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博多駅における九州新幹線ホーム増設工事の設計・施工


田 中 郁 夫

村 上 昌 彦


キーワード:九州新幹線、博多駅、既設構造物の活用

1.はじめに
2004(平成16)年3月の九州新幹線一次開業の後、博多駅では全線開業に向けて新幹線ホームの増設と新博多駅ビルの開発を進めてきた。
輸送拠点駅では新幹線と在来線の併設構造が望ましいが、駅周辺は既に高密度に市街地化しており、新幹線の乗り入れスペースを鉄道敷地外に確保することは至難である。博多駅では、駅構内の在来線設備を精査し、駅全体系として線路容量を維持しながら在来線施設の規模を縮小し、新たな新幹線用地を生み出してきた。
今回新幹線ホーム増設工事について、その計画面の課題を紹介し、新幹線構造物の設計・施工に関する特長について論じる。


2. プロジェクトの計画概要と技術的課題
(1)博多駅の概況と配線計画
博多駅は、1963(昭和38)年12月区画整理事業により現在地に移設開業し、以降1975(昭和50)年3月山陽新幹線、1985(昭和60)年3月福岡市地下鉄空港線が乗り入れている。乗降人員の推移は、図-1に示すように、当初1日あたり7万人が、1994年に35万人に達した。


九州新幹線(鹿児島ルート)は、国鉄時代1986(昭和61)年8月の工事実施計画の認可申請時においては既存の博多駅2面4線をそのまま九州新幹線にも活用するものとして計画されていた。しかし図-2で示すように、申請時と比べ大幅に新幹線の列車本数が増えていること、九州内の新幹線新駅の駅数や駅間距離等を考慮すると博多駅構内に新たに新幹線ホームを増設し、将来の新幹線体系に適応したダイヤ設定が可能となるよう、2004(平成16)年6月九州新幹線として1面2線(うち1線は8両対応)の工事実施計画の追加認可を得た。それは既認可の工事完成時期に博多駅構内の新幹線工事を間に合わせることが前提であった。


新幹線構造物および在来線・新幹線の配線変更は、設計・施工をJR九州とJR西日本がそれぞれ整備新幹線の建設主体である鉄道・運輸機構から受託することになった。当社は2004年8月同機構と基本協定を締結し、在来線配線変更から着手した。在来線の配線は現行5面11線(ホームタッチ9線)を4面9線(同8線)に縮小することとなった(図-3、図-4)。
線路切替回数の減や切替間隔の短縮化など関係機関で協議した結果、全線開業の1年前の2010(平成22)年3月に九州新幹線の新12#線を一次使用し、山陽新幹線の1線を振る必要性があることが判明した。


(2)技術的課題
① 配線変更の短工期化
新幹線構造物の構築や在来線上下活用の駅ビル建設との基本工程を組むと、2007(平成19)年6月までに在来線の最終切替を完了させなければいけないという結論になった。長期にわたる配線変更期間における現行輸送機能を極力維持した上で、切替規模の拡大と切替回数の減、切替間隔の短縮化について、運輸・施設・電気各系統の協調による配線変更計画の深度化が重要であった。
② 新幹線構造物構築の工期短縮
新幹線軌道工事を行なうJR西日本に軌道階を2009(平成21)年10月までに引き渡さなければならず、当方に与えられた期間は配線変更の最終切替から2年4ヶ月であった。
近接する新駅ビル工事も本格化する時期であり、プロジェクト相互の設計施工調整も重要であった。

3. 全体構造計画と施工時の課題
(1)多様な構造形式
当社が担当する東架道橋(空港通り線)から西架道橋(筑紫通り線)間は延長約523mであり、新幹線と在来線のレールレベルの差が2.9mある。
施工環境は山陽新幹線と在来線の間の狭隘な場所で進入路の設置箇所も限られ、重機を用いた施工は夜間に限定され、資材の搬入や発生材の搬出は大幅に制約を受ける。
代表的な構造形式として、7 タイプ採用した。
① 東西架道橋(鋼造り)
既設架道橋上の直柱上へ支承を設け、鋼受構台上に制振材を貼った鋼軌道桁を架設した。終点方は新11番線、新12番線の桁を並列に架設した。
② 1層高架橋(RC高架橋)
東架道橋と在来線高架橋の間の盛土部であり、中層階の無いRC1層高架橋として設計した。柱へブラケットを取付け、中層階にH鋼梁によるコンクリート床版を追加した。
③ 在来線高架橋重層化(耐震補強+鋼桁)
4章で詳述するが、新大阪方面への16両対応の新12番線の重層化高架橋であり、マイングから中央通路まで高架橋への耐震補強と注入工による基礎部の補強をした。高架橋上の線路方向にコンクリート基礎を設けその上に直角方向の受桁を渡し、制振材を貼り付けた鋼軌道桁をゴム沓上へ架設した。
④ 1線1柱高架橋(鋼造り)
中央コンコースと地下鉄を跨ぐために、JR九州旅行店内にP1橋脚、みどりの窓口横にP2橋脚を設けて、36mの合成桁を架設した。中央通路上部は16.8mの合成桁を架設し、門型のP3・P4橋脚と隣接の3層高架橋で受けている。
⑤ 中央通路(改修)
P3・P4橋脚周辺は九州新幹線ホームへの階段を設けるため、既設高架橋の軌道階床版を撤去し、山陽新幹線2階フロアと同じ高さの床を新設した。
⑥ 3層高架橋(SRC高架橋)
駅ビルと隣接する3層高架橋は、地下1階・地上3階(軌道階含む)とし、軌道階上部に山陽新幹線と同じ床高で屋上駐車場を設置した。
本高架橋においては、レールレベル、コンコース階(2F)を既存の山陽新幹線と合せ、1階と地下1階を駅ビル(阪急百貨店)と合せるという制約条件があった。地下1階はデイトスより1.2m低い床高となっている。当初段階ではRCラーメン構造で計画したところ、梁断面が大きくなり、必要な空頭高が確保できない上に、柱断面も大きくなり、駅空間の利用に支障が出るという問題が生じた。そこで鋼ラーメン構造(鋼梁+CFT構造)とすることで、部材寸法を抑え、必要な空頭高と駅空間を確保することが可能となり、現場施工の省力化と工程短縮に寄与した(図-5)。


⑦ 2層高架橋(RC高架橋)
高架橋は「低せん断スパン」の柱とならないように1層として構造計算を行なった。2階床は柱に設けた桁受にH鋼梁を架設し、コンクリート床版としている。

(2)近接施工対策
今回の施工によって、盛土を高さ約10m掘削し山陽新幹線建設時に設置された土留擁壁の一部を撤去するため、山陽新幹線高架橋の変位を監視する必要性が生じた。そこで写真-2に示す水路式鉛直水平変位計を取り付けて監視を行ないながら慎重に施工を行なった。


(3)工期短縮に向けた取組み
① 3層高架橋の逆打ち工法
当初設計では、地下階(地中梁・耐水版)を構築した後、鋼ラーメン高架橋を構築する計画であったが、工期短縮のため地上階を先に構築して、工期のかかる地下階を後から施工する逆打ち工法を採用した。1階、2階、軌道階の鉄骨、RCスラブを構築し、軌道階の工事(ホーム、屋上駐車場)と同時並行で地下の掘削、地下階の構築を行なうことで、工期短縮を図った(図-6)。


② ホームスラブのプレキャスト化
ホームスラブは当初全て現場打設で計画された。しかしながら2009(平成21)年6月から9月までの短期間で屋上駐車場と同時に施工することが求められた。また、この時期には路盤コンクリートの施工を同時に行なう必要性があったため型枠・支保工による支障が懸念された。そこで端部をプレキャスト部材、中間部をフラットデッキを用いた現場打ちコンクリートに変更することでホーム階・屋上駐車場・路盤工事の同時施工が可能となった(図-7)。


(4)揚重計画
高架橋軌道階までの施工が完了した後、調整桁・ホーム桁・屋上駐車場を行なう計画としたが、山陽新幹線高架橋と在来線高架橋にはさまれた狭い空間であることから、資機材の揚重や桁の架設に使用する揚重機の設置を検討した。約260mの区間で移動可能であり旋回可能な走行装置付ジブクレーンを採用した(写真-3)。


4. 既設構造物を活用した新幹線構造物の設計
在来線高架橋は1961(昭和36)年頃の設計であり、構造細目が現行の設計基準を満足しないものも多い。しかし、新幹線構造物として現在の耐震基準を満たすか等必要な性能を適切に設定し、その評価手法や補強範囲を合理的に定めれば、既設構造物を活用した設計が可能であり、工事費縮減、工期短縮、環境負荷の低減の観点からも有益な選択である。
地盤、耐震、コンクリートなど各分野の専門家の知見を結集する目的で、「九州新幹線博多駅設計検討委員会」(委員長:九州大学大学院大塚教授)を設け、短期間に検討を深度化した。

(1)構造物調査と地盤調査
既設高架橋の現況を把握するために、構造物調査を行なった。表-1に調査項目と結果を示す。目視調査では、鉄筋の腐食や乾燥収縮によるクラック、空気まめ等が少ない良質の外観のコンクリートで入念な施工がされているように見受けられた。
また地盤調査ではN値ベースの液状化判定を行なったところ、表層の沖積砂質土層と洪積砂質土層が液状化し、増杭打設等の大幅な基礎補強が想定された。詳細な液状化判定法を実施した結果、ゆるい洪積砂質土層を液状化範囲から除外することができた。これにより効率的な基礎補強が可能になった。


(2)耐震照査と補強工法
① 耐震照査
高架橋の耐震照査は骨組みモデルに対する静的非線形解析と所要降伏震度スペクトルを用いて行った。その結果、L2地震動に対して上層梁、柱がせん断破壊となり、杭はせん断破壊モードとなったことから耐力照査を行ったところ、曲げ耐力がわずかながら不足する結果となった。
② 梁のせん断耐力の評価
上層梁については、設計上スラブの影響を無視した矩形断面でせん断耐力を算出しているが、上層梁とスラブは単体的に構築されており、実施には設計値以上のせん断耐力を有しているものと想定された。そこで、実物を1/2スケールで忠実にモデル化し、模型実験を行った(写真-4)。


その結果、図-8に示すように、矩形断断面の実験値に対して、スラブを有する梁断面の実験値は1.3倍のせん断耐力を有しており、本高架橋の上層梁は補強無しとした。


③ 柱のせん断補強
柱は帯鉄筋量が少なく、せん断破壊先行型の部材であった。そこで、鋼板巻立て補強もしくは一面せん断補強により、耐震補強を行い、必要とされる耐震性能を確保した(写真-5)。


④ 地盤改良による基礎補強
基礎については、表層の沖積砂質土層が液状化し、杭の基礎がわずかながらに、NGとなったことから、フーチング下4隅に恒久グラウト注入を行った。図-9に改良目的と改良体配置を示す。


(3)重層化補強工事
重層化補強工は、中央コンコースからマイング間の線路方向22径間154m、直角方向2径間を対象とした。マイング店舗部では、既設地下業務用通路を利用した水平削孔・注入により、柱補強工と基礎補強工の同時施工が可能となり、店舗休業を約100日で抑えることができた。施工期間は2007(平成19)年4月から約1年間で、柱68本基礎224箇所の補強を完了した。

5. まとめ
新幹線ホーム増設工事は、工期短縮が最大の技術課題であった。前半は新幹線の用地敷を生み出すための在来線配線変更であり、後半は新幹線構造物の構築であった。既存の知識や従来の知見にとどまらず、新しい視点で課題解決に実践的に挑んできた。
鉄道の技術体系は、従来の仕様規定から性能規定に変わるとともに、2002(平成14)年度から鉄道事業者が自ら「実施基準」を定めて最適な設計を取り込める仕組みとなった。4章で紹介した設計は性能照査型設計であり、鉄道総研など外部機関の知見を積極的に取り入れ、全体工程の短縮化並びに全体工事費の縮減に結びついた例である。
九州新幹線は、2010(平成22)年11月22日より鉄道・運輸機構から新幹線施設を引継ぎ、JR統制のもと開業に向けた準備を進めている。
2011(平成23)年1月には最終的な国による完成検査を受検し、3月12日の全線開業に向けた諸準備を深度化していく予定である。
九州新幹線は、博多駅において山陽新幹線と接続し、新大阪までの相互直通運行が予定されている。高速鉄道の開業が交流人口の拡大を促し、さまざまな分野で九州一円への波及効果をもたらし、地域の発展のお役に立てますよう、新幹線の幅広いご利用を紙面を借りて、関係各位にお願いいたします。



【参考文献】
  1. 1)田中ほか:既設構造物を活用した新幹線構造物の設計・施工に関する研究、土木学会 鉄道力学論文集、2010.7
  2. 2)鬼塚ほか:九州新幹線博多駅の地盤注入による基礎補強工事、基礎工、2008.5

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