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「九州地方整備局における総合評価落札方式の取り組みについて」
九州地方整備局 桒野修司

1.国土交通省における総合評価落札方式の基準統一について
九州地方整備局では、平成17年4月に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」を受け同年下半期より、工事の発注においては、原則一般競争総合評価落札方式を適用している。
総合評価落札方式の実施にあたっては、全国統一の「工事に関する入札に係わる総合評価落札方式の標準ガイドライン」を基本としながらも、各整備局等において、独自の工夫を行い、実施における課題に対して試行を行いながら改善を図ってきた。
その結果、平成21年度の各整備局の方法を横並べして見ると、整備局毎に配点やその割合、さらに評価方法についても、違いが生じている。
国土交通省では、総合評価方式の審査・評価方法及び評価結果の透明性・客観性の確保を図るとともに、これまでの試行結果の標準化を図ることとした。
平成22年度からの対応に努めるものとされ、これを受けて九州地方整備局においても全国の統一方針に従い、総合評価落札方式の基準を見直すこととした。

2.全国統一方針と九州地方整備局における総合評価落札方式の変更について
全国統一方針の主なポイントを以下①~⑤に示す。
なお、統一事項に反しない限り、範囲内の設定や統一事項以外の評価項目などは引き続き各整備局での設定が可能とされている。
①タイプの選定方法及び加算点の配点割合
図-1、表-1に示すように、簡易型、標準型(Ⅰ型・Ⅱ型)の選定方法は、金額や工事規模によらず求める技術提案の数、内容によるものとされ、タイプ毎の配点と合計点が決められている。特徴として、簡易型、標準型(Ⅱ型)においては、「地域」の項目と配点を「施工能力(工事成績等)」とは別に設けていることが挙げられる。地域に貢献する地場建設業を評価しようとするものである。
また、平成21年度に比べ加算点合計が増えている。例えば平成21年度の簡易型の加算点が30点の時、平成22年度は40点としている。これは、施工体制評価点30点に対して、技術評価の割合を高めようとするものである。
なお、平成21年度に九州地方整備局で実施していた簡易な施工計画を求めないタイプは、やる気のある新規参入の制限となる等の理由から用いないこととなった。

②技術提案の指定テーマ数
指定テーマ数を簡易型では1題、標準型Ⅱ型は1(2も可)題、標準型Ⅱ型は2(3も可)題とし、応募者の負担軽減を図っている。
③指定テーマ毎の提案数
テーマ毎に5提案を上限とし重要なものの提案を求めると共に負担軽減を図っている。
④施工体制確認型について
施工体制評価において各地方整備局の統一を図るため、獲得した点数の30点満点に対する割合を、技術提案(又は簡易な施工計画)のみに乗じることとなった(図-2)。例えば、平成21年度は施工体制評価点が0点となれば加算点全体も0点としていたが、平成22年度からは、技術提案でない施工能力等の獲得点は加点される。しかし、平成21年度の九州地方整備局の実績で試算したところ落札者が変わることはほぼなかったことから、大きな変化は無いものと考えている。

⑤問い合わせ窓口の新設等
透明性の向上の観点から、技術提案の評価結果を通知することとされた。九州地方整備局では、従前から実施していたものである。また、技術提案の評価に関して問い合わせ窓口設置については、技術開発調整官を窓口責任者として対応を行うこととした。
さらに、九州地方整備局においては、評価基準についても可能な範囲で公表することとし、「工事の総合評価落札方式における現状の考え方」を改訂しホームページに掲載した。

3.総合評価のタイプ別の目的と課題
総合評価のタイプ別にその目的と課題を示す。
①簡易型
平成22年度の簡易型は、技術的な工夫の余地が小さい中で、難易度の低い工事において設計図書(標準案)の範囲内で重点的に配慮すべきことについて記述を求め、適切かつ確実に施工上の性能等が確保できるかを確認するものである(図-3)。

あらかじめ、評価する項目を設定するため、より客観的な評価が可能で確実な品質確保を期待するものである。また、地域貢献等を評価する「地域」の評価については、どのような貢献の仕方や精通度を評価すべきかについて、今後実施状況を見ながら工夫が必要である。
②標準型
標準型の考え方に平成21年度と大きな変更はない。標準案に基づき施工できることはもとより、さらにその工事の品質向上となる技術提案をもとめるものである(図-4)。
標準型には、技術提案の実施における企業の費用負担が生じることになる。品質向上とならない提案の加点評価は与えないが、技術提案の効果がその投資する金額に見合わないものもあると思われる。これはオーバースペックであり、発注者としては、排除すべきと考えており、現在でもそのような提案の例示など、いくつかの対応はとっている。今後は、オーバースペックの定義と明示が必要と考えている。また、数値提案は、実施結果を評価するものであり、オーバースペック対策の効果もあることから、可能なものについては引き続き対応して行きたい。

4.総合評価の導入効果
総合評価による効果は、工事の品質向上にある。長期の使用をする公共土木施設としては、長期の経過を見ないと評価できない場合もあるが、コンクリートのひび割れが少なくなったなど、技術提案による効果が報告されている。
また、原則総合評価を適用した平成18年度以降の工事の成績の平均を見ると、毎年成績が伸びている(図-5)。

今後は、効果の分析を行うとともに有効かつ一般的に実施が可能であれば、標準化を検討していく必要があると考えている。

5.九州地方整備局独自の取り組み
九州地方整備局では、全国で統一ルールを踏まえつつ、独自の工夫を行っている。
その一例を次に示す。
①インターネットを活用した工事説明会
現場説明会は、入札参加者が一堂に会することになり、談合防止等の理由から現在では行っていない。
ところが、工事内容が複雑であったり、新工法を取り入れている場合、さらに現場に立ち入りが出来ないなどにより、工事説明会をすれば分かり易いケースがある。そこで、その両立を図るためインターネットを活用した工事説明会を試行した(図-6)。

現在、他の整備局でも実施が検討されているところである。アンケートを行った結果は概ね好評であったが、説明会に要する負荷もあるので、対象工事を適切に選定して効果的な実施に努めて行きたい。
②契約後VEの取り組み
入札時に技術提案として、「契約後VEにつながる基本的考え方の提案」を求め、契約後に発注者・受注者が協働してコスト縮減に努める取り組みであり、平成20年12月の試行から3億円以上の工事を対象として実施している。現在は、2億円以上を対象とし拡大を図っている(図-7)。

6.建設コンサルタント業務の入札契約方式について
国土交通省直轄事業の調査・設計業務で多く用いられている入札契約方式は、「価格競争入札方式」と「プロポーザル方式」である。「価格競争入札方式」は、一定の基準に基づいた競争参加者により、どの競争参加者が落札者となっても一定の品質が確保可能となるよう資格、実績、成績等による条件を付したうえで、最低価格入札者を落札者とする方式である。
一方「プロポーザル方式」は、「高い知識又は構想力・応用力が必要とされる業務」を対象に、発注者が業務概要と概算金額を提示したうえで、競争参加者に技術提案書の提出を求め、技術的に最適な者を特定し、契約を行う方式である。

7.総合評価落札方式の本格導入
平成17年4月に施行された「公共工事の品質確保に関する法律」には、工事に限らず調査及び設計の品質確保も重要であり、競争参加者に技術提案を求めることが明記された。
価格による競争から価格以外の多様な要素も考慮して価格と品質が総合的に優れた契約がなされることが重要となる。
「総合評価落札方式」は、前述の2つの入札契約方式の中間に位置し、価格の評価に加え技術の評価を行い、より高い技術を持つ者を優位とし、技術を持たない者が落札しにくくすることで、調査・設計業務の成果品の品質向上を期待するものである。
建設コンサルタント業務等においても九州地方整備局では平成19年度に価格と技術が総合的に優れた者が落札する「総合評価落札方式」の試行を開始した。
そして平成20年5月に国交省と財務省との包括協議が整ったため総合評価落札方式を本格的に導入することとなった。
図-8入札契約方式の適用状況が示すように価格競争が減少し総合評価落札方式が増加している(図-9総合評価落札方式導入イメージ)。
なお、平成21年4月20日付で建設コンサルタント業務等に関する調達方式の適切な選定等の考え方及び各方式の運用等を示した「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」が策定されたところである( 以下「運用ガイドライン」と略す)。

8.平成21年度の入札契約状況
①入札契約方式の適用状況
九州地方整備局管内(港湾空港部除く)における平成21年度の調査・設計業務の契約件数は2,362件であり、入札契約方式別の割合は、表-2に示すように全業種合計では価格競争が51.6%、総合評価落札方式が9.1%、プロポーザル方式が38.4%、随意契約が0.9%を占める結果となっている。

業種別には、表-2に示すように、技術提案を求めることにより優れた成果を期待できる業務の割合が多い土木コンサル業務においてはプロポーザル方式の適用割合が56.9%と高く、一定の資格・実績・成績等を付すことにより品質を確保できる業務の割合が多い測量、地質調査、建築コンサルタント及び補償コンサルタント業務においては価格競争入札方式を適用した割合が76.1~95.3%と高い結果となっている。
②落札状況
図-10に業務(価格競争方式)の落札状況、表-3に平成21年度の業種別の17年度~平成21年度の予定価格1千万円以上の価格競争入札方式札結果を示す。
全業種の平均落札率は、平成17年度の89.2%から年度毎に低下し、平成21年度には80.9%となっており低価格での競争が激化してきていることが伺える。
業種別には、土木コンサルタント業務の平均落札率77.2%と全業種の平均を下回る結果となっている。
また、表-4に低入札発生率経年変化を示す。

9.業務の総合評価落札方式の改善に関する取り組み
運用ガイドライン(H21.4.20付策定)を踏まえ九州地方整備局では「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の現状の考え方」(以下「現状の考え方」と略す)を平成21年5月29日に公表した。
これは、九州地方整備局が発注する業務のプロポーザル方式及び総合評価落札方式等について透明性、公平性の確保をより一層図るとともに業務の特性に応じた運用を図ることを目的にとりまとめたものである。
より一層の内容の充実を図るために「現状の考え方」は適宜見直しを行っており平成22年4月1日に改定した。なお内容は以下で公開している。

・URL:http://www.qsr.mlit.go.jp/kensetu_joho/

平成22年度建設コンサルタント業務等における発注方式の選定にあたっては図-11の基本選定フローに基づき選定することを基本としているが、さらに図-12のような概念図を選定の目安として活用することとし「現状の考え方」にも記載している。

総合評価落札方式は、事前に発注側が仕様を確定可能であるが、入札者の提示する技術等によって、調達価格の差異に比して成果に相当程度の差異が生じることが期待できる業務を選定しているが、図-12のような概念図の整理により業務内容に応じた発注方式の選定がより標準化でき、平成22年度は前年度よりさらに総合評価落札方式の拡大を見込んでいるところである。
なお、平成22年度「現状の考え方」の主な改定点は以下のとおりである。
①配置予定技術者の業務成績評価の対象年数の変更
過去4ケ年へ改定(H21:過去2ケ年)
②企業・配置予定技術者の表彰評価対象年数の見直し
企業は過去2ケ年へ改定(H21:過去10ケ年))
③配置技術者の提案は1名を基本とし、平均値評価の廃止(H21:配置予定技術者3名まで認めその平均値)
なお内容の詳細については前述のHPを参照されたい。

10.建設コンサルタント業務の品質確保対策
建設コンサルタント業務においては調査基準価格(予定価格1千万以上の業務に設定)を下回る業務が平成20年度に比べて平成21年度は減少したもののまだ高い水準であり、調査・設計業務の品質に支障を来すだけでなく、それに基づいて行われる公共工事の品質確保にも支障が及ぶおそれがある。
現在(H22.5.10時点)調査基準価格を下回って契約した業務における主な品質確保対策として下記の対策を実施している。
①業務中の監督強化(測量・地質業務)
測量、地質調査実施時の主任技術者の現場常駐義務付け
②履行中の監督強化(土木関係コンサルタント業務)
現地作業や調査を伴う場合は管理技術者の現場常駐義務付け
③請負者負担による第三者照査の義務付け
照査を含む業務で第三者照査の義務付け
④予定管理技術者等の手持ち業務量の制限
調査基準価格を下回る金額で落札したものがある場合の手持ち業務量を金額4億未満件数10件未満の制限から金額2億未満件数5件未満と制限(補償コンサルタント業務においては当初の手持ち業務量金額1億未満件数10件未満の制限から金額1億未満件数5件未満と制限)
⑤履行期間中の手持ち業務量制限の担保
履行中に管理技術者等の業務の制限(金額2億未満件数5件未満)を越えた場合、当該管理技術者の交代措置請求を可能とした。

さらに、上記①~⑤の対策に加え、総合評価落札方式で発注した低入札業務において技術提案の確実な履行の確保を厳格に評価するため技術提案の評価項目に新たに「履行確実性」を加えて技術評価を行う等の品質確保対策が必要と考えている。

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