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九州技報 第20号 巻頭言

建設省 九州技術事務所
所 長
村 松 正 明

私達の技術事務所は,昭和25年久留米機械整備事務所が設置され,昭和41年4月に鳥栖材料試験所を合併し,「技術事務所」として発足して今年30周年を迎え,種々の企画をいたし,多くの方にお集まりいただいている最中です。
事務所の歴史をふり返るまでもなく,建設行政の推進,技術の向上は終始一貫したテーマですが,最近のように公共投資のあり方について各界から様々な批判がなされるとは予測されていなかったのではないかと思われます。不要不急の公共事業が多いなどと言われるような厳しい時代にとまどいながら,何を根拠に社会が批判するのかと思い,憂いてばかりになりがちですが,この機会に技術というものを真剣に考えてみる必要があります。
人間が,科学技術の利便性を追求するあまり気付いたら地球環境の破壊という自らの生存を脅かすような問題。日常生活における生命や財産の安全の確保ということが,阪神淡路大震災では崩れ,建設技術に対する信頼を根底からゆさぶられた問題。数々の危険信号を見逃し,混乱した地元に対しての救援対応が遅いと批判されている問題。全国的に猛威をふるった病原性大腸菌O-157の感染の問題など,どれも研究者の間では,その恐ろしさは知られていたにもかかわらず,行政や研究者の対応は必ずしも適切だったとは言われていない問題。これらの問題は,「○○の貴重な教訓が生かされていない。」と常に行政の弊害を指摘され,解決策を考えるための時間すら奪われている程です。
この厳しさは,建設技術が,生み出す様々なものは,市民生活に密接に結びついたものであり,市民に近い存在ですからこの本質を建設技術に携わる者が再認識し,技術者が本来の姿を見つめなおす,よい時期であるとも考えられます。
言うまでもなく新しい技術を開発し,活用するのは経験,判断力,論理を有する専門の技術者であり,その責任と社会的役割は重大なものと思います。しかしながらともすれば,技術は一部の専門家の独占物,特別なものであり,一般市民から遠くかけ離れたものであるかのように誤解していました。施設整備の経済性や効率性を第一とした技術,いわば「つくる側の技術」には終わりを告げ,新たに技術の視点を実際に使う人々の側に置き,公共土木施設そのもののみでなく施設周辺地域の環境や生活,歴史,文化などへの影響を含めた総合的な視点である「つかう側の技術」へと認識を転換することが最も大切だと言われています。
一人一人が真に豊かさと幸せを実感できる生活を考える時代に私達の技術は,「人々の夢」を実現するためのものです。私達は,多くの人々の意見を反映できるよう,より多くの人々に集まっていただき,より多くの情報を蓄積・発信しながら,人々の夢を実現する技術をますます広く,ますます深くさせていきたいものと考えています。

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