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鹿児島県営松陽台第二団地について
~子育て世帯が安心して生活できる住環境の整備~

鹿児島県 土木部建築課
住宅政策室      
技術主幹兼住宅建設係長
佐 伯 正 彦

キーワード:県営住宅、子育て、木造

1.はじめに
国においては、住宅セーフティネットの確保を図りつつ、国民の住生活の「質」の向上を図る政策への本格的な転換を図る道筋を示すことを目的として、平成18年に住生活基本法を公布するとともに、これに基づく「住生活基本計画(全国計画)」を定めた。
本県においても、本格的な人口・世帯減少時代の到来や県民の住宅ニーズの高度化・多様化などに対応し、県民の豊かな住生活を実現するため、「鹿児島県住生活基本計画」(以下「県計画」という。)を策定し、県営住宅の整備をはじめとする各般の住宅関連施策を推進している。

2.松陽台第二団地の概要
松陽台第二団地は、県計画における住宅施策の目標である「ゆとりとうるおいのある住まいの実現」を目指し、平成25年度から計画的に整備を進めているところである。
※ 県計画は、社会・経済情勢の変化を踏まえ5年ごとに見直すこととしており、当時は、平成24年3月改定版の計画に沿っている。

(1)立地(鹿児島市松陽台町)
計画地は、県都鹿児島市中心部から西へ約9 キロメートルの郊外(図- 1)に位置し、緑豊かな高台で、周辺は戸建て分譲団地に隣接するガーデンヒルズ松陽台の一角(約6 ヘクタール)となっている。
当団地からは、主要地方道鹿児島東市来線に接するとともに、近隣に南九州西回り自動車道松元インターチェンジ及びJR 鹿児島本線上伊集院駅を有し、交通利便性の高い地域である(図- 2)。

図1 ガーデンヒルズ松陽台位置図

図2 ガーデンヒルズ松陽台の立地状況写真 写真はGoogleEarthより転載

(2)基本方針等
先に紹介したとおり、当該団地は郊外の住宅団地の中にあって、緑豊かで交通利便性の高い地域特性を有していることから、住宅に困窮する低所得者の居住の安定確保と、子育て世帯が安心して生活できる住環境の整備を基本方針とし、希薄化する地域のコミュニティを誘発するよう配置計画にも工夫することで「ゆとりとうるおいのある住まいの実現」を目指すこととした。

テーマ ・周辺環境との調和と景観への配慮・安心して子育てができる環境整備 →ある程度の規模のオープンスペースを分散配置し,これに住棟を配するクラスターゾーニング※の手法を導入した。(図3を参照)

※クラスターとは
 群、集団の形態の一。もともと葡萄などの房や房状の花を意味するが、計画概念としては、例えば、1 本の道路や歩行者路に房状に取付いた一段の住戸などのように、ある秩序でまとまった空間単位の一群を指す。また、そうした一群を幹線道路などに枝のように取付ける意味にも用いられる。
 出典:建築大辞典(彰国社)

図3 基本構想時点のイメージ模型

3.松陽台第二団地の特徴
(1)整備計画と進捗
整備期間:平成25年度~
計画戸数:約280 戸
進  捗:令和2年度末までに188 戸が完成済み。R2 → R3 の債務負担事業で12 戸に着手済み。
なお、計画は、経済情勢や需要実態を見極めながら、柔軟に対応する。

(2)整備の特徴
①構造と形式
各住棟は、木造2 階建て、1 棟2 戸の長屋形式としている。
木は、独特のぬくもりと柔らかさを併せ持ち、二酸化炭素の固定にも貢献することから、鹿児島で育ち加工された「認証かごしま材」を用いた木造とすることで、子育て世帯が安心して生活することができる環境共生型の居住空間を提供している。

子供の転落防止のために、2 階階段降り口にスライド式のベビーフェンスを設置(写真上)

荷物の収納など多目的に使えるロフトを設置するタイプも用意(写真左)、降雨や降灰時の洗濯物も安心して干せるサンルームを設置(写真右)

また、1 棟2 戸の長屋建てとすることで、周辺の戸建て住宅と違和感のない景観形成が可能であり、各戸に庭を配することでコミュニティの誘発や、子供とのふれあいの場を提供する狙いがある。

②多様性への配慮
クラスター毎に複数の平面プランを用意することとし、入居者の世帯人数や年齢構成等による多様なニーズに対応できるよう務めている。併せて、従来の公営住宅の画一的なイメージとは異なる変化のある町並み景観を創造している。

写真 戸建て住宅と違和感のない景観を形成。クラスターごとに統一感のある外観を持たせているが、平面プランは2LDK や3DK など複数のタイプを用意

見取り図 2LDKの例 約66平方メートル/ 戸

見取り図 3DKの例(東西入り) 約79方メートル// 戸

見取り図 DKの例 約79方メートル// 戸

住宅の外観写真

③配置計画
全体を8 つのクラスターに分割し、各クラスターには共用のオープンスペースを持たせることとしている(全体配置図参照)。
これにより庭+ αのゆとりある空間を感じることができると同時に、近隣との一体感の醸成やコミュニティの誘発にも寄与することを期待している。

全体配置図(7期計画時点)

(3) 管理の特徴
子育て世帯向けとして、子育て期間に限定した10年間の定期借家制度を導入している。ただし、末子が中学校を卒業するまでは延長可能としている。
また、2 台目駐車場の需要に配慮し、全体で1.5 台/戸を確保するよう努めている。

4.おわりに
未来の鹿児島を担う子供たちが、安心してのびのびと育つことを願って、県営松陽台第二団地の整備を進めて参ります。

資料
鹿児島県住生活基本計画
県営住宅松陽台団地第二地区(C地区) 型別供給計画

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