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パイロット事業制度の実施状況

九州地方建設局における本制度については,平成元年度までに9件採択されており,その概要については,本誌第7号までに掲載している。
今回は,平成2年度においてパイロット事業新技術開発委員会で採択された4件について,その概要を紹介する。

1 ベーン工法
提案者 八代工事事務所

(1) 概 要
河川の湾曲部においては,流れの遠心力により河川横断方向に二次流が生じ,外岸付近で河床の洗掘,内岸付近で堆積を引き起こす。
特に外岸においては,河床洗掘により流れの集中と流速の増大が起こり,この結果,河岸・堤防が浸食の危険にさらされている。このような現象に対処するため,従来から護岸根固工,水制等が施工されてきたが,いずれも遠心力によって生じた二次流を直接弱めるには至らず,河岸防護的な性格のものであった。
これに対し,湾曲部の二次流そのものを積極的に抑制し,河床の洗掘と河岸の浸食を軽減する工法がベーン工である。
球磨川下流6K000~8K000付近の河道は大きく湾曲し,その外岸部の萩原地区は八代市内を洪水から守る重要な築堤区間であるが,近年大きく河床洗掘を受けており早急な対策が必要な箇所である。今回,この対策工として,ベーン工法をパイロット事業として採用し,その技術的効果および現場への適応性を調査するものである。
(2)技術的特性・その他
ベーン工法とは,ベーンと呼ばれる翼板(今回は鋼矢板)を河道内に縦断的に適切に配置し,河道湾曲部に生じる河床の洗掘と土砂の堆積を軽減する工法である。
ベーン工を設置することにより,遠心力によって生じた二次流とは逆方向の二次流が発生し,洗掘場所が内岸側に変化し,主流を河道中央方向へ移行させることが出来る。
ベーン工は鋼矢板を打設するだけの単純な構造であるため構造的欠陥はほとんど発生しない。また平水位より3.0m水没させて施工するため船運にも支障がない。
経済性の面でも,小規模で単純な構造であり,施工も容易で長期間を要しないため,水制工に比べて安価である。

2 ジオテキスタイルによる敷網工
提案者 筑後川工事事務所
(1)概 要
有明海岸の直轄管理区域周辺は,通称「潟土」と呼ばれる超軟弱な粘性土地盤で構成されており,このため海岸堤防を施工する場合,すべり破壊や長期間にわたる沈下に十分な注意を払う必要がある。
従来,すべり破壊に対しては,堤防前面にカウンターとして捨石を施工,また,捨石の沈下に対しては,敷粗朶や古タイヤなどで対処して来た。ところが,当該地区はノリ漁の養殖がさかんであり,粗朶の葉や青汁等がノリに影響を与えることや,天然の粗朶の不足等により粗朶に代わる新しい素材の必要性が生じた。
このため,ジオテキスタイルによる軟弱地盤表層処理,敷網工をパイロット事業として実施する。
(2)技術的特性
従来の敷粗朶にくらべ,①局部荷重の分散をはかることが出来る。②円弧すべりの抑制効果がある。③地盤の不等沈下に対しなじみがよい。④超軟弱地盤に対して足場の役目を果たす。⑤施工が容易で,工期の短縮がはかれる。
等の特性がある。
(3)安全性
敷網工に使用するジオテキスタイルは,ジオグリットであり,この原材料はポリプロピレンを使用しており,耐酸性,耐アルカリ性,耐海水性にすぐれ,腐食・分解の恐れがなく,海苔に対しても安全である。

3 レインボーライン
提案者  福岡国道工事事務所
(1)概 要
道路区画線にはガラスビーズが含まれており,夜間には自動車のヘッドライトの光線がガラスビーズによって再帰反射することでドライバーに視認されるようになっているが,雨天時には区画線の視認性が低下することがある。
近年,夜間における交通死亡事故件数が増加の傾向にあること,また,今後高齢ドライバーが増加すると考えられることから,夜間の道路の視環境を良好にすることが重要であり,区画線の視認性を向上させることは効果的な対策の一つである。雨天時においても視認性が良好な区画線で,かつ経済的で耐久性のある新しいタイプの区画線の開発を行い,視認性・耐久性について技術的効果を確認するという目的で,今回一般国道201号福岡東バイパスにて新しい区画線の試験施工を行うものである。
(2)技術的特徴・その他
従来の区画線は前述したとおり,ガラスビーズの再帰反射性(光源から照射された光が光源の方に反射して帰ってくる現象)によって夜間視認される。しかし,雨が降ると区画線上に散布されたビーズが水膜によって覆われてしまい,水膜の表面で光源から照射された光が反射しなくなるために区画線が見えなくなってしまう弱点があった。そこで雨天時でも視認できるように水膜ができても全体が水没しないように表面に凸部をもつ方法が考えられ,レインボーラインはこの方式によって視認性を高めようとするものである。
レインボーラインの材料には硬質骨材を使用するため,材料の敷均しをスムーズならしめるため特殊なスリッターを必要とするが,その他は従来の施工機および施工体制で施工することができ,施工の手順,施工速度,施工に係る交通規制等は従来の場合と同じである。
施工後の追跡調査としては,①降雨量と視認試験,②視認可能距離,③耐摩耗試験,④すべり抵抗,⑤騒音,等を考えている。

4 E.P.S工法
提案者  立野ダム工事事務所
(1)概 要
立野ダム工事用道路改良工事の一部では,地形が急峻,かつ地質が阿蘇溶岩を含む脆い形態となっており,さらに盛土高が10m以上の高さとなるため,円弧すべりおよび崩壊等に対する安定を図る工法が必要となった。
このため,発泡スチロールを用いた荷重軽減工法(E.P.S工法)を採用,パイロット事業として実施する。
本工法は大型(2.0m×1.0m×0.5m)の発泡スチロールを盛土材として積み重ねていくもので材料の超軽量性,耐圧縮性,耐水性および積み重ねた場合の自立性等の特長を有効に利用し,軟弱地盤上の盛土,急傾斜地盛土,構造物の裏込め,直立壁,盛土の拡幅等の荷重軽減および土圧軽減を図る必要のあるところに,適用できる新しい工法である。
(2)技術的特性
施工は発泡スチロールをブロック状に加工したものを組み立てていくもので,発泡スチロールブロックの積み重ねには大型建設機械が必要なく,人力での施工が可能である。このため,施工速度が早く,軟弱地盤上や急傾斜あるいは狭い場所等で大型機械の使用が難しい所での施工が容易である。
また,発泡スチロールは現地で簡単に切断でき地形に対応した加工が容易に出来る等の特性がある。
(3)安全性
発泡スチロールの自立性,耐水性,耐圧性および耐久性等については,他の実測データから立証されている。
また,超軽量のため大型建設機械が必要なく,人力で施工できるため,機械等での事故が軽減され,施工時の安全管理が確立されている。
なお,発泡スチロールは紫外線に弱いので,急速施工が望ましい。
(4)E.P.Sの材料特性
① 単位体積重量 20kg/m3
② 圧縮強度   圧縮試験によって,5%ひずみが生じた時の強度11t/m2
③ 耐熱性    80℃以下
④ 耐久性    ノルウェーで過去10数年の使用実績では,土中環境下におけるE.P.Sに何らの問題は生じていない。
⑤ 燃焼性    自己消火性。(火種を取り除けば,3秒以内に自己消火する。)
⑥ 耐薬品性   鉱物性薬品(ガソリン,油性塗料,アスファルト等)には弱い。

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