推進中です。
また,南九州西回り自動車道としては熊本県内区間でまだ約29.3㎞が未整備ですので,今後さらに所要の調査を進めて,早期に全線が供用できるよう全力で取り組んで参ります。
読者の皆さんへ,3つの時代(明治,昭和,平成)にそれぞれ築かれたトンネルを1度走ってみませんか。

八代河川国道事務所のホームページ
(http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/)

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