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九州技報 第36号 巻頭言

国土交通省 九州地方整備局 局長
岡 山 和 生

社会資本整備について国民の意識が冷めてきている。国土の社会資本整備が進み、生活の都市化に伴って生活水準が高まるにつれ、社会資本の存在やその意義が、利用者に感じ取りにくくなってきているためだろう。都市にあっては、空気と同じくあって当たり前のものになってきたのだろうか。

さて、そもそも社会資本すなわち、インフラ・ストラクチャーは下部構造のことで、人間でいえば下半身に当たる足腰である。これがしつかりしていないと何もできない。上部構造である上半身が活躍して、生活を楽しみ文化の花を咲かせることができない。社会資本の魅力が失われ、さらに社会資本整備について疑問や批判も広まっているのでは、将来困ったことになるのではないか。そこで今私たちは、将来、子孫の財産となる社会資本について、国民の認識、理解を得て投資を進められるよう、国民の意識改革を図る必要がある。

また社会資本整備は、国土と人の係わりをマネージする国士管理行為でもある。20世紀文明が人口爆発により、地球をエネルギーも物質循環も「飽和状態」にすることが予見される状況である。今、すでに「飽和状態」を感じさせる我が国の人口過密な国土利用を、世界が求めている次の時代の文明の手本として展開していく必要がある。

一方、上木技術は社会基盤を築き、文明の基礎を担う。社会のニーズを先取りして、新しい分野での課題に対応した基盤を築いてゆくための技術が必要である。すなわち、現場における当面の土木施工技術だけでなく、広く社会的要請に応える国士保全·環境保全の技術、社会資本の維持管理のための技術、社会資本整備への住民参加・合意形成のための技術などが求められている。次の文明が求めている技術開発を積極的に進めていく責務を負っている。土木技術は今大きな変革期にある。土木技術の革新が社会資本の魅力回復に繋がれば、国民の意識改革にも寄与する可能性がある。

私たち現場を直接担当する行政の立場としては、地域社会や現場の新しいニーズに敏感でいること、そして、技術の実用化の試行そして導入に意欲的であることが求められている。こうした状況の中で、九州における積極的な取り組みは全国から注目され評価されている。15年度から公共工事における技術活用システムにより新技術の活用促進に努め、13年度の137件が15年度には372件に大幅に増加した。今後さらに、産官学の連携によって広く知恵を集め、発注者と開発者が新技術のニーズとシーズについての情報交換を活発にすることにより、社会的ニーズ・現場ニーズの産官での共有や、技術シーズの産学での共有が促進されることが期待される。それができるかどうかに、今の状況を抜け出せるかどうかが懸かっている。

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