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2次離島における海岸護岸の災害復旧事例について

長崎県 土木部 道路建設課
国道・橋梁班 主任技師
貞 松 大 地

キーワード:令和2 年台風9 号、災害復旧、2 次離島


1.はじめに
五島列島は、長崎市の西方海上約100㎞に浮かぶ中通なかどおり島、若松島、奈留島、久賀島、福江島など大小152の島々からなる幅30㎞、長さ80㎞(男女群島はさらに南西海上70㎞)の島群である。五島振興局管轄の港湾・漁港は、重要港湾1港、地方港湾7港、6漁港である(図- 1)。
昨年度五島列島に来襲した台風9号、台風10号において、港湾27施設(うち公共災害4施設)、漁港12施設(うち公共災害3施設)が被災を受けた(写真- 1)。
本稿では、その中でも被害が特に大きかった2次離島に位置する相の浦港海岸阿古木護岸(図-2)における災害発生時から応急対応まで流れと災害査定及び実施時の一例を紹介し、今後の被災時の対応に活かすことを目的とする。

図1 五島振興局管轄図

写真1 福江港被災状況<

図2 被災箇所位置図(奈留島)

2.被災状況
令和2年8月28日にフィリピンの東で発生した台風9号は、比較的ゆっくりとした速度で北上し、長崎県については9月2日から3日にかけて、全域が暴風になった(図- 3)。五島列島においては、観測地点である『福江観測所』で最大風速21.1m/s、最大瞬間風速40.0m/sを記録し、特に南寄りの風が強いことが特徴であった。これにより、相の浦港海岸阿古木護岸が港外側へ転倒及び滑動し、それに伴い奥の集落へ向かう唯一の道路である市道及び水叩きが崩壊した(図- 4)。詳細な被災概要は下記のとおりである。
○被災施設:相の浦港海岸阿古木護岸
      L= 92.6 m(申請前)
○被災概要:堤体が約10m港外側へ転倒した。それに伴い、背後に波が回り込み約90m の堤体が港外側へ最大54㎝変位及び最大7.1°傾いた。また、堤体が転倒したことにより、背後の市道及び水叩きが崩壊した(写真- 2、写真- 3)。

図3 台風9号勢力図

図4 被災箇所と孤立集落位置関係

写真2 被災状況

写真3 裏埋材洗堀状況

3.被災メカニズム
被災発生時の潮位は、高潮や大潮の満潮時と重なったことにより、HWL + 3.20m を超えるWL+ 3.40m となったとともに、波の打ち上げ高も増大し+ 4.90m と護岸天端高+ 4.25m を超えた。これらにより、堤体の安定上も潮位が上がった事で浮力が増大し、引き波により堤体が前方に滑動し、堤体と水叩きや側溝の隙間より水叩き内部に水が侵入したことから、静水圧が増大し、転倒したと考えられる。詳細は下記のフローのとおりである。

図 被災メカニズムのフロー

4.応急工事について
堤体が転倒したことにより、奥の集落へ向かう唯一の道路である市道水ノ浦線が被災した。これ以上増破させないために、早急に仮復旧を行う必要があったことから、災害支援協定に基づき、大型土のうによる土留めを行った。なお、陸上からの施工はクレーンのブームが届かないため、海上から旋回起重機船により施工を行った。また、被災箇所の近傍において、養殖マグロの生簀があったことから、土砂撤去や水叩きを破砕する際に、にごりの影響を少なくするため、汚濁防止膜を設置した(写真- 4、写真- 5)。

写真4 仮応急前状況写真

写真5 仮応急後状況写真

5.復旧工法の検討について
被災延長が92.6m(5スパン)ある中で、表- 1のとおり港外側への堤体の変位及び傾き状況がすべて異なったことから、原型復旧を行うか、一部改良復旧を行うか検討した。変位及び傾いている堤体を活かすことで、低コストかつ迅速に復旧を行うことができるため、一部改良復旧を選定した。
被災箇所の断面図は図- 5 のように、堤体の背後は埋土であったが、変位及び傾いている区間は埋戻しを裏込栗石で行うことにより、内部摩擦角が大きくなり、堤体にかかる土圧を低減させることで、堤体を活用することにした(図- 6)。

図5 復旧断面(標準断面図(埋土))

図6 改良復旧断面(標準断面図(裏込栗石))

~検討結果について~
埋土で復旧した場合は、傾きが1.7°以上で滑動がOUT、傾きが4.7°以上で転倒がOUT となる。しかし、裏込栗石で復旧した場合は、傾きが7°以上であっても、所要安全率1.2 を確保することができた。したがって、表- 1 に記載のとおり1、3スパンは、図- 5 のように埋土で復旧を行い、4、5スパンは、図- 6 のように裏込栗石で復旧を行うこととした。また、2スパン並びに3スパンの一部は、変位量が大きかったため、打ち換えることとした。

表1 各スパンにおける埋土・裏込栗石における安定計算結果

6.実施の諸問題について
現地に着手した際に、基礎の形状は捨石マウンドであると想定していたが、岩着であった。当初、被災箇所の標準断面図がなく現地状況や隣接施設を参考に標準断面図を作成した。
また、基礎の形状及び堤体の直高が変わったことで、再度安定計算を行う必要が生じた。委託を出すことも考えたが、技術力向上のため直営で安定計算を実施した。実際やってみると、直営でも十分実施することができたため、今後は、安易に委託を発注するのではなく、極力自分で行っていこうと思った。

7.おわりに
2 次離島における海上工事であり、船での現場移動や潮汐による時間的制約があることから、同様の工事の際は、積極的に遠隔臨場を行うことが必要であると再認識した。
簡単な安定計算については、安易にコンサルタントに委託するのではなく、自ら行うことで必要な知識が身につくだけではなく、現場に応じた柔軟な対応力を備えることができることから、継続的な技術力向上に努めるため、自ら安定計算をしていくべきだと思う。
通常であれば、災害が発生した施設については、原型復旧するように進めていくと思うが、県民目線に立ち、低コストで迅速に復旧するためにはどうすべきかを考えることが重要である。

写真6 工事写真(応急工事後)

写真7 工事写真(復旧完了時)

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