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< i-Construction >ICT施工に関する
学習システム(eラーニング)の構築

国土交通省 九州地方整備局
企画部 施工企画課 課長
小 柳 典 親

キーワード:i-Construction、ICT施工、eラーニング

1.はじめに
生産性革命プロジェクトの一つとして、建設現場の生産性を2025年度までに2 割向上を目指し、i-Construction(建設現場の生産性向上策)を推進中である。
i-Construction では、「① ICTの全面的な活用(ICT施工)」「②全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」「③施工時期の平準化等」の3 つをトップランナー施策として進められている。 中でも、ICTの全面的な活用(ICT施工)は、起工測量、設計、施工、検査等の建設生産プロセスにおいてICTを全面的に導入・活用した生産性向上の取組みが着々と進んでいる。
ICT施工の直轄工事の実施件数は年々増加し、ICT土工を例に挙げると、延べ作業時間で約3 割縮減するなどの効果が表れている。1)一方で、企業の経験をみると、地方を地盤とする地域企業では、ICT施工の経験割合が低く(図- 1)、3 次元測量や3 次元設計などのICT活用をさらに進めるためには、ICTに精通した技術者・技能者を地域の企業に拡大する必要があると考えられる。しかし、地方部では受講機会が限られることや自治体発注工事を担う、地域の技術者がタイムリーに講習や研修を受講しづらいことなどが課題となっている。
さらに、コロナ禍の影響によって、講習会などの学習機会も減少しており、その対策が求められているところでもある。
このような状況を鑑み、九州地方整備局では、いつでもどこでもICT施工を手軽に学習できる機会を確保することを目的にeラーニングを活用した学習システムの構築を行った。
今回、構築した「ICT施工に関するeラーニングシステム」について紹介する。

図1 ICT施工経験企業の割合

図2 eラーニングシステム トップ画面

2.学習教材について
(1)eラーニングの特徴
本eラーニングはICT施工の各プロセスを章と科目から構成し、更に各科目は2 ~ 3 分の動画数本で編成して技術を解説する。動画による学習の最後には確認小テストを配置して知識の定着化を図り、ただ視るだけではない受講者参加型の学習システムとしている。
各章は施工のプロセス毎に構成するが、受講者が学びたい分野・技術を自由に選択して、学ぶことができるスタイルとした。
また、システム利用時に受講者が、ユーザー登録を行なうことで、学習状況等の保存ができ、継続的な学習が可能である。また、本eラーニングはパソコン、タブレット、スマートフォンなど様々な端末環境からのアクセスに対応しており、時間や場所を限定されない学習環境の提供を可能としている。
(2)学習対象者の設定
学習対象者については、ICT施工経験企業などへのヒアリング結果やICT施工の普及拡大への効果を期待し、施工の未経験者~経験数僅少である初心者をターゲットに設定した。
(3)学習教材の構成
最も重要となる学習レベルや内容に関しては、ICT施工経験企業などへのヒアリング結果を踏まえて決定した。ヒアリングでは、「基礎的なことを知ることで、ICT施工を導入するきっかけとなる」や「衛星測位の概念はICT施工において重要」などの意見が得られた。それらを踏まえ、学習レベルは「ICT施工の基礎」とし、ICT施工の概要や衛星測位、各施工プロセス(測量、設計、施工、出来形管理、検査・納品)に関して学習可能な教材構成(全11 章87 科目)を設定した(表- 1)。

表1 eラーニングの章構成

(4)学習教材の工夫点
eラーニング上の課題として継続的な学習意欲の維持等が挙げられる。その課題に対応するため、学習教材は、実写映像やイラスト、ナレーション、テキストなどを組み合わせたマルチメディア形態を採用(図- 3、4)、進行役のナビゲーターも配置して、抑揚の利いた構成とすることで、学習意欲の向上を期待している。

図3 eラーニング教材動画(実写映像)

図4 eラーニング教材動画(イラスト)

3.学習管理システムについて
eラーニング全体を管理する学習管理システムでは、利用ユーザーの属性、各章の受講状況などを把握できる機能を搭載した。また、受講者の登録時・学習完了時に実施するアンケート結果の集計機能も搭載しており、eラーニングの改良点など受講者の率直な意見を収集し、今後の改良・改善に繋げていきたい。

4.さいごに
本eラーニングによる学習が、ICT施工への取組のきっかけとなることを期待するとともに、さらには将来の担い手確保・育成の場面でのツールとしての活用も望まれるところである。
今後は、ICT施工技術の進展に合わせ、学習内容の陳腐化が生じないよう、適時かつ的確にメンテナンスを実施することが重要と考えている。
なお、eラーニングへのアクセス方法は九州地方整備局ホームページを予定している。

参考文献
1)ICT導入協議会資料/ R2.8.5

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