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「コーナパワーショベル:PF5」の開発について

(株)小松製作所大阪工場建機開発センター
パワーショベル設計室設計課長
吉 田 正 和

(株)小松製作所大阪工場建機開発センター
パワーショベル設計室
武 原 秀 幸

1 まえがき
パワーショベルは近年すべての工事分野で広く使われるようになり,このためユーザから要求される各工事分野での品質・性能に,きめ細かな対応が必要となってきた。一般にユーザが望んでいる車輌とは,従来の要求品質に加えて
(1) より汎用性を高めた車輌
(2) 非能率な作業を減らす事ができる車輌
(3) 危険,苦渋作業を減らす事ができる車輌
と考えられる。
当社では昭和58年度より建築分野の市場調査を実施し,ユーザニーズを調査した。その中で,主に都市土木分野におけるユーザニーズとして
(1) 狭い作業範囲での作業性を向上する。
(2) 作業員による付帯作業を少なくし,ユーザコストを低減する。
があげられている。
これらの要求に対応するため,当社では都市土木における作業分析を実施し,より人間の手の動きに近づけた新しい製品,コーナパワーショベル:PF5を開発した。図ー1に全体写真を示す。
このコーナパワーショベルは,従来のパワーショベルの機能に比べ,2ピースブーム,アーム回転機構が付加されており,特長ある作業・施工が可能になった。以下,コーナパワーショベルの特長と施工事例について紹介する。

2 構造と特長
本機械は従来のパワーショベル作動の機能に対して,下記3項目の機能を追加し,人間の手の動きに近づけるような機械とした。
(1) 2ピースブームの採用により,作業範囲を拡大する。
(2) アーム(バケットも含む)が360°エンドレスに左右方向共回転する。
(3) アーム回転がマイコンにより,自動制御可能とし,操作性向上を図る。
また,従来のパワーショベルの機能は維持しさらに下記のような当社独自の省エネシステムを織り込み,使い易さを一段と向上させた。
(1) 電子OLSS
(2) モード切換えシステム
(3) オートデセルシステム
2.1 2ピースブーム
コーナパワーショベルでは,作業範囲を拡大するため,ブームを2分割し第1ブームと第2ブームをピンで結合している。また第2ブームはアッパーブームシリンダにて第1ブームと接続され第1ブームに対して任意の角度がペダル操作で得ることができる。これらの構造により,
(1) 作業範囲の拡大(特に深掘り作業において腹下が掘削可能)
(2) アームを垂直に維持して作業できる範囲が大幅に拡大。
が可能となり,マス掘り時の手前側の垂直掘りや建築基礎の根切り,解体作業の手元操作が容易になった。

2.2 油圧回路
コーナパワーショベルの油圧回路は,PC200-3の油圧回路を基本にしており,従来のサービス弁ポートを第2ブームシリング用に,またアーム回転モータ用は,Rポンプよりフローディバイダ弁にて分流している。(図ー3参照)

またPC200-3で好評の,下記の油圧システムも有している。
(1) アーム2ポンプ合流
(2) 旋回優先システム
(3) 走行直進システム
(4) バルブ制御式旋回システム
(5) 自動ロック式旋回駐車ブレーキ

2.3 アーム回転機構
コーナパワーショベルのアームは,第1アームと第2アームに分割されている。第1アームと第2アームは旋回サークルで結合されており,それぞれが相対回転可能になっている。第1アーム側には,アーム旋回用モータ(減速機内臓)が装着されており,第2アーム側に装着された旋回サークル内歯を駆動し,アーム回転駆動力を発生させている。また中央部には,スイベルジョイントを装着し,バケットシリンダヘ送油している。これらの構造により
(1) 横方向掘削
(2) バケット反転(バックホー ←→ フロントショベル)
(3) 側溝掘削
(4) 法面斜め整正
が可能になった。
また回転中央部には,回転センサを装着しており次項のアーム回転自動制御を行っている。

2.4 アーム回転自動制御
図ー5に自動制御システム基本回路を示す。アーム回転自動制御スイッチをONにし,上部旋回体を回転させると,車体旋回エンコーダより検出した角度をコントローラに入力する。この角度と同じ角度だけアーム回転を行うために,コントローラは電気信号を出力し,それによってアーム回転操作弁を動かし,アーム回転を行う。また,アーム回転エンコーダからも角度を検出しコントローラヘフィードバックしている。
このシステムにより,側溝掘り作業等において施回とアーム回転の複雑な同時操作が簡単になった。
なお,本システム作動中にアーム回転ペダルを操作すると,ペダル操作の方が優先して作動する。その後ペダル操作を停止すると,その時点からその時の角度を初期値として,自動制御が復帰する。

3 施工事例
コーナパワーショベルは前述のように,特殊機構を有しているので,従来のパワーショベルとは異なった作業が可能となる。
3.1 施工事例(1)(図ー6参照)
工事名 :高速道路基礎工事
工事内容:橋脚基礎根切り作業
本工事はメイン道路わきで作業現場が狭く,道路上でパワーショベルが動き回れない状況である。この現場では,アーム回転による根切り作業が主であった。従来工法では,ミニパワーショベル(PC10クラス)が穴の中で稼動していたが,動きづらいため作業量が非常に少なかった。また排土した土が自分の前にたまり,前進できなくなることが多かった。
本工事でのユーザコストは,梁の位置を修正した場合,従来工法の約75%になることが推定された。

3.2 施工事例(2)(図ー7参照)
 工事名 :宅造・上下水道管埋設工事
 工事内容:主管枝管用溝掘削
本現場の作業は,従来工法では主管溝を0.55m3クラスのパワーショベル,枝管溝をミニパワーショベルで行っている。作業手順は,まず主管溝を掘り管を埋設する。その後一担土を埋め戻し,ミニパワーショベルにて改めて掘る。(主管溝掘り後即ミニパワーショベルにて掘ると,車体が主管溝にかかり掘削しづらい。)
本現場は,安全性,わき水発生防止等のためにも溝を掘ったままで1日放置できない状態であり,主管溝と技管溝の掘削が時間のずれ無しに,1台の機械でできるので好評を得た。また,必要溝底輻に対し,実掘削断面が小さくてすむ(余掘りが少なくてよい)ことも好評であった。
本工事でのコーナパワーショベルでのユーザコストは,従来工法の約40%であった。

4 あとがき
今国の現場の施工で良好なデータが得られたが,今後さらにデータを増やし,ユーザの満足する効率の良い機械に改善改良していきたい。
また,ホイール式への対応も含めて,コーナパワーショヘルの系列拡大を進めていきたいと考えている。

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