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北薩広域公園 ~のびのびゾーンオープンから1年~

鹿児島県 土木部都市計画課
技術専門員
吉 原  毅

キーワード:北薩広域公園、さつま町、川内川

1.はじめに
北薩広域公園は、平成2 年度に策定された「鹿児島県総合基本計画」の環境デザインプロジェクトの中で、本県北薩地域の特性を活かした公園の整備として位置づけられ整備された都市公園です。県都鹿児島市から約50㎞の本県北西部、薩摩郡さつま町に計画された、県内に3 つある県立広域公園のうちのひとつになります。
北薩広域公園が計画されたさつま町は、緊急輸送道路ネットワーク計画に位置づけられた国道267 号、328 号及び504 号の連結点という陸上輸送の要所であるとともに、町のほぼ中心を一級河川である川内川が流れています。この川内川では去る平成18 年7 月、さつま町中心市街地における浸水家屋530 戸のほか、川内川流域で大きな被害をもたらした県北部豪雨災害が発生しました。
この災害を契機に同年10 月、「川内川激甚災害対策特別緊急事業」(通称:激特事業)が採択され、北薩広域公園の歴史ゾーンに隣接する箇所にも洪水被害の低減を目的とした川内川をショートカットする「推込(しごめ)分水路」が計画・完成しました。
「推込分水路」は分水路上流の築堤や河道掘削等と併せて川内川の水位低下に効果を発揮し、平成23 年には平成18 年7 月の県北部豪雨に匹敵する雨が降りましたが、浸水家屋はゼロとなりました。
今回、川内川に面する公園の計画ゾーンのひとつである「のびのびゾーン」のオープンから1年を記念して、当公園の概要と「のびのびゾーン」オープンまでの経緯についてご紹介したいと思います。

2.公園の概要と「ふるさとゾーン」供用開始まで
当公園は102.3ha の計画面積を持ち「地域のイメージ、河川、森林などの景観を生かし、芸術性や文化性を備えた北薩地域全体のシンボル的な役割をもつ公園」として平成4 年3 月に基本構想、平成5 年3 月に基本計画を策定し、平成5 年11月に事業認可を受けて整備に着手しました。
民俗文化を体験・紹介する「ふるさとゾーン」、川内川に面した中央部に「テーマゾーン」(のちの「のびのびゾーン」)、虎居城跡の「歴史ゾーン」という3 つのゾーンに大きく分けて整備を開始し、着手から10 年後の平成14 年4 月に「ふるさとゾーン」を供用開始しました。

3.「テーマゾーン」の整備内容見直し
その後、運動広場等を順次、供用開始してきましたが、当初の基本計画策定から10 年以上が経過し、基本計画の策定時と現在の公園を取り巻く経済・社会情勢が変化してきていること、また、テーマゾーンに計画されていた美術館や彫刻庭園、淡水魚水族館等に類似する施設が近隣に建設されたことなどから、学識経験者や地元代表者、周辺自治体の首長らで構成される「北薩広域公園整備計画検討委員会」を設置し、「テーマゾーン」の整備内容について検討が行われました。
検討委員会は平成16 年から平成18 年にかけて計4 回開催され、様々な意見を集約した結果、当初の基本計画にあった美術館や水族館等のいわゆる「ハコモノ」の整備は見直され、交流や自然体験等に主眼をおいた整備方針となりました。

4.「テーマゾーン」の整備推進、そして「のびのびゾーン」へ
整備計画検討委員会による整備方針の下、「豊かな自然資源の保全と活用」を基本方針とした自然観察池や「多様なレクリエーション需要への対応」を基本方針とした芝生広場やステージなどの実施設計が行われ、整備が進められました。
途中、平成18 年7 月に発生した県北部豪雨災害により河岸の侵食を受けたものの、無事に供用開始を迎えることができました。
供用開始に併せて、整備計画検討委員会による整備内容の見直しを踏まえてゾーン名称を再検討しました。
ゾーン整備のコンセプトである「豊かな自然の中で様々な体験を通して安らぎと潤いの得られる空間」や、整備内容のイメージなどから想起される「のびのび」を選定し、地元さつま町にも了解を得たうえで「のびのびゾーン」へ名称を変更しました。
また、当公園には県の管理する区域とさつま町の管理する区域があり、さつま町管理区域については全て供用開始されていたものの、県管理区域と周遊性があるのは運動広場のみという状況でした。
そこで「のびのびゾーン」の供用開始に併せて、町管理区域の園路を拡幅するとともに「のびのびゾーン」の園路に接続して公園全体の周遊性を高めようと、さつま町が事業主体となって園路整備が進められました。
園路が接続された結果、さつま町管理区域から「ふるさとゾーン」へ行くためにこれまでのように一般道へ出る必要がなくなり、「ふるさとゾーン」⇔「のびのびゾーン」⇔「さつま町管理区域」と公園内で移動ができるよう、周遊性が高まりました。
余談になりますが、当公園があるさつま町は県内でも有数の竹林面積を誇る「竹のまち」として知られています。「のびのびゾーン」の供用開始直前、在京テレビ番組製作会社より照会があり「のびのびゾーン」で収録を行いたい、とのこと。内容を聞いてみると「ザ!鉄腕! DASH !!」の1コーナー「DASH ご当地PR 課 ~鹿児島県さつま町 巨大竹トンボは空を舞うか!?~」と銘打って、直径2m の羽根を持つ巨大竹トンボを飛ばしてさつま町のPR を行いたい、とのことでした。
さつま町のPR はもとより、北薩広域公園のいいPR になると思われ、収録、放送されましたがご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

5.「のびのびゾーン」オープン!
さて、いよいよ開園当日。爽やかな秋晴れの下、とはいかなかったところでしたが平成28 年10月14 日、地元さつま町主催による開園記念式典が開催されました。九州地方整備局長を始め、地元選出国会議員、地元県議会議員、周辺自治体首長を来賓に迎えまた、さつま町の各自治会長、観光関係者、議員各位など多数、御参集のなか、盛大に開催されました。

記念式典終了後はすぐに一般開放され、近隣の小学校や保育園から大勢の児童、園児が遊びに来ました。芝生広場を走り回ったり、ぐりぶー(かごしまPRキャラクター)のモニュメントを付けた複合遊具で元気いっぱい遊んでいました。やはり、公園には子どもの声が似合います。
また開園記念式典の翌日には地元実行委員会により、これまで「ふるさとゾーン」において開催されていた「お月見コンサート」が、今年からは「のびのびゾーン」のステージを利用して開催されました。
残念ながら小雨のため、月を愛でながら、というわけにはいきませんでしたが、大勢の演奏者と観客で盛り上がりました。

「お月見コンサート」の翌日は当公園の指定管理者である(公財)鹿児島県地域振興公社が実施主体となって「花かごしまオータムフェスティバル2016」が開催されました。
この「花かごしまオータムフェスティバル」は「県民協働による、花・緑のボランティアの輪を広げるとともに、県民参加による花・緑豊かなまちづくりの普及・振興に資する。」という趣旨の下、平成23 年に本県で開催された都市緑化フェア以降、県内の県立都市公園において持ち回りで開催されているイベントで、毎年大勢の方々に参加いただき、好評を博しているイベントです。
今回も各種園芸教室やハンギングバスケット、コンテナガーデンや花苗等の直売のほか、フリーマーケット、地元商工会の協力の下で「マルシェ北薩広域公園」と銘打って特産品の販売を行うなど、魅力あふれるコーナーで賑わいました。

6.結びに
こうして「のびのびゾーン」を供用開始できましたのも、国土交通省をはじめ、地元さつま町など関係機関の皆様の御理解・御支援・御協力のたまものであると感謝申し上げるとともに、諸先輩方のたゆみない努力の結晶であると心から敬意を表します。
北薩広域公園のオープンから10 数年が経過したところですが、近年はスポーツ利用等の増加もあり年間入園者数は15 万人を越え、28 年度は過去最高の16 万8 千人を記録、累計で210 万人を越える方々に利用される公園になりました。平成32 年には「燃ゆる感動かごしま国体」を愛称として第75 回国民体育大会が開催されます。当公園も少年ラグビーの競技会場となっており国体を契機として今後、ますます利用されることと期待しています。

「のびのびゾーン」はオープンしたばかりで、芝生広場やステージなどが目に着きますが、これからのびのび広場の桜や、陽だまりの丘のヤマボウシ、モミジなどが生長してくると四季折々の花木を楽しむこともできるようになります。
今後は、関係機関と連携しながら、山城跡を活用した「歴史ゾーン」の早期整備、そして全面供用開始を目指して北薩広域公園の整備を推進したいと考えています。
また、川内川では九州で初となる水系一貫の「川内川水系かわまちづくり計画」が策定、登録され、各種ハード・ソフトを含めた整備が河川管理者、市町村、住民等と一体となって進められ「かわまちづくり」による地域の活性化が図られることとなっています。
最後に、北薩広域公園に来られた際は、のびのびゾーンの北エントランスへお立ち寄りください。
大きなイチョウの木があるはずです。このイチョウの大木は、県立川内厚生園(さつま町に隣接する薩摩川内市にあった障害福祉施設)の敷地内にあり入園者を長年見守ってきましたが、施設の解体等に伴い伐採される予定だったものを、今後、のびのびゾーンのシンボルとなることを期待してここに移植したものです。
夏には涼しげな緑陰が、秋には黄金色の黄葉が、来園者の皆様にたくさんの憩いと安らぎを与えてくれることと思います。

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