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九州技報 第28号 巻頭言

福岡大学 工学部長
大 和 竹 史

昨年は,有珠山,雄山(三宅島)および浅間山の噴火さらに鳥取地震が発生し,我々は改めて自然の脅威を目の当たりにした。自然災害に対する取り組みが極めて重要であることは論を待たぬが,一昨年の新幹線トンネルのコンクリート崩落事故,東海村の臨界事故,H2ロケット打ち上げ失敗など大型の技術プロジェクトの事故は人災とも言える。日本が21世紀の科学技術立国となるにはこれらの事故や失敗の真相と問題点をえぐり出して今後の対策を講じなければならない。
山陽新幹線などのコンクリート崩壊原因として,十分に塩抜きをしていない海砂を使用したこと,鉄筋の配置ミス(特にかぶりの不足),施工不良によるコールドジョイントの発生,不十分な維持管理等が指摘されている。公共構造物の建設は発注する官から受注する元請けおよび孫請けの民に至るまで工事システムが複雑に入り込んでいる。
また,分業化も進んでいる。各分業の現場では,機械設備の高性能化や自動化が急速に進み,技術者が対応しきれないあるいは自分が受け持つ分野の重要性を十分に認識していない状況に立ち至っているのである。
いま我々に突きつけられた課題は,現場技術者の技術力向上と効率のよい品質管理システムの構築である。前者に関する技術者資格に技術士制度があるが,いまこの制度の改革が検討されている。資格は取ったが現場を知らないものが増えていること,国際的に共通の技術者資格,例えばAPEC(アジア太平洋経済協力会議)エンジニアになるのに有利であるのかなどが議論されている。技術士や国際的資格者とまではいかなくても立派な技術者へ成長する学生を送り出すのが工学部の大きな使命である。このほど,日本技術者教育認定機構(JABEE)が発足したが,その目的は大学の工学教育の改革である。この認定基準には,プログラムの教育目標,教育成果,教育手段,教育環境,教育成果の現状分析,教育改善(自己点検システム)等の共通事項と,分野別基準があり,これらを満足すればJABEE認定の工学部となる。ちなみに福岡大学では化学工学科が試行段階に入っている。本学の自己点検・評価がまもなく再開されるが,工学部各分野でもJABEE認定を視野に入れた準備が必要となろう。
JABEEの共通基準には,教員の教育に関する貢献の評価法が明示され,実施されていること,教員の立場から,教育目的・目標がどの程度達成されたかを評価していること,学生にも自分の達成度を評価させ,学習に反映させていること,教育成果(技術的能力,技術倫理等の修得)の総合評価を行い,その評価方法等を検討する組織が設置され,機能していることなどが謳われている。
自分で考え,自分で改革し,技術者魂のある人物を世に送りだすことが問われているのである。

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