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交通拠点及び道路ネットワーク整備によるストック効果事例
~北部九州自動車産業アジア先進拠点の推進~
豊永寿文

キーワード:ストック効果、道路ネットワーク、交通拠点、企業立地

1.はじめに
北部九州は、今や日産自動車九州㈱、トヨタ自動車九州㈱、ダイハツ九州㈱、日産車体九州㈱の4つの自動車メーカーと関連企業が集積し、年間154万台の生産能力を有する拠点に成長した。
その背景には、平成15年2月に福岡県知事を会長として設立した「北部九州自動車100万台生産拠点推進会議(現・北部九州自動車産業アジア先進拠点推進会議)」( 以下「推進会議」という。)による取組みがあり、県土整備部においては、効果的なインフラを整備することでこの取組みに貢献している。

2 社会資本整備とその効果(ストック効果)
本県では、国土交通省や西日本高速道路㈱等と連携して、上記取組みに必要なインフラ整備を推進している。以下に、社会資本整備とその効果(ストック効果)の事例を挙げる。

2-1 道路ネットワークの形成
九州北部における自動車メーカーは、推進会議が設立された平成15年時点で、日産自動車九州㈱(1976年12月に車両生産開始)とトヨタ自動車九州㈱宮田工場(1992年12月に車両生産開始)の2社であり、それぞれ県東部(苅田港の背後地)と県北部(九州縦貫自動車道沿い)に立地していたことから、自動車関連企業も県の東部から北部にかけて集中していた。
このような状況において、物流拠点と自動車関連企業及び県内の工業団地等のネットワークを強化するため、東九州自動車道(※ 1)の整備や、九州縦貫自動車道への鞍手インターチェンジ(※ 2)・宮田スマートインターチェンジ(※ 3)の追加設置、交通拠点へのアクセス道路の整備を推進してきた。
この道路ネットワーク形成の過程において、福岡県の全域で自動車関連企業が集積し、平成26年10月現在で487社の自動車関連企業が立地する一大生産拠点に成長した。図-1に福岡県内における幹線道路ネットワーク整備状況と自動車関連企業の分布を示す。

(※ 1)福岡県北九州市を起点として、大分・宮崎・鹿児島の各県を結び、鹿児島市に至る延長約436km の高速道路であり、福岡県内においては、これまでに椎田南IC ~豊前IC の7.2㎞を除く区間で供用中。椎田南IC ~豊前ICについては、平成28年春の開通を目標に整備が進められている。特に小倉東JCT ~苅田北九州空港IC が開通した平成18年2月前後に、トヨタ自動車九州㈱苅田工場(2005年12月)、同小倉工場(2008年8月)が生産を開始している。

(※ 2)供用中の九州縦貫自動車道に、地域活性化IC として追加設置(平成23年2月供用)(図-2参照)。

(※ 3)供用中の九州縦貫自動車道に、上り方向(北九州方向)のハーフIC を追加設置(平成23年3月供用)(図-2参照)。

2-2 物流拠点の整備(苅田港)

当時から、福岡県の物流拠点の一つであった苅田港においては、周辺に交通拠点となる北九州空港や東九州自動車道(苅田北九州空港IC)が整備されたことに加え、苅田港の埠頭整備や工業団地造成等により、背後地に日産自動車九州㈱やトヨタ自動車九州㈱苅田工場等の自動車組立工場やエンジン・部品工場が立地し、品目別取扱貨物における自動車関連部品が4割強を占める中、取扱貨物量は平成16年以降の10年間で約1.2に倍増加している(図―3及び図-4参照)。

これらインフラ整備の効果もあり、北部九州における自動車の生産台数はこれまでの20年間で約3.5倍に増加し、平成24年度には過去最高の142万台を記録している(図-5参照)。

また、自動車関連企業の進出が多い県東部に位置する京築圏域においては、2005から2010年の5ヶ年で、20歳代後半から60歳代の現役世代が転入超過傾向にある(図-6参照)。

3 おわりに
これまでに紹介した効果は、必ずしも社会資本の整備によるものだけではなく、様々な施策等との相乗効果によりもたらされたものである。
しかし、社会資本整備がなければ実現できなかったものであり、改めてその重要性を考える機会となった。
福岡県は、経済成長が著しいアジアに最も近い日本の玄関口として、今後の日本経済の活性化をけん引するポテンシャルを有している。そのポテンシャルを最大限に発揮させるためには、引き続き効果的に社会資本整備を推進する必要があると考える。

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