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すごいぞ!ボクの土木展

佐賀県 県土整備部   
県土企画課 企画担当係長
碇  慎 一

キーワード:土木展、土木の魅力、土木の担い手

1.はじめに
明治維新 150 年(平成 30 年)を契機に、土木の魅力の発見、土木への理解につなげ、将来の担い手の確保に寄与するとともに、佐賀・土木への誇り、愛着を醸成するため、平成 30年7月25 日から9月2 日まで 40 日間、佐賀県の土木遺産等をテーマとした企画展を開催しました。
見て、聴いて、触って楽しめる体験型の展覧会として、有識者と佐賀ゆかりのクリエイターとの協働により企画・制作したものです。
今回、この企画展の展示についてご紹介させていただくとともに、多くの来場者でにぎわった会場の様子を報告します。

2.展示・制作作品
①club DOBOKU
工事現場などで使われる赤いカラーコーンと、建設現場等で録音された「ドボク」の音によってつくられたクラブ空間です。鑑賞者が 3 台のコントローラーのパッドをたたくことで、ドボクの音やリズムが変化し、音に合わせてカラーコーンが光ります。使用しているドボクの音は、すべて佐賀県内の工事現場で録音したもので、土木のどんな部分の音か、どんな道具の音なのかを想像し、楽しみながら土木への興味が膨らみます。

②砂場マッピング
キネティックサンドとマッピング技術を使った砂場です。子どものころは誰もが砂遊びの経験があり、この時の「砂を盛る」「掘る」という行為は、幼少期における初めての土木的な体験ではないかと思います。この砂場は、山をつくると緑に、穴を掘ると川や湖になるなど、砂の高さによって投影される映像(等高線)が変化することで、盛る、掘る、といった土木の行為を遊びながら学ぶことができる展示で、子どもたちの一番人気でした。

③潮位の壁
低平地である佐賀平野の土地の低さを有明海の干満の差で体感していただき、暮らしを守る堤防の役割を実感できる作品です。大潮の日の潮位変化が標高 0m 地点に立ってみたらどう見えるのか、土木展期間中の天文潮位観測データを標高換算し、早回しの CG アニメーションで表現しました。また、空間内には、有明海の旧堤防と同じ高さの疑似堤防も設置。大型台風が襲来した際のシミュレーションなども取り入れ、災害と堤防の関係についても紹介しました。

④佐賀城石垣
佐賀城の石垣を段ボールで再現しました。昔の人は大きな石をどのようにして積み上げたのだろうかという思いとともに、先人の驚異的な土木技術を、石積みを通して体験することが出来る作品です。子供たちが楽しそうに石に見立てた段ボールを積み上げています。

⑤ミライドボク
ドボク(土木)は人々の成長と同様に日々進化、変化を遂げています。土木が拓くミライの中に込められた『楽しい・綺麗・安全』という願いが叶うように、それらの要素を土木に関連する素材でそれぞれに表現し、スポーツやストリートで見られる元気で自由なファッションをベースに、ミライ(未来)を想定した楽しい土木作業服を展示、映像作品とともに提案しました。

⑥おすしとすし
九州の東西・南北をそれぞれに結ぶ 2 つの大きな自動車道の接続地点、「鳥栖ジャンクション」。九州で最も多い交通量は、日本で唯一の「完全クローバー型」と呼ばれる独特のジャンクションの構造によって支えられています。名前のとおり四つ葉のクローバーのような形をしたループ部分を中心に、車がそれぞれぐるぐると回りながら進んでいく様子を、日本の新しい文化である回転寿司に見立てたユニークな作品です。お寿司が進む方向は、実際に車が進む方向と同じ方向に回っています。

⑦土木ファニチャー
日々の生活を支えるインフラとして、重要な役割を担う一方、なかなか注目されることの少ない土木をより身近に感じられるよう、土木資材を新たな素材として活用し、ファニチャーを制作しました。日常の生活の中のシーンを想像しやすいように、テーブルやソファ、照明などのリビングセット一式を制作、それぞれの土木資材の面影を残しながらも新たなファニチャー素材としての活用の可能性を提案しました。

⑧さがのがら
佐賀にはあまりにも日常過ぎて気が付いていない美しいたくさんの魅力があります。その魅力を具現化したブランドが「さがのがら」です。佐賀県の 10 市 10 町の魅力的な風景から制作した柄を、皿、布、洋服等に展開したサンプル商品を展示しました。デザインを通じて佐賀の価値を高めるチャレンジです。

⑨人と穴/MAN+HOLE
地下から見た地上の世界、普段見ることのできない世界を見ることができる作品です。映像は、工事現場で実際に撮影を行ったもので、マンホールを通して見える特別な景色と土木の現場を美しく表現しています。

⑩しゃべるのホルホル
イラストレーターのナカムラミツル氏がバックホウに実際にイラストを描いた「しゃべるのホルホル」です。最後の仕上げを会場でのライブペイントで実施しました。また、土日には試乗イベントも行いました。

⑪筑後川昇開橋1/20モデル
筑後川昇開橋が作られた昭和 8 年の図面を元に 1/20 スケールで制作した模型です。昇開橋を形づくる一つ一つの細かなパーツまで、図面をもとに緻密に再現されています。材料はプラスチック、模型用樹脂(ポリウレタン)を使用しており、全長約 6m ×高さ約 1.6m の大作です。

⑫赤の青図(佐賀線筑後川橋梁設計図)
建築土木図面の一種で今はあまり見なくなった「青図」。筑後川昇開橋の設計で使われたその青図を、複製パネル化した展示作品です。

⑬waterfall
嘉瀬川ダムは、洪水などの水害から、私たちの大切なものを守るため、大自然にうまく溶け込みながら、支えてくれています。この嘉瀬川ダムからの放流をモチーフとした 3D 映像による、映像コンテンツです。土木の力強さ・迫力をビジュアルと音で体験できる作品です。

⑭さがのマンホール
佐賀県内の市町のマンホールのふたのデザインを、巨大なパネルで紹介しました。

⑮土木遺産
日本には江戸時代の終わり頃から明治、大正、そして昭和の初め頃につくられた貴重な土木構造物が多く残っています。土木学会ではこれらを近代土木遺産と呼び、全国で約 2800 件、九州で約500 件佐賀県においても 38 件が認定されています。これらの土木遺産の中にはひっそりと隠れているものや今も現役で活躍しているものがあり、普段なかなか意識して見る機会がありません。今回、県内 38 件の土木遺産をパネル展示しました。

3.おわりに
将来にわたって、だれもが安心して暮らしていける社会を継続していくためには、社会資本の整備や維持管理を担う、土木の担い手の確保が重要です。
今回の企画展では多くの方、特に若い世代の方や親子連れに来場いただきました。
来場者の方々が、この企画展を契機に、土木に興味を持っていただき、将来、土木の世界に一歩を踏み出してくれるきっかけになることを期待しています。

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