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リスクマネジメント手法を用いた交通事故対策について

国土交通省 宮崎河川国道事務所
 交通対策課 専門員
平 野 隆 幸

1.はじめに
直轄国道では,交通事故対策区間の決定には,区間毎の死傷事故率と対策実施箇所を図示した「事故率曲線」を用いる手法が一般的である。これに対して,宮崎河川国道事務所ではリスクマネジメント手法による新しい交通事故対策箇所の決定を試みた。
まず,事故データに基づき顕在化している交通事故の発生状況の把握,分析を行うと共にアンケート調査による潜在的な危険性との評価を通じて重点対策箇所の抽出を行った。次に危険性の高い箇所の事故発生パターンを分析し,的確な事故要因の把握に基づく有効な事故対策検討を行った。最後に今回は,検討委員会を立上げ事故要因分析,対策工の検討,対策効果と整備プログラムについて検討した。

2.交通事故の発生状況
2.1 対象区間の事故発生特性
平成10年から平成15年(6年間)の県内にて発生した人身事故を交通事故統合データベース(国土交通省)及び事故パターン(県警提供)より対象区間(国道10号・国道220号)において交通事故の発生状況を分析した結果,次のような特徴的な傾向が把握できた。

2.1.1 対象区間の人身事故の発生件数は,平成10年以降増加傾向にあり,平成15年では1,229件で平成10年の約2.5倍に達している。(図2-1参照)

2.1.2 平成15年の交通事故件数の増加は「追突」事故の増加によるものである。(図2-2参照)

2.1.3 対象区間の人身事故のほとんどは車両相互事故であり93%を占める。中でも「追突」「出会い頭」「右左折」事故は九州全体と比べてもその発生割合が高く,3大事故になっている。

2.1.4 事故類型では,若年層は追突事故及び正面衝突や工作物衝突といった単独事故の割合が高く.高齢者は右左折時,出会い頭事故の割合が高いことが特徴となっている。(図2-4参照)

2.2 ヒヤリ体験アンケート調査
交通事故データに表われていない潜在的な事故危険性を把握するために,表2-1に示すプロドライバー(タクシードライバー)を対象としたヒヤリ体験アンケート調査を実施した。

3.重点対策箇所の抽出
ここでは,事故が集中して発生している事故顕在箇所及びアンケートによる事故潜在箇所において,その地点の交通事故への効率的・効果的な対策を行う事を目的とした重点対策箇所を抽出した。

3.1 リスクマネジメント手法による重点対策箇所の抽出
重点対策箇所の抽出は,事故状況を基にした顕在的危険箇所の評価とヒヤリ体験を基にした潜在的危険箇所の評価をリスクマネジメント手法により事故の発生確率と被害規模のマトリックスに即して,リスク対応の優先度に基づくリスク領域区分(表3-1)に即して重点対策箇所を抽出した。

3.2 重点対策箇所の抽出結果(区間部8箇所・交差点部12箇所)を以下に示す。

4.対策工法の提案
各重点対策箇所での事故状況を分析し,ヒヤリ体験を加味した対策案を提案した。
参考(図4-1,図4-2)

5.各重点対策箇所についての効率的・効果的な施工の優先順位
5.1 
重点対策箇所に対する効率的かつ効果的な対策を実施するために,重点対策箇所の対策優先順位を検討し,対策の整備時期や整備主体,予算等を整理して整備プログラムの策定を行った。
重点対策箇所の整備優先順位は,図ー5に示す緊急度と重要度の2つの指標から決定した。

6.まとめ
本検討は,事故重点箇所の抽出に全国的にも初めてと思われるリスクマネジメント手法を用いて抽出を行った。
また,抽出に当たっては,従来のリスクアセスメントに「ヒヤリ体験」や「道路交通環境」を加える事によってより具体的な分析が可能となった。今回の交通事故対策検討委員会では宮崎県警と連携を図る事によって,より詳細な検討・提案が出来たと思われる。
また,今回十分に検討できなかった交通処理面や景観面との調整等を行い,住民参加を前提に進めていく事が不可欠であると共に,先行的な事故対策を実施し,その対策効果の検証や追加対策等,時期を含めた適正なフォローアップを実施して行く必要があると思われると共に今後は,重要度評価されている箇所についても対策案の検討が必要と思われる。

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