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佐賀県建設産業後継者育成海外研修に見る
ヨーロッパ4ヵ国の公共施設と建設産業

佐賀県土木部次長
川 原 隆 則

1 はじめに
本県においては,国の建設産業構造改善対策を踏まえ,土木部内に「佐賀県構造改善対策室」を設置し,建設業界における労働条件の改善やイメージアップの取り組み等の各種施策を関係機関と一体となりながら展開してきたところです。
この一環として,土木建築関係者が幅広い知識と国際的視野・感覚を身に付け,海外先進国の新しい土木建築技術の習得,建設産業の実情等について調査・研究し,建設産業の発展に寄与することを目的として,県内建設産業の後継者を対象に「建設産業後継者育成海外研修事業」を県費補助を含めて,平成5年度から実施してきています。
平成8年度は,10月21日から10月30日の10日間県内建設産業の後継者など関係者14名でスペイン・イタリア・オランダ・フランスのヨーロパッ4カ国を研修・視察いたしました。

今回のこの海外研修・視察に参加しましたので,ヨーロッパ4ケ国の公共施設と建設産業の実情を概要でありますが,思いつくままに御紹介します。
私は,県職員となって海外出張は,昭和55年(16年前)欧州を視察して依頼のことで,今回行くイタリア・フランスは,どのように変貌しているか,また,今回始めて視察する情熱の国スペイン,佐賀の有明海沿岸の佐賀白石平野と良く地形的に類似しているといわれているオランダとはどんな国なのか,心はずんで視察に出掛けたものです。
10月21日(月曜日)午前6時,福岡空港集合,海外視察ということで,前夜から興奮気味で熟睡できず,午前4時30分に佐賀を出発しました。福岡空港を7時25分に出発し,成田空港からアムステルダムを経由して,マドリッドに21時30分に到着しました。
飛行機搭乗時間16時間30分,待ち時間約5時間で,計21時間30分程度かかったようです。
今回の視察の最初は,スペインの首都マドリッドの国際空港であり,バラハス空港拡張計画は,2012年完成を目指して,1,250haの土地に2本ある滑走路を3本とし,機能的なターミナル,大型ハンガー等を建設して,現在の飛行機の発着を2倍にすることで事業が進められている。
いろいろな意見を聞いた中で,このバラハス空港をEC統合後,ヨーロッパの中でスペインとしては観光を重点に置いて何とか国際空港として残して行きたいという気持ちがありありとうかがえた視察でありました。
次の訪問地は,ローマ市内でコンセシオーニ,エ,コンストラッオーニ,アウトラトラーデ(K)で,イタリア全土で6,000㎞の高速道路の約50%の維持管理業務を受託している会社で,国際担当役員マリオ・フランコ氏の挨拶に始まり,技術官ジョルジイオ・ペロー二氏の説明を受けました。
会社は民間であるが,一部政府の援助があり,軽減することが可能かについて,機械の改善,舗装等の強度,耐久性,安全性の研究を常に行っていること,また,日本道路公団との技術交流を続けていることの説明がありました。
日本でも同じことが言えるが,メンテナンスをいかにうまくやるか経費をいかに軽減するかの問題がどこの国でも研究のテーマになっているのかなと,痛感させられました。
ローマでは,もう一か所万博場予定地であったが,第二次世界大戦の為,中止になった地域でエウル(EUR)地域で,新しい町づくりとして,民間によって住宅(マンション含む)商店街,緑地帯,公園等うまくレイアウトされた都市計画が完了された地域を視察しました。
四番目の研修視察は,オランダのロッテルダムの再開発地,コップファンズイド(Kop. Van Duip)で,世界有数の良港と言われるロッテルダム港の開発で,125haの土地に5,300戸の住宅,400,000m2のオフィスビル,35,000m2の商店街,30,000m2の教育施設を完備し,交通アクセスとして地下鉄新駅もつくる開発事業で,現在建設中の再開発事業です。
フランスにおける視察は,一つ目がパリのすぐ西部のディファンスと言う昔の要塞跡地の再開発で,昭和33年にEPADというフランス政府および地方自治体,財界の共同運営体が設立され,総面積750haの広大な地域にオフィス,住宅,大駐車場,公園等を造り,地下には地下鉄を含む道路網が計画されている。今やビルが立ちならんでおり,一部のビルはメンテナンスにいった所もあり,都市づくりとしては,さすがと思わせるビッグプロジェクトでありました。当地域にも最新の地下共同溝があり,電柱,電線のないすっきりとした都市空間が整備されていました。また,もう一か所の地下共同溝は,数百年前から設置された,歴史的なる地下共同溝であって大和民族としてはイメージすらしない,施設として整備された物であって,ヨーロッパ人のインフラ,特に都市空間,建築物橋梁等に対する文化のこだわりについてつくづく感心するのみでありました。
今回4カ国を訪問した感想としては,イタリア(ローマ),フランス(パリ)の有名な観光地は15年前にくらべてどのように変貌しているか期待していたが,町並み,建物,遣跡等,ほとんど変化がなかった。変化がなかったというより,世界の文化遺産として,良く保存されていたといった方が良く,ヨーロッパ人の文化に対する考えのすばらしさに痛感させられました。
しかし15年前には,イタリア,フランス人は昼休みについて,ほとんど全店昼休み閉店が実施されており,当時は日本から出店した店のみが開店しており,周辺の店から嫌われていたような事も聞いていたが,しかし,現在は昼も開店する所も多くなり,少しづつ変化しているようなこともあるかなと思ったものである。今回の視察で少しおしかったなと思っていることは,オランダが,佐賀の有明海地域と良く類似している低平地であり,地区内の内水位が地盤高より高くなっている所で,風車でもって排水するしくみ等は視察できました。しかし,干拓地にみられるオランダ式堤防とよく言われている「緩勾配で高い堤防」をみることができなかったことは少し残念でした。
視察旅行中の夜の部として,マドリードでのフラメンコダンス,ローマでのカンツォーネ,フランスにおけるセーヌ川の川下り等,ワインをのみながら国を代表する食事をいただきながら楽しく過ごさせていただいたこと,14名の研修であったが,建設業の各支部から推薦された代表として出席され大変すばらしい方ばかりであったこと等,今回の視察で見聞きしたことは文章であらわせないが脳裏にやきついており,私自身の大きな財産となったし,大変すばらしい,楽しい視察でした。
また,今回の研修参加者全員も,その思いで一致しており,建設産業後継者育成海外研修の所期の目的が達成され,県内建設産業構造改善の推進に寄与できたものと思えます。

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