一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
シドニー五輪「ヨット競技」での海流調査
~めざすは金メダル~

建設省 遠賀川工事事務所
 調査課長
辰 本  卓

1 女子470級「重・木下チーム」の支援活動
この度,シドニーオリンピックヨット競技海面の事前調査として海流調査を行う機会を得ることができた。
オリンピックでのヨット競技は9月20日から11回戦ものレースが連日行われ,順位を競う。私が支援する佐賀県の玄海セーリングチームから出場する“重由美子・木下アリーシアチーム”は松山監督のもと“女子470級”に出場した。重・木下チームはバルセロナオリンピックから女子470級に出場しバルセロナでは日本セーリング協会初の5位入賞,アトランタオリンピックでは見事「銀メダル」を獲得し,今回のシドニーでもメダル候補として有望なチームであった。ヨット競技では3大会連続出場をしているチームは少なく,体力的にもつらい挑戦となっていたが,今年の4月から現地に借家を確保し早い時期から厳しい練習を重ねていた。また,佐賀県唐津市の玄海セーリングクラブ関係者からなる支援隊を編成し1ヶ月前からシドニー入りし重・木下チームが万全を尽くせるよう支援活動を展開した。
私は8月7日に福岡を出発,私が担当する海面調査は8月9日から19日までの10日間行うこととなったが,レース海面はシドニー湾内外に4海面が設定され,風の強弱でも潮汐の状況が変わる為,それなりの結果を出すためには,調査期間はきわめて短く毎日が慌ただしいものであった。

2 ヨット競技と潮の流れ
レース海面には潮汐により潮の流れがあり満潮と干潮の時刻で大きく潮の流れが逆転する。海面独特の潮の流れ方もあり地形や水深により変化する事もある。例えば,入り江になっている時には沖合の流れの反流が生じる。また,水深が深い沖合に比べて水深の浅い岸辺は潮の流れが弱い。
ヨットは風の力により,風に対して45度の方向に走ることができるが,風が弱い場合には潮の流れを常に考えながらレースを展関していく必要がある。例えば,風に対して45度で走るヨットに対して潮が右海面から左海面へ流れている場合,右海面へ進むヨットは潮に突き進む形であるが,左へ走るヨットは潮に流されながら走ることになり,風上にあるブイには右海面へ走った方が有利になる。従って,潮の流れの速さがどの程度か,また,流れの方向が逆転するのは何時か,海面のどこでどのような特徴があるのかを事前に把握しておくことはレースの作戦をたてる上で大切なこととなる。

3 レース海面の状況
シドニー湾は複雑な入り江となっており,レース海面は,オペラハウス前から湾出口に向けてA~D海面,湾外にE,F海面が設定されている。470級女子はB~E海面で実施され,どの海面で実施するのかは,前日の夕方に発表されるとのことである。これは,ヨットレースを多くの人に観戦してもらおうという配慮のようであるが,湾内の場合には風や潮流の変化がひどく選手にはとても走りずらい海面といえる。

4 調査の実施状況
8月9日から開始した調査は湾内のB~D,湾外のE海面で実施した。潮流は風の強弱でも大きく変わるとのことと調査期間が10日間しかないため4つの海面を2回づつ調査する計画とした。また調査海面は,流れが逆転する干満時期に調査できるように決定した。
各海面ごとの調査地点は,地形状況を見て事前に松山監督や重さんと打ち合わせながら決定し,1海面当たりに10地点前後となり調査結果をその日の内に整理し,翌朝のミーティングで報告するようにした。
調査方法は河川での流量観測と似た方法であり,調査ポイントにブイ(マーク)を固定し,ゴムボートで近づき約1mほどの浮き子を投入し浮き子が流れる方向(360度方位)と流速を丹念に調査するものである。計るためにはゴムボートを浮き子の下流に回し直接コンパスで方位を計るため船の切り回しにちょっとしたコツが必要となる。最近話題のGPS発信器を付けた浮き子が活用出来ればこんなに簡単なものはないだろうが,予算的には無理。人海戦術が唯一の方法である。潮の流れは表面の流れと水面下の流れは違うためヨットの水面下の深さを考慮し1m程度としている。風との関係も調査するため風速風向も同時に計測し整理した。
調査は朝の9時から夕方の6時まで,潮の時間を気にしながら一日中走り回り,休憩は昼の弁当タイムのみ。シドニー湾内では,フェリーや高速観光船,海上タクシーが多く行き交い海上交通が盛んであるうえ,オリンピック本番のレース前の同じ時期に,練習しているヨットが多数走っており,調査時にはこれらの船とのトラブルが無いように細心の注意を払いながら要領よく正確に行う必要があった。

5 調査を終えて
調査の後半では,ボートのエンジントラブルやハンドルの故障に悩まされながらも10日間の調査を終え,湾内にある多数の半島周辺の流れの変化,湾出口の異常な流速の早さ,湾外E海面での基本的な流れの状況等,4海面の特徴を把握することができた。「重・木下チーム」にとってオリンピックヘの挑戦は,全くのプライベート参加であり,予算的な制約もあり今回の調査もプライベートチームとしての調査であり10日間しか調査ができなかったため,不足的な要因があったと思うが,海外でのボランティア的な協力体制では限界と思う。他国では,国をあげて気象専門家による調査を行うなど,レベルの違いはあったものの,唐津から同じく支援に出かけた仲間8名と合宿し,一生懸命にいろいろな支援をし続けた事は「重・木下チーム」に少しは力になれたかと思う。結果的に「重・木下チーム」はメダルには届かなかったものの,8位入賞で3大会連続の入賞は大健闘であり,大きな拍手を送っている。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧