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佐賀県立佐賀城本丸歴史館の建設について
…佐賀城本丸御殿の復元…

佐賀県 土木部
 建築住宅課 営繕班
中 村 隆 明

1 はじめに
佐賀県立佐賀城本丸歴史館は,佐賀城鯱の門(国の重要文化財)が現存する佐賀城本丸跡に,本丸御殿の一部を復元して建設し,資料館として活用するものです。(「御座間・堪忍所」(佐賀市文化財指定)の移築部分を含む。)
この歴史館は,「幕末・維新期の佐賀」を検証し,県民にこの時代の歴史をわかりやすく伝え,新しい郷土の発展の源泉となるような施設を目指しています。また,県民と共に活動し,21世紀の佐賀を担う人づくりの拠点施設としての役割も果たしていくことになります。
歴史館の建物本体の工事については,平成13年7月に着工し,約2年を経過した現在,建物本体の建築工事がほぼ終わったところです。これから,内部の建具工事・設備工事・展示工事、外部の外構工事を進め,平成16年3月末に完成予定です。(平成16年8月1日開館)

2 建物の復元年代、復元の考え方
建物の復元年代は,鍋島直正(10代藩主)が本丸御殿を再建(天保9年(西暦1838年完成))した「天保期」です。また,復元にあたっては,発掘調査文献資料・古写真・類例建物などの建物復元調査の成果をもとに,展示スペースとして広い空間の確保を考慮に入れ,復元部分を選定しています。

3 建設工事概要
(1)建設場所:佐賀市城内(佐賀城本丸跡)
(2)用途地域等:第1種住居地域・準防火地域
(3)構造階数:木造平屋建て(一部2階建)
(4)建築面積:2,499.51m2
(5)延床面積:2,449.74m2
   (1階2,208.46m2 2階241.28m2
    〈「御座間・堪忍所」(佐賀市重要文化財)移築約180m2を含む。〉
(6)建物の高さ  最高12.26m
(7)主要仕上げ
  (外部仕上げ)
   屋根:土居葺下地本瓦葺き(一部桟瓦)
   外壁:漆喰塗壁及び杉板張り
(内部仕上げ)
   床  :畳敷き(約700畳)
   壁  :漆喰塗壁
   天井:竿縁天井
(8)防災設備
   屋外消火栓・屋内消火栓・自動火災報知器一部窒素ガス消火設備・避雷設備ほか
(9)総事業費 約33億円(展示工事等を含む。)

4 建物の特徴
(1)建築基準法では,本来,準防火地域内の大規模木造建築物の建設が認められていません。佐賀城本丸御殿の一部を復元するにあたっては,文化財などに適用される建築基準法第3条(建築基準法の適用除外)の承認を受けています。
(2)発掘された佐賀城本丸御殿の遺構は,その上にサンドクッション(砂)及び耐圧盤(鉄筋コンクリート造)を敷設することで,確実に保護されています。その上で,佐賀城本丸御殿がもともとあった正確な位置に建物を復元しています。(完成後には,耐圧盤下の遺構の一部を館内で展示公開します。)
(3)建物の復元設計にあたっては,発掘調査・差図等の文献資料・古写真・残存建物(御座間・堪忍所)等の調査の成果をもとに精度の高い復元設計をしています。たとえば,柱の大きさや建物の高さについては,古写真の解析により正確な寸法を割り出しています。
(4)建物の建設にあたっては,隠れて見えなくなる部分まで伝統工法にこだわった施工を行っています。たとえば,屋根瓦の下には,3mm前後の厚さに手割りした杉板を4枚重ねにして防水層とした土居葺き(どいぶき)と呼ばれる工法を採用しています。また,使用する建設資材についても、できるだけ周辺地域内のものを利用しています。木材については,県有林なども活用し,県産木材を40%使用しています。また,石材についても佐賀県産及び長崎県産(旧佐賀藩内)を使用しています。
(5)移築部分(御座間ござのま堪忍所かんにんどころ)については,天保期の本丸御殿の一部が,昭和34年に公民館として,近くに移築し利用されていたものを,今回,再び移築復元しています。文化財の移築であるため,木材の他,屋根瓦・土壁の土等もできる限り再使用しています。
(6)この建物を歴史館として活用するにあたっては,できるだけ多くの方々にご利用いただけるよう配慮しています。復元の一部を保留し,スロープや多目的トイレを設置するなど施設のバリアフリー化を図っています。また,快適に観覧していただけるように,一部を除き冷暖房設備を設置しています。

5 おわりに
石工事・木工事・屋根工事・左官工事などの伝統工法については,技術者(職人さん)が全国的にも少ないため,歴史館の建設にあたり、佐賀県内はもとより,遠くは、愛知県・京都府・滋賀県・奈良県等から,多くの方々にご協力いただいています。また,現場で使用する各種の材料についても,生産地の方々の手を経て搬入されています。この誌上をお借りして,関係者のみなさまに対し,感謝申し上げます。
この歴史館の建物は,その基本部分を伝統工法で建設していますが,現場の方たちによると,「100年以上」長持ちするそうです。この建物が,佐賀県のシンボルとして長く利用されることを期待しています。

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