一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
九州初の道路シールドトンネルの施工について
~鹿児島東西道路の概要~

国土交通省 九州地方整備局 
 鹿児島国道事務所 事業対策官
那 須 一 彦

キーワード:鹿児島東西道路、シールドトンネル、交通混雑の緩和、シラス

1.はじめに
鹿児島市は、鹿児島県の中央部に位置し、その市街地は、シラス台地に囲まれた少ない平野部に形成されており、地形的な制約から市街地へ流入する車両は幹線道路に集中しているため慢性的な交通混雑が発生している。
鹿児島東西道路は、九州縦貫自動車道や南九州西回り自動車道、指宿スカイラインが結節する鹿児島 IC と鹿児島市街地や重要港湾鹿児島港などへのアクセス機能を強化するとともに、都市交通の円滑化と交通混雑の緩和を目的として事業を進めているところである。
九州地方整備局の道路トンネルでは初めてとなるシールド工法を採用し、これから本格的なシールドトンネルの本体工事に向けて動き始めたところであり、完成までに長期間を要する大規模工事となるため、本稿ではこれからの施工について紹介するものである。

図1 鹿児島都市圏の広域道路網図

2.鹿児島東西道路事業概要
鹿児島東西道路事業は鹿児島 IC から鹿児島市上荒田町まで延長約 3.4㎞の自動車専用道路であり、これまでに鹿児島 IC から田上 IC 間(0.4㎞) が完成 4 車線、田上 IC から建部 IC が暫定 2 車線で開通している。
引き続き建部 IC 付近から東側の鹿児島市街地方面において交通混雑が発生していることから、整備効果の高い下り線を先行して整備を進めているところである。

図2  鹿児島東西道路概要図

3.整備効果
鹿児島東西道路の整備により、既存の高規格幹線道路等との結節による広域ネットワークの形成が図られ、鹿児島市街地へのアクセス機能強化が図られるとともに、以下の整備効果が期待されている。
・交通混雑の緩和
交通の分担が図られ、並行路線(県道)の交通量が低下することにより、交通混雑の緩和が期待されている。

図3 交通量の変化

・交通安全性の向上
並行する路線の交通が転換することにより、走行性の改善による交通安全性の向上が期待されている。

図4 交通事故発生状況

4.シールドトンネル工事(下り線)
4-1 工事概要
鹿児島東西道路下り線の工事については、シラス台地(田上 IC から建部 IC)を抜けて、市街地(建部 IC から甲南 IC(仮称))の JR 鹿児島本線を地下横断し、市道中洲通線まで伸びる延長約 2.3㎞の区間においてシールドトンネルにて施工を行うものである。
工事の発注手続きに当たっては、種々の課題に対して、施工者独自の高度な技術力が必要であることから、設計段階より施工者独自のノウハウを取り入れる技術提案・交渉方式(技術協力・施工(ECI) タイプ)を採用し、業者選定(※ 1)を行っている。

4-2 経緯
当初計画では、シラス台地部においてはNATM 工法、市街地部においては開削工法で考えられていた。
しかし、設計を進める中で、シラス台地部において地下水位以下での施工や既存の九州新幹線のトンネル、武岡トンネルとの近接施工となること、また、市街地部での開削による長期間にわたる交通規制が常時発生することや JR の軌道及び既設構造物等に対する影響の低減対策、地下水流動の阻害など周辺住民の生活への影響が懸念されることなどの技術的課題を解決するため施工方法を再検討する必要が生じた。
再検討の結果、地下水への影響や市街地部における周辺地盤の緩みが少なくなること、立坑や作業ヤードの規模が縮小となり市街地部周辺住民の生活の影響を最小限に抑える事などが可能である密閉型シールド工法(泥土圧)の採用に至っている。令和 2 年 11 月現在、市道中洲通線において、シールドマシンを発進するための立坑の設置(※ 2)や地盤改良等を行っており、併せてシールドマシンの製作を進めているところである。

図5 工事全体路線図

図6 横断図

4-3 施工フロー
シールド工法は、立坑より発進したシールドマシンにより掘進、土砂搬出、セグメント組立の作業を繰り返しながらトンネルを構築していくものであり、概ねの作業について以下に示す。

①発進立坑の設置
掘削を行うシールドマシンの据付や掘削した土砂の搬出、セグメント等資材の搬入等も兼ねた縦穴を構築する。

図7  発進立坑

②地盤改良
シールドの初期発進における止水や地山の安定等を図るための地盤改良を行う。

図8 地盤改良イメージ

③シールドマシンの製作及び搬入組立
工場で製作されたシールドマシンを解体後に現地搬入、立坑へ投入して組立を行う。(シールド外径 11.34m)

図9 シールドマシン搬入組立イメージ

④防音ハウスの設置
発進立坑の設置箇所は市街地に位置するため、沿道環境への影響を最小限にする必要があることから防音ハウス(長さ約 150m、高さ約 14m)設置を行う。

図10 防音ハウス設置イメージ

⑤シールドマシン掘進
掘削しながら組み立てられたセグメントを反力に前進し、掘削土砂をベルトコンベアー等で坑外に搬出する。マシン後方に出来たスペースに、エレクターによりセグメントの組立を行いトンネルの構築を行う。

図11 掘削イメージ

5.施工上の課題
技術的課題を踏まえてシールド工法を採用したところであるが、施工上の課題として、交通量が多い市街地部の道路上においてシールド発進立坑を設置し、シールドマシンの組立や資材の搬入、土砂の搬出等を行うことから防音ハウスの設置など沿道環境に配慮した取り組みが必要であることや JR 鹿児島本線を跨ぐ県道鹿児島市来線の曙陸橋側道橋及び鹿児島市が管理している東雲調整池擁壁にある杭基礎を切断しながらシールド掘進を行うために安全かつ確実な施工が必要である。
加えて、非常駐車帯になる拡幅部については、南九州の特殊土壌であるシラス地盤での施工に対する技術が確立しておらず、特殊な工法が必要となっている。
これらの課題に対して受注者の最新の技術や知見等から技術協力を頂き、施工時のリスクを低減し効率的な施工を進めることとしている。

図12 杭基礎切断イメージ

図13 非常駐車帯

6.終わりに
鹿児島東西道路による広域ネットワークの形成及び慢性的な交通混雑緩和に向けて、今後も地域の方々のご理解ご協力を頂くとともに、受注者(大成・大豊特定建設工事共同企業体)と協力して安全かつ効率的に施工を行い、周辺環境への影響が少なくなるよう最善を尽くして、早期供用に向け引き続き全力で取り組んで参りたい。

(※ 1)
工事名:鹿児島 3 号東西道路シールドトンネル(下り線)新設工事
工事内容:シールドトンネル(立坑側壁以降を含む)
受注者:大成・大豊特定建設工事共同企業体
工期:令和 2年3月 18 日~令和 6年3月 31日

業務名:鹿児島 3 号東西道路シールドトンネル(下り線)新設工事
   にかかる技術協力業務
受注者:大成・大豊特定建設工事共同企業体
工期:令和 1 年 12月7 日~令和2年2月6日

(※ 2)
工事名:鹿児島 3 号東西道路(下り線) 立坑設置工事
工事内容:立坑(底版まで)
施工者:飛島建設(株)九州支店
工期:平成 29年9月 12 日~令和2年7月 31日

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧