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㈶先端建設技術センターの「TC制度」について

㈶先端建設技術センター
 常務理事兼企画部長
:工学博士
奥 田  朗

Ⅰ ㈶先端建設技術センターのしごとについて
㈶先端建設技術センターは,平成元年,多様化する社会資本整備へのニーズに対応していくため,先端建設技術の研究,開発および普及を目的として発足して以来今年で8年目を迎えることとなりました。この間,建設省本省,土木研究所,建築研究所,各地方建設局をはじめ地力公共団休,関係機関・団休及び関連企業等の皆様方の一方ならぬご指導,ご協力を頂きながら,着実にその成果を上げて参りました。
平成8年度におきましては,総プロ等の共同研究や「首都圏外郭放水路」「自由断面トンネル掘削機」など多くの受託研究に取り組み,又,これらの受託研究の遂行にあたり,後述するように,公募により民間企業からの施工法・施工技術等の技術協力を受ける技術協力制度(TC)を活用し,技術水準の向上と業務遂行にあたっての公平性,透明性の確保を図るよう意図して参りました。
一方,開発された技術は,実際の事業に適用してその完成度を高めていく必要があり,それには,施工現場と密接な連携が不可欠であります。このため,地方組織として,仙台,東京,大阪,名古屋,新潟センターを設置し,地方の歴史,風土,社会条件,地域の自然条件等に融合した先端建設技術の研究,開発,普及を図っています。他方,出版事業での「21世紀の人と技術」等の発刊,審査証明事業,「建設技術情報ガイド」の刊行,普及活動としての各種展示・講習会の開催,さらにISO9000シリーズ等に係る海外の実情調査,パイロット事業・試験フィールド等の施工管理,試行結果の整理,指導業務への参画などなど多様な事業活動を展開しています。
技術革新が進展する中,建設技術開発会議の答申になる「研究開発のビジョン」に沿って,21世紀にふさわしい豊かさとゆとりある生活環境,杜会基盤の整備に寄与するため,自然環境,社会環境に即応できる建設技術の高度化へ向けて,さらに,努力して参ります。
本論では,特に最近全国的に注目されている「TC制度」について,概要を述べたものですが,不明な点等がありましたら当センターにご連絡ください。

Ⅱ TC制度の背景
近年,地下構造物や山岳トンネルなどをはじめとする,大規模で複雑な土木構造物の建設や先進技術を取り入れた各種事業が実施されています。このようなプロジェクトの適正な施工方法の検討ならびに選定が,コスト低減・品質の確保および施工の安全性に多大な影響を与え,それぞれのプロジェクトそのものの実現可能性にも関わる重要な課題となってきています。
これまで施工法に関する検討は,工事発注者が自ら行うか,建設コンサルタントに委託して実施するのが一般的でした。しかし,施工計画・施工方法に関する検討には現場での数多くの施工実績を踏まえた専門的知識・経験が必要不可欠です。
㈶先端建設技術センターでは,これまでの工事発注者から建設コンサルタントヘの施工方法の検討業務の委託という一般的な形を踏まえつつ,実現場に即した合理的・先進的技術,安全・確実で環境に配慮した技術の導入を支援するために,建設会社等の専門的な知識・経験を有する責任ある技術者の協力を得て,委員会方式で検討を行うTC(Technical Cooperator)制度を,平成6年9月からより発足させました。
また,平成8年1月に取りまとめられた農林水産省,運輸省,建設省共同の「公共工事の品質に関する委員会」報告書においても,「現場条件と整合した設計や施工段階における施工方法の検討にあたっては,特定の施工者が利益を得ることのないように透明性・公平性を確保しつつ,一般に施工者に集積されている知識・経験を積極的に活用して行くことも考える必要がある」との提言がなされています。

Ⅲ TC制度の目的
TC制度は,㈶先端建設技術センターが実施する建設技術の開発や施工技術に関する業務のうち,その遂行に高度な技術力や豊富な専門的知識・経験を必要とする業務について,当センターが委嘱する技術協力者(TC)からの技術的な助言や協力により,業務の遂行に資することを目的とします。また,本制度は,「実現場に即した合理的・先進的技術,安全・確実で環境に配慮した技術」と「業務の透明性・公平性」の観点から以下の3点が特徴として挙げられます。
(1)設計・施工計画の監理補助の充実
→実現場に即した合理的,先進的技術,安全確実で環境に配慮した技術の導入
(2)外部から原則公募による複数の技術協力者(TC)の選定
→業務の透明性・公平性
(3)委託者が承諾した場合には,成果物の内容を公表
→業務の透明性・公平性・トレーサビリティーの確保

Ⅳ TC制度の概要
1 適応業務
㈶先端建設技術センターが実施する建設技術の開発や施工技術に関する業務のうち,その内容が先進的であったり,大規模・複雑で高度な技術力や専門的知識・経験を必要とする業務。
2 役割(TCの任務)
(1) TCは対象業務ごとに設置される「検討監理委員会」等に委員として参加し,助言などを行います。
(2) 委員会や当センターからの要請に応じて,技術的提案などを行います。
3 検討体制(検討監理委員会)…図ー1参照
工事発注者は,建設コンサルタントに対して施工法検討のため「…検討業務」を委託するとともに,建設コンサルタントが実施する業務の監理・指導のための「…監理補助業務」を当センターに委託します。監理補助業務を受託した当センターは案件を適切に検討する「…検討監理委員会」などを設置し,建設コンサルタントが実施する検討業務の監理の補助・支援を行うことを原則とします。

4 TCの選定…TC制度の手続きについて図ー2参照
(1) TCは,原則として公募し,当センターの「技術審査会」の審査を経て決定されます。
(2) TC候補者は,建設会社などの法人が推薦する個人を対象とします。
(3) TC候補者の推薦者は,応募しようとする法人において,部長以上など当案件を判断するにふさわしい者とします。
(4) 適用業務の内容・期間などを勘案し遂行するのに望ましい人員構成とします。
(5) ただし既発注工事については,工事受注者が確定していることから,TC委員の選定を原則として公募によるのではなく,依頼によって決定します。

5 検討成果の取り扱い
委託者が承諾した場合には.成果物の内容を公表します。

6 TC制度の適用実績及び事例 …表ー1,表ー2参照

表ー2 TC制度適用事例
【事例1】小田井山田共同溝施工技術検討
小田井山田共同溝は,高速道路の基礎杭に近接して施工され,共同溝の通過できる幅が7.7mと狭く,既存の円形シールドでは施工不可能です。そこで,建設省の総合技術開発プロジェクトで検討を進めた,自由な形状の掘削が行える新工法,異形断面シールド工法を採用しています。新工法を採用するにあたり施工の安全性と共同溝への適用性を検討するために,施工経験豊富なTCにより委員会を構成し,検討を進めました。

【事例2】白岩砂防ダム保存対策検討
立山カルデラの砂防の要となる白岩砂防ダムは、「日本砂防の父」として称される「赤木博士」により計画された歴史的施設です。本業務は、この歴史的施設の現況保存をテーマとし、将来においても基幹ダムとしてその機能を果たしていくために、保存再生の技術を活用した最適な保存対策工の立案を目的としています。施工経験豊かなTCに参画いただき、厳しい自然環境における施工条件下での保存対策の方向性を提案し、検討を進めています。

●問い合わせ先
財団法人 先端建設技術センター
ホームページ https://www.actec.or.jp/

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