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「道の駅」と地域活性化
斉藤啓嗣

キーワード:道の駅、地域活性化、休憩施設

1.はじめに

近年、より安全で快適な道路交通環境が求められる中、地方部においては、高速道路無料化の社会実験がスタートするなど、広域的な交流やレジャー交通の増加、高齢者・女性運転者の増加等を背景として、道路の休憩施設整備の必要性が増大している。
一方、各地域においては、地方での過疎化の進展や、地域経済の活力低下が進む中、「地域活性化への起爆剤」としての「道の駅」に大きな期待が寄せられており、地域振興施設等による交流・連携の場の整備が求められている。
このようなニーズに対応して、道路利用者の利便性の向上を図るとともに活力ある地域づくりを支援することを目的に「道の駅」整備が着々と進められている。
本編では九州各地の「道の駅」が工夫を凝らして、地域のオリジナリティーを活かしたサービスの提供などを通して、地域の活力向上に寄与している事例を紹介する。

2.九州地域の「道の駅」

九州の「道の駅」は平成5年4月の第1回登録で、5駅(生月大橋、小国、波野、旭志、高岡)が初めて登録されて以来、これまでに106駅(全国では952駅)が登録・整備されており、その立地状況は九州全域に分散している(図-1、2、表-1)。

「道の駅」は、地域とともにつくる個性豊かな賑わいの場を基本コンセプトとして、24時間無料で利用できる駐車場やトイレなどの「休憩機能」、道路情報や地域の観光情報などを提供する「情報発信機能」、地域振興施設による交流を促進する「地域の連携機能」の3つの機能を併せもった施設である(図-3)。
最近オープンした「道の駅」では、比較的大規模な売り場面積を持つ農産物等の直売所が多く、利用者の賑わいをみせるなど、「地域連携」が格段に充実している。

3.「道の駅」を活用した地域活性化の事例紹介
3-1) 地域資源を活かした「道の駅」

「道の駅」は、地域の賑わいの場として多くの利用者からご好評を頂くとともに、「道の駅」が地域づくりの一翼を担い、地域を活性化させる拠点施設として大きな期待が寄せられている。

『豊かな自然景観資源』
  1. 桜島を眺めながら足湯を楽しめる「道の駅」“たるみず”の事例
道の駅“たるみず”は、鹿児島県の錦江湾沿いを通る国道220号線の垂水市に位置し、都市部との交流の促進を目指した「体験型観光」としての重要な役割を担うものと期待されている。
また、ラドン含有量34倍と非常に珍しい天然ラドン温泉を活用した温泉施設や地域の農林水産物やそれらを原料とした2次加工品を販売している。なかでも「湯(ゆ)っ足(た)り館」は、湯船から錦江湾越しに見える桜島の眺めが絶景、また、気軽に利用できる「足湯」も好評で、今年で開業5周年を迎える同駅の年間来館者は約80万人と大変賑わっている(写真-1)。

  1. 日本の滝百選の原尻の滝や、のどかな田園風景を有する道の駅“原尻の滝”の事例
日本の滝百選の原尻の滝やのどかな田園風景に隣接する「道の駅」“原尻の滝”は、新鮮な農産物を始めとする地元の特産品、個性豊かなオリジナル料理の数々、当駅ならではの限定のカボスソフトなどが楽しめる。
また、駅の周辺では四季折々のイベント(春のチューリップ祭り、夏の小松明火祭り、冬の川越し祭り)が開催されるなど、地域が一体となって賑わっている「道の駅」である(写真-2)。

『地域の特産物』
  1. 地場産の農産物や、近海で捕れた新鮮な魚介類の直売で賑わいをみせる「道の駅」“むなかた”の事例
「道の駅」“むなかた”は、福岡市と北九州市を結ぶ国道495号線沿線に位置し、白砂青松100選にも選ばれた玄海国定公園「さつき松原」に隣接するなど、玄界灘を一望でき眺望にも優れている。 物産直売所「みあれ玄海」では、玄界灘の海産物や地元農家が持ち込んだ農産物を買い求めて県内外から利用者が訪れ、平成20年4月12日のオープンから、平成22年6月4日で累計来場者数が300万人に達成するなど記録的な賑わいをみせている(写真-3)。

3-2)高速道路無料化社会実験と「道の駅」

「道の駅」“かまえ”は、大分県の最南端の海岸部を通る国道386号線沿いに位置し、蒲江漁港にも隣接していることから天然の良港に恵まれ、豊富で新鮮な海産物を中心とした特産品や豊饒の海の幸を堪能できる(写真-4)。

本年6月28日から始まった高速道路無料化社会実験では、東九州自動車道のうち大分市から佐伯市間が無料になったことが利用客の増加に繋がっており、無料化実施前に比べ実施後は約2.4倍の観光客の増加が確認されている(図-4)。

3-3)町と「道の駅」が連携してイベントを開催

「道の駅」と地域との連携を通して、「道の駅」の魅力を高める新たな取り組みが始まっている。
熊本県氷川町の「道の駅」“竜北”は、氷川町と連携して本年11月28日にウォーキング大会を開催した。このウォーキング大会は、「道の駅」“竜北”と氷川町の観光資源である竜北公園、立神狭里地公園を巡り、ウォーキングを通じ県内外の方々との交流を深め、地域活性化に繋げることを目的としたものである(図-5)。

また、延岡市では、本年12月12日に、「道の駅」“北川はゆま”と“北浦”が互いに協力しあってウォーキング大会を開催した。これまで、近隣の「道の駅」だけを利用していた方々が、今回のウォーキング大会を機に相互の「道の駅」を行き来するようになり、新たな魅力の発見など、地域活性化の一助となることが期待される(図-6)。

3-4)「道の駅」による“宅配サービス”

今日の急速な人口減少・少子高齢化の進行により、とりわけ中山間地域等における生活活動の維持等の問題が大きく顕在化している。
このような地域においては、高齢者の方が多く、買い物に行くにも公共交通機関が十分でないことから、不便を強いられている状況である。
この様な状況の中、現在「道の駅」独自の取り組みとして農産物を主とした「道の駅」の商品を中山間地域の高齢者に届ける“宅配サービス”を行っている「道の駅」が九州内で6駅ある。この“宅配サービス”は利用者の要望に応えるため、「道の駅」独自で行っており、事業として成功するためには今後様々な課題をクリアしていく必要がある。
“宅配サービス”に関するアンケート調査(H22.9)では、九州106駅のうち35駅が“宅配サービス”に関心をもっていると回答していることから、地域のニーズに応えるためにも引き続き検討を行うこととしている。

4.防災拠点となる「道の駅」

「道の駅」には、地域活性化の機能のほか、地域の防災拠点としての位置付けをもっている「道の駅」がある。
「道の駅」“香春”は、福岡県田川郡香春町の国道201号線沿いに位置し、平成21年10月に開駅した。この「道の駅」香春は、町の地域防災計画に位置付けられており、災害等の有事が発生した場合、地域の「安全・安心」を支える防災拠点としてその機能の活用が期待されている(写真-5、6)。

5.「道の駅」向上に向けた体制づくり

九州・沖縄「道の駅」連絡会は、地域の特性を活かした多機能型休憩施設「道の駅」が相互の連携を図り、情報交流や共同研修等を通して、より利便性の高い、魅力ある個性豊かな賑わいの場「道の駅」を創造し、安全で快適な道路交通環境を実現していくために、多様な活動を行うものとして、平成5年6月に設立された。
また、「道の駅」関係の情報交換や連絡調整等を図ることを目的に「駅長・実務担当者会議」を平成6年度から行っている。
更に、連絡会会長の諮問機関として平成16年1月28日に設立された、「道の駅」向上会議においては、各県に分科会を設置し、サービス&マナーアップ、特産品、販売拡大、情報提供、教育・研修をテーマとした、さまざまな活動を行っている(図-7)。

6.おわりに

九州地域における「道の駅」は、「道の駅」としての基本的な機能を持ちながらも、地域の特色を活かしたサービスを提供するなど、個性豊かなものとなってきている。
今後も引き続き新たな「道の駅」の整備・登録が予想されることから、地域の方々に親しまれ、多くの利用者から愛される「道の駅」になるよう地域と行政が密に連携しつつ、地域活性化に繋がるよう努力していきたい。

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