一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
パイロット事業制度の実施状況

九州地方建設局における本制度については,本誌創刊号にその運用等について紹介し,昭和62年度における実施状況は第2号に掲載しました。
今回は,昭和63年度において新技術開発委員会が採用したパイロット事業3件について,その概要をお報せします。

1 老朽吹付法面の再生工法(昭和63年9月)
道路の法面やダム周辺の切土部のモルタル吹付面は,老朽化するとモルタルの裏面に空洞や軟弱な部分が形成されてモルタルの剥離が起こり,崩落が心配されるものが少なくない。そこで,(1)このようなモルタル施工部の異状を数値的に検出図化して,剥離の進行した危険部を簡便に示すような調査方法,(2)現在あるモルタルを剥ぎ取らず,むしろ,構造材の一部に取り込んで利用する再生工法をパイロット事業として施工するものである。
(1)調査方法
① サーモカメラ(熱赤外線ビデオカメラ)
モルタル裏面に多孔質な岩盤や空洞が形成されたり,これに水が浸透するとモルタル面が日照で暖められ,または冷却する時に,変化の起こっていない場所に比べてモルタル表面の温度の上昇(下降)の速度が異なることを利用する。地上またはヘリコプターから2回の撮映によって検出を行う。
② D·S·A(ダイヤ・サウンド・アナライザー)
モルタル面をたたくと,岩盤に密着した部分と裏面に異状のある部分とでは音の周波数が異なることを利用するもので,周波数の異なる打診音のエネルギー量を数置的に現して異状部を検出する。
(2)補修工法(再生工法)
現在あるモルタルを剥ぎ取らないまま,グラウトパイプ兼用のせん断アンカー(長さ50cm程度)を設置し,これを鉄筋で連結した後,吹付けを行い(オーバーレイ)その後グラウトを行う。
メリットとしては,剥ぎ取りを行わないため道路上の仮設防護柵を小さくすることが出来るため,工事に伴う交通障害を軽減することができる。

2 ハイパックアンカー
(1)概要
グランドアンカー(ロックアンカー,アースアンカー)における,アンカー体定着部をアラミド織布袋にて補強し,将来的な安定度の永続性および亀裂岩盤部の定着を目的として開発されたものである。
アラミド繊維は純断面にて比較すると,鉄の5倍もの引っ張り強度を有し,更に高弾性率であることからアンカーグラウトの引っ張り補強材として最適な素材である。
(2)現場適応性
従来技術においては,亀裂の多い岩盤にはセメントミルクの流出により,定着不能となるケースが多かったが,このような場合でも,確実な定着が可能である。また,アンカーの打設角は,ブリージング等の影響により,制限されていたが,本工法によれば,緩角度で打設することができる。従って,現場における適応性は従来工法より更に拡大するものと考えられる。
(3)経済性
前述のような特性を持ったアンカーであるが,付加されるのは接着部におけるテクノーラ織布袋と若干の付属品のみであり,歩掛りの変更はほとんどない。

3 鋼構造樋管
(1)概要
新堤築堤部や軟弱地盤地帯に建設される樋管は,築堤に伴う盛土荷重による圧密沈下あるいは,沖積層そのものの地盤沈下による管体と地盤の不等沈下が発生し,俗に言う「樋管の抜け上り現象」が発生し問題となっている。この現象は,管体に過大な応力を発生させるばかりでなく管体と堤体との接蝕部(特に管体底部)に空隙を生じ,堤体や管体にクラックを発生させ堤防本来の機能を著しく低下させてしまうことがある。そこで,従来のRC樋管にくらべ引張力に優れ,ひび割れも発生しにくく,可撓性のある鋼構造樋管で施工することにより,基礎杭は不要となり周囲の地盤沈下に対して追従でき,堤防の強化および不等沈下を軽減できるものである。
(2)技術的特性
従来のRC構造樋管にくらべ,①自重が軽く(約1/5)沈下を軽減できる。②可撓性があり地盤の沈下に追従しやすい。③基礎杭を必要とせず,周辺地盤とのなじみが良い。④基礎工が不要であり,短期間で管体の据付が完了でき堤防開削期間が短くてすむ。⑤空洞化を低減でき,ひび割れ,漏水を防げる。
等の特性があるが,反面,鋼性のため腐食対策が必要である。
(3)安全性
① 鋼材の溶接部は本体とほぼ同等の強度を有し,溶接技術の向上により欠陥の発生が少ない。
② 現地での施工性が良く短期間で据付を完了でき,作業の安全性が高い。
③ 樋管本体のひび割れ,漏水がない。
(企画部技術管理課提供)

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧