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九州技報 第32号 巻頭言

国土交通省 九州地方整備局
企画部長
熊 谷  清

民間の企業経営の中に,組織運営の知恵を学ぼうと,九州のエクセレント企業への取材を始めた。
老舗の製造業に話を聞いた。その社では,創業の事業分野をベースに,時代の流れにあわせ,事業分野の拡大を図り社業を展開してきた。生産ラインの効率化,技能者の多能工化などによりコストダウンも実現してきた。バブル崩壊後の景気後退は,経営に大きな影を落としている。

(供給過剰)
需要の減退により,製造業においては,供給過剰の状況にあり,企業間競争の激化が著しい。品質,価格などにより,企業の淘汰が図られるのが,市場による調整メカニズムである。市場における調整の結果は,市場からの退場者である。供給者の退場は供給力を減少させ,供給過剰を調整する。
今,製造業では,生き残りをかけ我慢比べの状況にある。生き残ったものが,市場を分け合うのである。所謂リストラなど,コストを下げるためのあらゆる努力がなされている。賃金の引き下げもその選択肢の一つである。経営者に始まり,従業員に至るまで皆全てが社業の継続のために一丸となって協力している。

(公共事業)
公共投資については,弱ったところを助け市場による淘汰の力を弱めているのではと,製造業には厳しい見方がある。
資源に乏しく,加工貿易を国の存立の基盤とする我が国においては,ハイテク製品,自動車などの外貨を稼ぎ出す製造業が国のエンジンである。外貨があって初めて,原材料,製品の輸入が可能となり,国内の経済,生産が回転する。公共工事をはじめとする建設関係は,一部海外で収益をあげているものもあるが,その多くは国内産業である。公共投資は,産業基盤,生活環境とその重点を移しながら進められてきたが,いずれにしても輸出産業の稼ぎ出す外貨をもとに国内の整備を図るものである。
公共事業に関係するものとしては,国のエンジンである製造業の状況を知り,その川下に位置することに思いを致し,自らの置かれている状況について十分理解をした上で行動することが大切である。

(需要創造)
市場による供給過剰の調整が進められる一方で,新たな需要の創造が求められる。
この点では,需要ベースの維持・拡大の視点が重要に思う。これまでの政策,施策は需要追随がその基本であった。「足りないものを作る」という発想である。戦後50年間に人口が5割増しとなる,人口増の著しい社会においては当然の対応であった。しかし,人口減少が現実の問題を迎える時代においても,需要追随,つまり人口減少を前提に適応的な対応で良いかどうか,再考の余地がある。

(少子化対策)
ヨーロッパなど少子化の進む国では,少子化を防ぐあらゆる手だてが打たれている。
経済社会は,もともと人の生活を支えるもので,人口は経済規模のバロメーターである。
少子化への対策を打ち立て,若年層の出生の増加を図ることは,新たな需要ベースを生みだす。経済社会を支え需要ベースを形作る人口,年齢構成を持つ適正な人口構造を維持し,需要創造を志向するデマンド・オリエンテッドな政策への転回が今求められている。

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