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九州地方整備局のストック効果の
見える化・見せる化に向けた取り組み
伊藤浩和

キーワード:生産性革命、ストック効果、政策セミナー

1. はじめに
九州地方整備局では、社会全体の生産性向上に資するインフラのストック効果の最大化を図るため、ストック効果の「見える化・見せる化」に向けた取り組みを進めている。
その取り組みの一つとして、一般市民や地域経済界等への情報発信や理解向上を目的に、ストック効果をテーマに定期的に政策セミナーを開催している。また、ストック効果を発信することの必要性の理解を深めてもらうため、地域の経済団体を代表する九州管内の各商工会議所連合会との意見交換会も行っている。
本稿では、政策セミナーの開催概要を中心に、九州地方整備局のストック効果の最大化に向けた「見える化・見せる化」の取り組みを紹介する。

2.生産性革命について
人口減少・超高齢化社会において、我が国が持続可能な成長を目指していくためには、社会全体の生産性向上につながるストック効果の高いインフラの整備・活用や新たな需要を掘り起こしていくことが重要である。
国土交通省では、平成28 年を「生産性革命元年」とし、「社会のベース」「産業別」「未来型」の3つの切り口(図- 1)に分類した20 の「生産性革命プロジェクト」(表- 1)を選定し、社会全体の生産性向上を支えるプロジェクトとして、取り組むこととしている。
平成29 年は、生産性革命「前進の年」として、プロジェクトの更なる具体化を進めるとともに「生産性革命」の考え方を施策全般に取り組んでいく方針である。

3.ストック効果について
インフラの整備効果は、フロー効果とストック効果に分けられる(図- 2)。
フロー効果は、公共投資の事業自体によって、生産、雇用や消費といった経済活動が派生的に創り出され、短期的に経済全体を拡大させる効果とされている。一方でストック効果は、インフラが社会資本として蓄積され、機能することで継続的かつ中長期にわたって得られる効果である。
ストック効果には、耐震性の向上や水害リスクの低減といった「安全・安心効果」や、生活環境の改善やアメニティの向上といった「生活の質の向上効果」のほか、移動時間の短縮等による「生産性向上効果」といった社会のベースの生産性を高める効果がある。

国土交通省では、ストック効果の最大化を図ることを基本理念に、インフラの整備により発現する様々なストック効果について、分かりやすい形で提供・共有(見える化・見せる化)するための取り組みを推進している。
その一環として、九州地方整備局では、一般社団法人九州地域づくり協会と連携し、インフラ整備がもたらすストック効果について、一般市民や地域経済界等への理解を深めてもらうため、様々なテーマで政策セミナーを開催しているところであり、これまでに福岡市内で3 回開催したセミナーに、合計800 名を超える方に参加していただいている。
・第1 回:平成28 年11月10 日開催  テーマ:熊本地震とインフラ
・第2 回:平成29 年 2 月 2 日開催  テーマ:地域活性化とインフラ
・第3 回:平成29 年 5 月12 日開催  テーマ:観光と交流を支えるインフラ

4.政策セミナーの開催概要
(1)第1回政策セミナー
第1 回政策セミナーは、熊本地震から半年を経過したことを機に「熊本地震とインフラ~その影響と復旧に向けて~」をテーマに開催した。

基調講演では、公益財団法人九州経済調査協会から、熊本地震の発生により一時期停滞した経済活動への影響を評価していただくとともに、熊本地震の際に、実際に現地で支援活動を行ったボランティア団体の“ 夢サークル”、並びに大分県竹田市にボランティア団体の「ベースキャンプ」を設け、ベースキャンプから被災地までのボランティア団体の送迎を行った社会福祉法人竹田市社会福祉協議会から、被災地までの代替路が早期に啓開されたことにより、復旧資機材の輸送や人的支援活動が展開できたといった被災後の活動内容等について報告いただいた。
また、熊本地震において、国が多くの機関・団体と連携して行った対応や今後の本格復旧に向けての取り組み、さらに、今後、発生が危惧される南海トラフ巨大地震への備えについて九州地方整備局から報告を行った。

(2)第2回政策セミナー
第2 回政策セミナーは、「地域活性化とインフラ~元気な九州づくりに向けて~」をテーマに、国、地方公共団体、産業界の方々から、社会全体の生産性向上につながるインフラ整備・活用のストック効果について、紹介していただいた。

セミナーの冒頭で、国土交通省の森技監から、インフラの整備や活用が地域にもたらすストック効果の事例、日本を元気にするため、国が進める「生産性革命プロジェクト」について紹介していただいた。
また、トヨタ自動車九州株式会社、およびダイハツ九州株式会社からは、企業の生産拠点につながる道路や港湾などの物流インフラの機能向上が、各企業の生産活動に大きく関与することについて、講演していただいた。
セミナーの後半では、河野宮崎県知事から、同県のPRを交えながら、東九州自動車道の整備の進展が、宮崎県の人流・物流、企業活動等に大きく寄与しているといったストック効果を紹介していただくとともに、一般社団法人九州地域づくり協会からは、同協会が取り組んでいる地域のインフラ整備への支援について報告いただいた。

(3)第3回政策セミナー
第3 回政策セミナーは、「九州を元気に~観光と交流を支えるインフラ~」をテーマに、各方面からの先進的な取り組みや活動内容等について、紹介していただいた。

観光と交流を支えるインフラについての講演では、まず九州風景街道推進会議から、10 年を迎えた九州風景街道のこれまでの歩みとこれから目指す方向について紹介していただいた。次いで、観光・交流の分野に長年、継続的に携わっている民間団体の門司港レトロ倶楽部から、歴史と海峡を活かしたまちづくりにより賑わいを取り戻してきた門司港レトロ地区の取り組みや、また宮崎で九州各地の良さを紹介する情報紙を編纂している株式会社アイロードからは、九州各地の地域づくり、交流に向けたインバウンド観光やエコツーリズムの取り組みについて、講演していただいた。
行政報告では、小平田九州地方整備局長から、熊本地震への対応と熊本を中心としたインフラ整備の取り組み、また佐々木九州運輸局長からは、九州における観光の実態と行政の取り組みを報告いただいた。
特別講演では、蒲島熊本県知事から、ご自身の生い立ちを交えながら、県民の幸福量を最大化するための熊本地震からの復旧・復興のこれまでの取り組みと今後の創造的復興について紹介していただくとともに、講演終盤では、知事の応援にくまモンも駆けつけ、セミナー会場を盛り上げていただいた

5.商工会議所連合会との意見交換会の開催
地域への波及効果が高く、真に必要なインフラの整備を行っていくためには、地域経済団体である商工会議所連合会等と地方整備局が連携し、地方創生・地域経済活性化に向けた整備の方向性を共有することが必要である。
このため、九州地方整備局では、九州商工会議所連合会をはじめ、九州各県の商工会議所連合会と意見交換会を開催し、ストック効果を重視したインフラ整備のあり方の共通認識を醸成するとともに、インフラ整備を軸とした官民一体となった地方創生の取り組みを進めている。
意見交換会では、国土交通省が進めている「生産性革命プロジェクト」の取り組みや九州地方整備局が進めるインフラ整備などについて情報提供を行い、各商工会議所連合会の代表の方から、地域毎のインフラ整備の効果や期待について、意見をいただいている。

6.その他の取り組み
九州地方整備局では、ストック効果の「見える化・見せる化」の取り組みとして、これまで報告してきたことに加え、広く一般への理解を深めてもらうため、整備局ロビー、各事務所、出張所等の庁舎スペースや道の駅をはじめとした様々な公共施設、各種イベント会場において、ストック効果を紹介したパネル等の展示を行っている。また、ホームページにもストック効果を紹介するバナー(ピックアップ情報)を設けている。
さらに、各部(河川、道路、港湾空港等)において所管事業のストック効果について、事業の節目(事業中、完成、完成1 年後等)を捉えて、記者発表を行うなど、広報活動等を展開している。

7.おわりに
今後も、九州地方整備局では「社会のベース」の生産性を向上させ、持続的で力強い成長に貢献していくため、インフラ整備のストック効果の最大化に向け、ストック効果を高める工夫や、整備後に発現した様々なストック効果とこれから整備していくインフラがもたらすストック効果を適切に把握し、「見える化・見せる化」によって、広く国民の理解醸成に努める必要があると考えている。

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