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令和2年7月豪雨災害について
~九州地方整備局の対応~

国土交通省 九州地方整備局
 防災室 課長補佐
上 野 勇 二

国土交通省 九州地方整備局
 河川部 水災害予報センター
 水災害対策専門官
松 山 兼 二

国土交通省 九州地方整備局
 道路部 道路管理課 管理係長
楢 原 伸 介

キーワード:令和2年7月豪雨、TEC-FORCE、権限代行、通れるマップ、交通機能の確保

1.はじめに
 令和2年は、1月から佐伯さいき市及び延岡のべおか市で記録的短時間大雨情報が7回発表されるなど、「今年はどうなるのかな!!」というスタートであった。
梅雨入りは、九州南部が5月30日、九州北部が6月11日とほぼ平年並みで、序盤は鹿児島県の十島としま村で50年に1度といった大雨があり、その後、梅雨前線の北上に伴い長崎県では帯状の雨域が頻繁に現れるようになり、佐世保させぼ市や五島ごとう市で記録的短時間大雨情報が発表されるなどの大雨があった。
さらに、梅雨前線が九州付近に停滞した7月3日~4日には熊本県南部及び鹿児島県で、6日~8日には北部の福岡県・佐賀県・長崎県・大分県の広い範囲で大雨特別警報や記録的短時間大雨情報が発表されるなど九州全域で記録的な大雨となり九州全域で甚大な被害が発生した。
特に、球磨くま川流域では3日の日付が変わった頃から雨の降り方が激しくなり、流域全体を覆うような強い雨域が長時間停滞し堤防の高さを大きく上回るような洪水となり、人吉ひとよし市の中心市街地をはじめ球磨くま村などの球磨川及び支川の沿川では、家屋の倒壊・浸水など甚大な被害が生じるとともに、橋梁の流失や土砂崩れ、道路の崩壊などにより各集落へのアクセス道路も寸断され孤立集落が発生するなど住民生活にも多大な影響を与える大規模な災害となった。
九州地方整備局では、直ちに「非常体制」をり、被害地区からの様々な要請に対応するため、TEC-FORCEによる被災調査や災害対策用機械(ヘリコプター、排水はいすいポンプ車、照明しょうめい車、衛星通信えいせいつうしん車、対策本部たいさくほんぶ車、路面清掃ろめんせいそう車、側溝清掃そっこうせいそう車、船舶せんぱく等)を派遣し対応にあたった。この全国の整備局等から派遣いただいた活動は長期に及んだ。
被害の大きかった県が管理する球磨川支川の川内かわうち川など9河川では堆積した土砂・流木の除去を。また、球磨川にかる10橋や国道219号など八代から人吉に至る約100㎞に及ぶ復旧工事を国の権限代行により実施しているところである。
本稿では、7月豪雨の概要や九州各地の被災地対応を行ったTEC-FORCEの活動、河川・道路の権限代行による復旧状況及び復旧に向けた体制の充実など九州地方整備局における取組について紹介する。

2.令和2年7月豪雨の国土交通省の対応
2-1九州地方整備局の体制の確立等
球磨川水系球磨川がはん濫危険水位(レベル4)を超え災害発生の恐れがあった為、九州地方整備局災害対策本部は7月4日午前3時50分に最高レベルの「非常体制」を発令した。午前5時30分には福岡管区気象台と合同記者会見を行った。令和2年7月豪雨では、命を守る早期の行動につながる適時適切な情報を発信するため整備局と福岡管区気象台で合同記者会見を計8回実施し、報道機関を通じて広く住民に危機感を共有した。また、気象台からのweb会議による気象解説や在福民放5社は代表カメラクルーの撮影を共有するとともに、YouTubeによる生配信等を行い、コロナ禍での密集状況の回避を行った。
これら情報発信のほか、出先の各事務所から各市町村長等へのホットラインを12水系25市16町5村(7月10日時点)に行い、リエゾンと呼ばれる情報連絡員を5県庁21自治体に派遣し、自治体や防災関係機関の情報収集や各種調整に当たった。なお、被災規模の大きい球磨川流域では孤立集落解消に向けた取組の対応のため、熊本県庁等へスーパーリエゾン(整備局幹部)を派遣し、即時対応ができる体制をとった。

写真- 1 気象台との合同記者会見

2-2TEC-FORCE の派遣等
被災調査は、九州地方整備局保有の災害対策用ヘリコプター「はるかぜ号」が7月4日から球磨川、筑後ちくご川、大分おおいた川などの各流域の上空調査を開始し、被災状況調査は、九州TEC-FORCE隊に加え、全国(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、沖縄)の整備局等から広域TEC-FORCE隊が7月4日から派遣され、リエゾン、応急対策班を含め8月31日までの間に延べ9,356名が九州各地で活動を行った。

① TEC-FORCE による被災状況の把握・監視
災害対策用ヘリコプターの調査映像は防災関係の国の機関、県、地元行政機関などにリアルタイムで配信し、被災状況の情報共有を行った。さらに、国土地理院では配信映像を基に浸水エリアの解析を行い、浸水度合いを色の濃淡で示す「浸水推定図」を作り、TEC-FORCE による調査に活用された。
TEC-FORCEは、二次災害防止のための安全対策、コロナ禍での感染症拡大防止対策のため、現地作業判断メール、先遣せんけん班との共有会議、新型コロナ対応チェックリストによる健康状態確認、体調不良の報告、マスク・手洗い・消毒等の感染症防止対策等を徹底し、被災直後の7月4日から活動を開始した。
今回、初の試みとして最初に派遣された近畿、中国と後続の東北で先遣調査せんけんちょうさ班が派遣され、各自治体が把握していない概略調査や調査可能範囲の把握、自治体の個別相談を受け、被災調査班の活動の迅速化を図った。
被災状況調査班は、熊本県南部(球磨くま芦北あしきた八代やつしろ地域)12自治体に及ぶ広範囲な河川、道路、砂防等の被災状況調査を実施。このため、TECFORCE現地支援班を派遣し、自治体やリエゾンと被害調査等の要請と被災調査の進め方について采配を振るった。砂防班、河川班については、川辺川ダム砂防事務所に支援の協力を得る事により、迅速な被災調査を実施した。また、現地活動拠点を8箇所設置し、活動の円滑化を図った。
被災状況調査は、広範囲に及んだ事に加え不安定な土砂を有する箇所も多く、崩壊により通行不能な道路も多数あった事や7月3日の被災後の天候も18日まで晴れ日がなく降雨が多かったため時間を要した。また、7月24日~27日までの降雨による被害の拡大も懸念されたことから7月27日から被害再調査を実施。被災箇所は、再調査による被災95箇所を含め、1,713箇所に上り、調査結果を各自治体に手交しゅこうした後、全国から派遣された広域TEC-FORCE隊被災調査班は、8月4日に帰還した。
また、球磨川の沿川では、被災により光ケーブル通信網が寸断し、多くの箇所でCCTVカメラによる被災後の河川状況監視ができなくなったが、特に緊急性の高い監視箇所から優先して簡易型webカメラとモバイルルータ、可搬かはん型発電機で仮復旧させ監視の継続を行った。さらに、被災地の活動拠点として対策本部車を活用すると共に、自治体災害対策本部がおかれた地区は災害により通信事業者の地上通信網が不安定であったため、衛星通信車や衛星携帯電話等を配備し通信網を構築、首長との連絡体制を確保した。

写真- 2 被災地の上空調査

写真- 3 被災地での TEC-FORCE 活動

② TEC-FORCE による災害対策用機械の活動
7月豪雨の被災地では、被災した排水施設(排水機場、雨水ポンプ場)の代替機能の確保や浸水が発生した箇所等へTEC-FORCEの災害対策用機械が派遣された。排水ポンプ車は、多いときには九州内で54台/日(九州地整33台、全国の整備局等の広域派遣21台)が出動し、各地で活動した。なお、7月4日の大雨後も九州各地で長期間の大雨となり、早期の復旧が難しい排水施設も多かったため、活動期間が一ヶ月近くになる箇所もあるなど長期に及んだ。さらに、浸水による市街地の土砂などにより交通に支障を及ぼした人吉市や大牟田おおむた市からは浸水箇所の堆積土砂対策として路面清掃・側溝清掃の支援要請を受け、路面清掃車等の活動を行った。
有明ありあけ海、八代やつしろ海では航行船舶の安全確保及び海洋環境保全のため、災害協定団体や漁業者と連携し、流れ込んだ流木など大量の漂着物の調査・回収にあたり7月末までに1万5883立方㍍の漂着物を回収した。

写真- 4 TEC-FORCE 活動(衛星通信車)

写真- 5 TEC-FORCE 活動(排水ポンプ車)

写真- 6 TEC-FORCE 活動(路面清掃車)

写真- 7 TEC-FORCE 活動(漂着物の調査・回収)

3.九州管内の河川の状況と対応
3-1九州管内の出水状況
九州内の国管理河川20水系のうち、4水系(球磨川、遠賀川、筑後川、大分川)で氾濫発生(レベル5)、10水系で氾濫危険水位(レベル4)を超過し、14観測所において観測史上最高水位を記録した。県管理河川では、41水系113河川で氾濫が発生し、55水系72河川で氾濫危険水位を超過した。治水ダムの防災操作(洪水調節)は、国(直轄)管理ダム8ダム、水資源機構管理ダム3ダム、県管理ダムでは64ダムで実施し下流河川の水位低減を図った。また、土砂災害については、熊本県225件、鹿児島県69件、福岡県67件と多く、九州内全県で462件もの災害が発生した。

図- 1 九州直轄河川の洪水予報発表状況

3-2主な直轄河川の出水概要と被災状況
球磨川、筑後川、遠賀川、大分川の4河川で、越水や溢水による氾濫発生、球磨川で2箇所の堤防決壊が発生した。ここでは、特に被害等の大きかった2水系(球磨川、筑後川)の被害状況等について、詳細に説明する。

(1)球磨川水系
①出水概要と被災状況
球磨川流域に設置する多くの雨量観測所において戦後最大の洪水被害をもたらしたS40.7洪水やS57.7洪水を上回る雨量を観測し、観測史上最多雨量を記録、下流の八代市から上流のにしき町の全ての観測所で計画高水位を超過する水位となった。特に人吉市など川辺川合流点付近から下流域においては堤防の高さを大幅に超過するなど未曾有の大洪水となり、死者50名、浸水面積約1,150ha、家屋倒壊や浸水等による住家被害約6,280棟を数える甚大な災害となった。
国管理区間の河川管理施設の被害は、主に支川川辺川合流点から下流で被災し、堤防決壊2箇所、堤防損傷10箇所、護岸欠損17箇所、排水施設3箇所、排水機場1箇所などの全36箇所で被災を確認した。

写真- 8 人吉市周辺の浸水被害

写真- 9 人吉市街部の被害状況

写真- 10 球磨川右岸から約50m離れた場所での家屋倒壊(球磨村渡地区)

写真- 11 八代市坂本町の被災状況

②堤防決壊箇所の緊急復旧
堤防決壊の2箇所の緊急復旧工事については、人吉市中神なかがみ地区の(56k400)右岸築堤(被災延長30m)では、水位が下がり4日16時頃に確認し、八代河川国道事務所との災害協定に基づく企業と緊急随意契約により23時に工事着手し24時間体制で対応、49時間後の6日24時に完了した(写真-12)。
また、1.4㎞下流(55k000)左岸築堤(被災延長10m)においても、8日13時頃に決壊を確認し同様に緊急随意契約により18時に工事着手し、16時間後の9日9時30分に完了した。これらの堤防決壊等の対応については、即座に堤防調査委員会を設置し、被災原因の究明と復旧工法等の検討を実施した。その他の河川管理施設被害についても、引き続き災害復旧事業として対応し、令和4年度までに完了する予定である。

写真- 12 堤防決壊箇所(人吉市)の緊急復旧状況

③県管理区間 9 支川を権限代行
球磨川に流れ込む県管理区間の9支川では、大量の土砂や流木の流出により、河道の閉塞や堆積等の甚大な被害が発生した。今後の降雨による二次災害が発生する恐れがあるため、熊本県知事からの要請を受け、河川法第16条の4第1項の規定に基づき国の権限代行による9支川の緊急的な対策工事を7月28日より着手した。球磨村神瀬こうのせ地区の川内川等の土砂や流木の撤去(約5万m3撤去)、河岸防護、土砂止め設置等を実施し9月30日までに全河川において応急復旧を完了させ、現在、本復旧を継続実施中である。

図- 2 権限代行の9支川の位置図

写真- 13 - 1 川内川(球磨村)緊急復旧状況

写真- 13 - 2 川内川(球磨村)緊急復旧状況

(2)筑後川水系
①出水概要と被災
久留米くるめ三隈みくま鯛生たいおの上中下流の雨量観測所で近年の主な出水と同等もしくは上回る24時間雨量を観測し、片ノ瀬かたのせ荒瀬あらせ小渕こぶち杖立つえたての水位観測所では、氾濫危険水位を超え、観測史上最高水位を記録した。これにより日田市で浸水面積約52.7ha、浸水戸数117戸の外水氾濫(溢水)による被害が発生した。福岡県管理区間である支川玖珠くす川天ヶ瀬地区においても温泉街を襲う甚大な被害となった。また、
また、筑後川の久留米市北野きたの町(右岸39k600 付近)の堤防背面の田面より自噴(水の噴き出し)が発生したため、即座に応急対策として水防工法の「月の輪工」を実施し堤防決壊等の壊滅的な被害を防いだ。

写真14 筑後川の応急対策”月の輪工”

松原まつばら下筌しもうけダムの効果
筑後川中、上流域で観測史上最高水位を記録する中、上流にある松原ダムと下筌ダムでは、事前放流により貯水位をそれぞれ約1m下げ、両ダム連携による防災操作を6日18時~8日7時までの37時間行い、ダム貯水池に約8,200万m3の洪水を貯留し、筑後川下流河川の水位を低減した。なお、上流に位置する下筌ダムにおいては管理開始以来初めてとなる異常洪水時防災操作を余儀なくされた。
この両ダムの防災操作により、日田市にある小渕水位観測所(観測史上最高水位を記録)では、ふた山洪水に対し7日のピーク水位を約0.89m低減させ、また8日2回目のピーク時には約1.04m低減させるなど、いずれのピーク時もダムが無かったならば計画高水位を超過していたと推定され、下流の洪水被害を大幅に軽減したと推測される。また、久留米市の瀬ノ下せのした水位観測所では、もしダムが無かったならば氾濫危険水位を長時間超過し、久留米市内の排水機場などの運転停止の事態に陥り、更なる甚大な内水被害の発生が推測される。

写真- 15 下筌ダム洪水貯留状況(7月8日18時)

図- 3 小渕水位観測所の水位低減効果

3-3洪水予報やホットライン等の実施状況
今回の出水における各河川事務所においては、水防法に基づく洪水予報や水防警報の発表など、急激な水位上昇に対して立て続けの対応となったが適切に実施できた。合わせて河川事務所長から市町村長に対して自治体の防災対応に資する河川情報をきめ細やかに直接提供するホットラインを12水系46市町村へ実施した。またレベル4、5相当の洪水予報発表後に住民の主体的な避難を促進するため緊急速報メールを活用したプッシュ型配信を8水系で32回実施した。
また、福岡管区気象台と「気象現象による大規模水災害の予見に係る危機感の共有に関する覚書」に基づく合同記者発表を合計8回実施し、九州管内における降雨の状況や予測、また水位上昇が予想される河川に対する沿川自治体への警戒を促している。

写真- 16 合同記者会見の様子(7月7日9時~)

3-4既存ダムの洪水調節機能の強化
九州の一級河川20河川のうち19河川において、河川管理者やダム管理者、利水者(全106機関)が協力し、「既存ダムの洪水調節機能の強化」対象107ダムの「治水協定」を令和2年5月末までに合意していた。今時洪水においては、梅雨性の豪雨で頻繁に変動する降雨予測を確認しながら、4ダムで事前放流を実施し本川の水位低減に寄与した。(台風10号では九州内の63ダムで事前放流を実施)

3-5治水施設の効果
今時洪水では九州管内至る所で浸水被害や施設被害を被ったが、一方で治水施設の効果を発現し、被害発生の防止や被害軽減に大きく寄与している事も確認した。堤防による氾濫や溢水の防御は勿論であるが、ダムや遊水地ゆうすいちの洪水調節による下流河川の水位低下、また洪水を分散させ上流水位を低下させる分水路や捷水路しょうすいろの効果、長雨、長洪水等に耐えるべく施した堤防機能強化や護岸などの河道内施設による河岸浸食防止など、各河川で大きな効果を遂げている。

写真- 17 筑後川の分水路(7月8日)

写真- 18 鶴田ダムの防災操作(7月4日)(内川(せんだい)川水系:ダム再開発事業H30完了)

近年、九州を毎年のように襲う洪水被害に対処するため、これからも更なる治水施設の整備を進めると共に、気候変動の影響や社会状況の変化などを踏まえ、集水域と河川区域のみならず氾濫域も含めて一つの流域として捉え、またソフト対策にも取り組み、あらゆる関係者が協働して流域全体で行う治水対策「流域治水」へ転換していく。

4.道路の早期復旧・復興に向けた取り組み
4-1九州管内の道路被災
九州管内の道路においては、高速自動車道路、直轄国道、補助国道、地方道など計約430箇所で通行止めが発生、特に大分県日田地方、熊本県球磨地方では大規模な災害が発生した(図-4)。

図- 4 通行止め発生箇所位置図

4-2直轄国道の被災
国道210号(大分県日田ひた市~由布ゆふ市)では、車道崩落や法面崩壊など57箇所で被害が発生し、複数箇所で全面通行止めや片側交互通行規制などを実施した(図-5)。
このため、並行する大分自動車道杷木はき湯布院ゆふいんIC間において国道210号の代替路(無料)措置を実施し、広域迂回を行うことで交通を確保した。
特に日田市天瀬あまがせ赤岩あかいわ地区では、7月8日未明、道路陥没が発生、降り続く豪雨により、延長約100m にわたり車道が崩壊した(写真- 19)。
24 時間体制での復旧工事により、8 月17 日に交通開放した(写真- 20)。
国道3号の佐敷トンネル(熊本県葦北郡芦北町)においては、7 月4 日未明、坑口部の斜面が大規模に崩落し、土砂・倒木等でトンネル坑口を遮断したが7 月18 日に交通開放した(写真- 21、22)。

図- 5 国道210 号被災箇所位置図

写真-19 被災直後(7月8日)写真- 20 応急復旧完(8月17日)

写真-21 被災直後(7月4日) 写真- 22 応急復旧完了(7月18日)

4-3交通機能の確保
(1)大分県日田地方
大分自動車道(九重ここのえ湯布院ゆふいんIC)では、大規模な土砂崩れなどにより通行止めが発生したが、4車線区間であったことから、約3日後には被害の無かった下り線を活用し、早期に交通確保ができた(写真-23、24)。
また、杷木はき湯布院ゆふいん間では、国道210号が日田市天瀬あまがせ赤岩あかいわ地区の車道崩落により通行止めになったが、並行する大分自動車道とダブルネットワークを形成していたことから、高速道路により交通機能を確保した(図-6)。

写真23 写真24

図- 6 杷木~湯布院間の交通機能の確保

(2)熊本県球磨地方
九州自動車道八代やつしろ霧島きりしまIC間では、大規模な土砂崩れなどにより通行止めが発生したが、4車線区間であったことから、約20時間後には被害のない車線を活用し、早期に交通機能を確保した(図-7)。
また、国道3号八代~水俣においても大規模斜面崩落により通行止めとなっていたが、南九州西回り自動車道とダブルネットワークを形成していたことから、高速道路により交通機能を確保した(図-8)。
さらに災害復旧活動を支援するため、九州自動車道坂本PAをはじめ緊急開口部を設置し対応した。

図-7 八代~霧島間の交通機能の確保

図-8 八代~水俣間の交通機能の確保

4-4国の権限代行による災害復旧<国道219号及び並行する県道等>
(1)概要
八代市から人吉市間の国道219号等の道路の被災については、球磨川を渡河する橋梁が10橋流失するなど、被害が広範囲に及んでおり、被災地方公共団体より、国による早期復旧の要請を受け、流失した橋梁10橋を含む国道219号や熊本県道等の約100㎞の災害復旧事業を国において代行することを決定した(図-9)。
令和2年5月に改正された道路法に基づく、県道等の災害復旧代行が初めて適用された。

図9 国による災害復旧の権限代行区間位置図 

道路啓開ルート上の主な被災箇所を以下に示す。

写真- 25 ①路体流失 一般県道中津道八代線 	写真- 26 一般県道小鶴原女木線 深水橋

写真- 27 ②路体流失 八代市道瀬戸石・高田辺線 	写真- 28 国道219号 鎌瀬橋

写真- 29 ③路体流失 芦北町道川嶽線 写真- 30 主要地方道人吉水俣線 西瀬橋

(2)啓開ルートの整備
球磨川沿線で道路崩壊や橋梁流出等で通行を途絶された国道219号や県道については、八代市から人吉市を結ぶ球磨川沿いの啓開ルートを8月11日に完成させ災害復旧活動に必要な緊急車両の通行を確保した(写真-31、32)。
引き続き、一般車両の通行確保に向け、応急復旧作業を加速化している。

写真- 31 緊急車両の通行を確保 写真- 32

(3)応急組立橋を活用し早期の通行確保
桁の一部が流出した西瀬にしぜ西瀬橋(熊本県人吉市)は、7月23日に工事着手し、九州地整保有の応急組立橋を500tクレーンで架設を行い、9月4日に復旧が完了した(写真-33)。1ヶ月半程度で復旧ができたことにより通学路や生活道路の早期利用再開が可能とした。

写真- 33 西瀬橋 仮橋設置の状況(令和2年8月21日時点)

4-5孤立・停電解消における関係機関の連携 
7月10日より、孤立・停電を早期に解消するために、内閣府、国交省、総務省、経産省、林野庁、九州電力、熊本県からなる「陸の孤島解消チーム会議」を熊本県庁の災害対策本部に設置(写真-34)。孤立状況については、内閣府の孤立情報サイトのISUT(アイサット)を活用し、早期解消へ向けた調整を実施(図-10)。
電力復旧については、早期啓開に向け国、県、九州電力の3者で個別調整を実施。
被災の状況が不明な箇所については、国交省のTEC-FORCE投入により早期情報の把握に努めた。

写真- 34 陸の孤島解消チーム会議

図- 10 孤立箇所、停電箇所の位置図

4-6鉄道復旧における関係機関との連携
国道3号(熊本県葦北郡芦北町)と並行する肥薩おれんじ鉄道の復旧において、熊本河川国道事務所の協力、連携のもと、11月11日には全線で営業運行を再開。
具体的な連携内容として、
①鉄道線路内に堆積した土砂の撤去のため、国道3号から軌道内への工事用道路整備にかかる手続きを迅速に実施(占用手続き等の簡素化)
②道路用地を工事用道路として復旧工事が完了するまでの期間提供。
③搬出土砂の廃棄場所に関する情報提供。

写真- 35 肥薩おれんじ鉄道との連携

このほか、国道210号(大分県日田市~由布市)と並行するJR久大本線について、大分河川国道事務所とJR九州において、協力・連携のもと、2021年春までの全線復旧を目指している。
具体的な連携内容として、
①国道210号九重地区の道路応急復旧が完了した箇所において、降雨等により再び通行止めとなる可能性を考慮し、代替輸送の安全性確保のため大分河川国道事務所とJR九州で連絡体制の構築。
②国道210号の中で最も被害の大きかった赤岩地区において、道路の応急復旧箇所へ観測点を設置し、変位が大きくなった場合に、並行する久大本線への影響を考慮し、大分河川国道事務所よりJR九州へ動態観測データを提供する体制を構築。

写真- 36 JR九州との連携

③国道210号赤岩地区の通行止め区間において、杉河内駅利用者に限り、安全性を確保した上で、通行可能な措置を実施(看板等で駅利用者へ案内)

4-7通れるマップの早期公表
広範囲に及ぶ道路災害により通行困難が生じたことを受け、広域的な移動を円滑にするために、ETC2.0プローブデータを活用した「通れるマップ」を作成公表し、被災地の円滑な救助・救援活動、施設の復旧等を後押しした。
・熊本県南部周辺:7月4日~8月11日
・大分県西部周辺:7月11日~8月28日

図- 11 通れるマップ

4-8新組織の設置
令和2年7月豪雨により、甚大な被害を受けた河川、道路の災害復旧工事等を迅速かつ一体的に進めるため、9月1日に「八代復興出張所」を設置。災害復旧工事等を専属で担当する組織として出張所を設置することにより、熊本県知事から要請を受けた権限代行による事業を含め、迅速に関係機関調整を行い、円滑な工事の実施等を可能とし、被災地の復旧・復興を加速化していく。

写真- 37 八代復興出張所 左:村山局長、右:服部所長

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