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八代港の官民連携による世界に誇るクルーズ拠点の形成

熊本県 土木部 河川港湾局
港湾課 課長補佐
塚 本 貴 光

キーワード:創造的復興、官民連携による八代港クルーズ拠点整備、おもてなしゾーン

1.はじめに
本県は、平成28 年4 月の熊本地震発生により大きな被害を受けた。道路を始めとする公共土木施設も甚大な被害を受けたが、八代港など、港湾の被害は比較的少なく、海上からの給水支援など、様々な支援活動が展開され、「港湾」の防災拠点としての重要性を改めて強く認識したところである。
こうした中、国が目標として掲げる「訪日クルーズ旅客2020 年500 万人」の実現に向けて創設された官民連携による国際クルーズ拠点の形成に関する制度を活用して、世界第2 位のクルーズ船社であるロイヤルカリビアン社(以下「RCL」という。)(米国マイアミに本社)をパートナーとして、八代港におけるクルーズ拠点形成に向けた取組みを進めてきた。
この「八代港のクルーズ拠点整備」は、本県の熊本地震からの創造的復興の象徴的な取組みである「創造的復興に向けた重点10 項目」の一つとして掲げ、重点的に事業を展開しており、現在、クルーズ船専用岸壁を整備する国、本県及びRCLの3 者で連携し、来年4 月の供用開始に向けて着実に整備を進めている。

2.八代港の概要と現状
本県には、八代港、熊本港、三角港の3 つの重要港湾があるが、八代港は、九州の中心に位置し、古くから米・木材等の物流拠点港として八代地域、ひいては本県の発展に大きく貢献してきた。
近年のコンテナ取扱量の着実な伸びに対応するため、平成30 年4 月には、水深12m の岸壁を有する外港地区北端に大型ガントリークレーンの新設を含む、敷地面積約5.6ha(旧ターミナルの約1.6 倍)の新コンテナターミナルを供用し、平成30 年のコンテナ取扱量も過去最高の23,065TEU(速報値)(対前年比約110%)を記録した。
平成24 年から毎年、クルーズ船の受入れを行っているが、既存の貨物岸壁において貨物船との利用調整を行いながら受入枠を確保している。
現在、整備を進めているクルーズ船専用岸壁を有する拠点は、新コンテナターミナルから離隔した外港地区南端に位置することから、物流と人流の機能が分離され、物流拠点としての更なる充実、新たな人流拠点の創造による賑わいのある港として生まれ変わろうとしている。

3.RCLをパートナーとして
拠点形成の連携パートナーであるRCL は、米国マイアミに本社を置く世界第2位のクルーズ船社であり、平成27 年に当社のボイジャー・オブ・ザ・シーズが八代港に初寄港した。また、熊本地震発生のわずか3か月後の平成28年7 月には、熊本地震発生によって各船社が寄港を取りやめる中、先陣を切ってRCL のカンタムが寄港した。カンタムには、本県への熱い励ましの思いが詰まった「がんばれ熊本!!」の横断幕が掲げられた。これは、メデイアにも大きく取り上げられ、県民に元気を与える明るい話題となった。
図らずも、熊本地震という未曽有の自然災害を経たことで、本県とRCL の絆が再確認・深化される形となった。このようなお互いの経験を踏まえ、本県とRCL は八代港クルーズ拠点の形成に向け、官民連携パートナーシップとしてタッグを組むこととなった。

4.官民連携による取組みのスキーム
平成29 年7 月に施行された港湾法の一部改正による「官民連携による国際クルーズ拠点形成」の制度を活用し、RCL と連携して取り組んできた手続き等の経緯を紹介する。
まず、平成28 年11 月に、RCL との連名で、整備する施設の概要や目標等の概要を示した「官民連携による国際クルーズ拠点形成計画書(目論見)」を国に提出し、全国6 港湾(平成30 年6 月に7 港湾、平成31 年4 月に9 港湾となる。)の一つに選定され、平成29 年7 月に、改正された港湾法に基づく「国際旅客船拠点形成港湾」に指定された。
平成29 年11 月に、同法に基づき港湾管理者が作成する拠点形成の基本方針等を定めた「八代港における国際旅客船拠点形成計画書」を作成、そして、平成30 年2 月に、計画の実効に向け、本県とRCL との間で、岸壁の優先利用や関連施設の整備・管理等に関する内容を定めた「八代港クルーズ拠点形成協定」を締結した。

その後、本格的にRCL と拠点整備に向け、整備のコンセプトやデザイン等について協議を重ねた。
協議は、RCL の担当者が数か月置きに来日する機会を活用することが多く、事前に課題を整理し、集中的・効率的に進めてきたが、トントン拍子に事が解決することばかりではなく、海外企業と連携する業務の難しさを感じることもあった。
供用開始目標期の約1 年半前となる平成30 年9 月に、本県の蒲島知事自ら米国マイアミのRCL本社を訪問し、マイケル・ベイリー社長と面談し、本県の取組みをPR するとともに、整備の加速化を働きかけた。
このような取組みの結果、翌月の10 月には、整備のコンセプトやレイアウトを示した基本計画の合意に至ることとなり、国、本県及びRCL の3 者合同での記者会見を行い発表した。
なお、この基本計画の発表は、当時、国際旅客船拠点港湾に指定されていた7 港の中でも最初の取組みとなるものであった。

5.基本計画の概要
公表した基本計画策定にあたっては、「世界に開くゲートウエイ「八代港」として、3 つのコンセプトを掲げた。1 つ目は、「世界の客船に開かれたウオーターフロントの形成」、2 つ目は、「地域に開かれた新たな賑わい拠点の創出」、3 つ目は、「熊本が誇る美しい景観の演出」である。
このコンセプトに基づき、約8ha の広大な面積の中で、国は、年間365 日、世界最大級のクルーズ船が寄港できる専用岸壁の整備、本県は、安全性、利便性及びデザイン性を備えた大型バスが最大150 台が駐車可能な円形の駐車エリアなどの整備、RCL は、CIQ 施設を機能的に配置した旅客ターミナルとその周辺に日本庭園やくまモンパーク(仮称)などの集客施設を配した「おもてなしゾーン」を整備する。
なお、本県が整備する駐車エリアは、RCL が整備する「おもてなしゾーン」との連続性を保つため、各施設の色調の調和や緑を多く配するなどの工夫を行った。
これらの取組みは、他の拠点形成港湾には無い八代港独自のもので、クルーズ船客だけでなく、県内外からの観光客や、県民にも開かれた空間となり、つい写真を撮りたくなるような、いわゆるインスタ映えする美しい景観を演出する舞台となるものである。

6.2020年4月の供用開始に向けて
現在、来年4 月の供用開始に向け、3 者それぞれの工事が最盛期を迎えており、着実に整備が進んでいる。
また、去る6 月に公表した、クルーズ拠点の完成イメージ映像等を活用し、より多くのクルーズ船の寄港が実現するよう世界中の船社等に対しPR 活動を行っている。
なお、完成イメージ映像は、本県のホームページで視聴できるため、是非とも多くの皆様にご覧いただきたい。

7.おわりに
前にも述べたが、本県は、熊本地震からの創造的復興に取り組んでおり、八代港のクルーズ拠点整備は、その象徴的な取組みである。その完成は、本県が、被災前より元気になったことを県内外にPR するシンボルとなるものである。
世界中の多くのクルーズ船とたくさんの観光客で賑わう魅力的な空間となるよう、国、本県及びRCL の知恵と力を結集し、「クルーズ拠点といえば八代港」と言われるよう、来年4 月の供用開始に向けて、全力で取り組んで行く。
読者の皆様には、来年、世界に一つしかない、魅力満載な八代港にお越しいただきたい。

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