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九州における今後の社会資本整備のあり方
公益社団法人 日本都市計画学会 九州支部長
(㈱福山コンサルタント 事業本部長) 中村宏

平成22年国勢調査によると日本の人口は17年から横ばいの1億2,805万人、65歳以上人口が14.1%増の2,029万人、高齢化率23.1%となっており、人口減少・超高齢社会へ着実に向かっています。
今回調査で特徴的なものは、はじめて一人暮し世帯が夫婦子供世帯を上回ったことです。九州はすでに人口は減少しており(人口1,320万人、高齢化率24.3%)、平成37年には昭和25年レベルの1,205万人に戻るという予測もあります。以前の社会は若者が多く、夫婦子供世帯が主で、情報通信手段もテレビ、ラジオ、新聞等マスコミでしたが、将来はこれらが高齢者、一人暮らし、インターネットに置き換わり、価値観の多様化が一層進むものと思われます。社会資本整備も成長社会対応から成熟社会対応へ発想を転換しなければなりません。
「社会的共通資本」という考え方があります。これはあらゆる人が健康で文化的な生活を営むために必要な社会的装置を指し、水・大気・森林等の自然資本、道路・港湾・下水道等の社会資本、教育・医療・金融等の制度資本で構成されます。制度を資本として捉えていることに特徴があります。成熟時代の社会資本整備はこの3つを総合的に捉え、地域、時代に応じて適切に組み合せ、社会の要請に応えていくことが求められます。
人口減少社会において、地域活力を維持・向上させるため交流人口を増やす観光は有効な手段です。九州新幹線という観光資源を南北に結ぶ幹線軸ができ、その効果も多方面に現れてきています。
この効果をさらに高めるため、既存の高速道路網計画の東九州軸、東西軸など未開通部分を早急に完成させ、種々の活用方法が可能となる道路、公共交通が一体となったネットワーク型交通体系を構築し、国内・アジアに向け、九州・沖縄が連携した観光展開シナリオを描くことが急がれます。これを発信するための情報社会資本のしくみづくりも同時に必要です。九州が直接他地域とつながることは新たなビジネスチャンスを生む可能性も秘めており、各地域の観光以外の資源活用による更なる地域経済社会の活性化が期待できます。
東日本大震災を機に災害への備えが緊急の課題となっています。九州は台風の常襲地域であり、近年のゲリラ豪雨等想定外の自然災害が今後とも予想されます。道路・堤防・ダム・港湾等の適切な管理・運用に加えて、進化する情報技術の活用による地域の防災機能をさらに高めること及び新たな防災機能を持った施設整備の検討も必要です。
県庁所在地を核とした地域構造を有す九州において、各々の果たす機能を明確に位置づけ、災害時に機能補完が行える分散型地域構造を早急に形成し、やわらかく支えあう地域づくりが不可欠です。
人口減少、高齢化、価値観の多様化が進む中で、改めて個人の果たす役割・責任が重要となってきています。そこでクローズアップされるのが教育という制度資本です。巷間でいわれるモラル低下も含めて、家庭・学校・社会教育の再構築が必須です。また、変遷の早い社会の中で社会的装置を定点観測し、その効果・方向性を評価・改良するしくみが九州全体及び地域毎に必要です。当学会は建築、土木、造園の専門家の集まりですが、このしくみはさらに経済、法律、行政等あらゆる分野の専門家が集う場がイメージされます。このような場を活用して、これまで蓄積されてきたハードとしての社会資本、ソフトとしての技術・知見を踏まえ、情報技術、新たな価値観等の新しい流れを組み込み、国民参画型で魅力ある次世代空間を創造していきたいものです。

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