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< i-Construction >ICTアドバイザー制度の創設

国土交通省 九州地方整備局
企画部 施工企画課 課長補佐
阿久根 祐 之

キーワード:i-Construction、ICT施工、アドバイザー

1.はじめに
我が国の人口は2008年をピークに増加から減少に転じており、15歳から64歳までの生産年齢と言われる人口が急激に減少している。日本のあらゆる場面で人手が不足し、建設業も例外ではなく担い手確保が難しくなることが想定されている。
このような状況の中、平成28年9月に開催された未来投資会議において建設現場の生産性を2025年度までに「2割向上」を目指す方針が示され、国土交通省ではi-Construction の取組を推進しているところである。
i-Construction では、トップランナー施策として① ICTの全面的な活用(ICT施工)、②全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)、③施工時期の平準化等を3つの大きな柱として位置づけ、各施策を着実に進めているところである。中でも、ICTの全面的な活用(ICT施工)は、調査・測量、設計、施工、検査等の建設生産プロセスにおいてICTを全面的に導入・活用するものであり、ICT土工を例に挙げると、延べ作業時間で約3割縮減するなどの効果が表れている。
また、ICT施工の実施状況については年々増加しており、直轄工事においては公告件数の約8割にも達し、地方公共団体においては約2割にとどまるものの実施件数では前年度の約1.4 倍と着実に増加しているところである(表- 1)。一方、地域を地盤とする企業からは、ICT施工に取り組みたいがどうすればよいか分からない、どこに聞けばよいか分からないという声も聞かれ、定期的な講習会等を実施してはいるものの、技術的な指導を容易に受けられる制度等がないことが課題であった。
そこで、九州地方整備局では、ICT施工の技術習得や能力向上へのアドバイスをICT先駆者から受けられる「ICTアドバイザー制度」を創設し、令和3年11月より運用開始したため、その内容について紹介する。

表1 ICT施工実施状況

2.ICTアドバイザー制度の概要
(1) 制度の概要
本制度は、ICT施工を先駆的に実施してきた企業等をICTアドバイザーとして登録し名簿を公表、技術支援を受けたい企業等は、名簿よりアドバイザーを選定・依頼を行い、双方合意に達した上で技術支援を実施する制度である(図- 1)。

図1 ICTアドバイザー制度概要

当該制度の技術支援に対する費用は原則無償としているが、旅費交通費等の必要経費や、研修・講習会等の実施に伴い必要となる機材等の経費についてはICTアドバイザーと依頼者で協議し決定することとしている。

(2)ICTアドバイザーの登録
ICTアドバイザーは、ICT施工を先駆的に実施しており、前述の条件のもとで協力を得られる企業等を募集し、実績等の審査を経て決定している。
応募区分・応募資格は下記の通りである。
<応募区分>
 Ⅰ 3 次元計測関係
 Ⅱ 3 次元設計データ作成関係
 Ⅲ ICT建設機械による施工関係
 Ⅳ 3 次元施工管理関係
 Ⅴ 総合マネジメント
 Ⅵ ICT施工の研修・講習会
<応募資格>
 以下に示すいずれかの実績を有すること。
・工事又は関連業務におけるⅠ~Ⅴの区分の実績(元請又は下請)
・ICT施工に関するアドバイスや普及・支援活動等の実績
・ICT施工に関する研修・講習会等の実績
初回の募集を令和3年9月~10月にかけて実施し、27社の応募があった。令和4年5月時点では40社をICTアドバイザーとして登録している。応募は随時受け付けており、登録手続きを行う4月、7月、10月、1月末日を締切とし、登録名簿は九州地方整備局i-Construction ホームページにて公表している。

3.支援依頼・報告
技術支援のフローを図- 2 に示す。

図2 技術支援フロー

①技術支援を受けたい企業等は、名簿に記載されているアドバイザーの支援地域や内容を確認した上で選定し、直接依頼を行う。内容によっては支援できない場合もあるため、依頼者は内容を明確に伝える。②アドバイザーは内容を確認した上で実施の可否を判断し、可能と判断した場合には日程調整を行い、サポートを実施する。③アドバイザーは、サポート開始、修了時に所定の様式にて報告書を作成し整備局へ提出するという流れになる。
なお、報告書については掲載を希望しない場合を除き、九州地方整備局i-Construction ホームページに活動実績として掲載しており、運用開始から昨年度末迄の約5 ヶ月で17件の活動実績報告があった(写真- 1)。アドバイザーの皆様には多忙の中協力頂き感謝している。

写真1 技術支援実施状況

4.おわりに
本制度は、ICT施工のさらなる普及促進を図るため技術支援に対する費用は原則無償としており、募集の際に協力を得られるのか不安であったが、初回登録時から多数の問い合わせや応募があった。応募者からは、ICT施工の普及促進に貢献したい、地場企業の底上げを図りたいといった理由が多く聞かれた。
現在でも新たなアドバイザーの応募がある等本制度への関心は高く、運用開始からまだ半年程度で今後様々な課題が見えてくる可能性もあるが、改善すべき点は適宜見直し、本制度が活用されるよう引き続き様々な場で紹介していく。 
本制度が、九州地域におけるICT施工の益々の普及促進に寄与することを期待している。

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